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F(ファイナル)・フルバースト」

「ぐぅっ!!」

「ぎゃあっ!!」


 けばけばしい金色の光が俺達を吹き飛ばした。見苦しい程の光が奴の頭と背に収束し光輪となった。

 まずい……まずいまずいまずいまずい!!自分そのものを捧げる奴等の最後にして最大の生贄術……

 ファイナル・フルバースト。強化された権能を偽神に委ねた思考で最適に行う……まさに奴等の行いの本質そのものといえる。


「……」

「っ!?」


 奴の体から蛭のような形の肉塊が生え、筋肉のように身体を覆い尽くしていく。一体こいつの権能は何なんだ……!!


「……」

「くっ!!」

「面倒なことを……!!」


 炎や雷を纏いながらこちらに飛ばされてくる肉塊の軌道を視て切り裂いていく。残り時間は後2秒その上魔力もあと1割……。

 このままだと時間を使い切ってそのままぽっくり逝きかねない。何だ……手が勝手に剣を鞘に……こんなときに、呪いか!?

 なぜよりによって今なのかっ!!抵抗できない!!鞘から剣が抜けない……!!こんな、所で死んでたまるかぁぁぁあぁぁあ!!


「主様……!?くっ!!」

「白露っ!俺はいいから、早く奴を!!」

「できません!いつもいつも一緒って約束したでしょう!?」

「白露……それでも、それでも、もうどうしようもな……」


 突如手が結晶化し、剣の柄に手をかけてひとりでに抜剣が始まったと同時に朧気に詠唱が浮かんでくる。

 これを、唱えろということ……なのか?誰がこんなことを……考えている余裕はない。どうせジリ貧……やるしかない。


「仄暗き闇の底の骸に命じ奉る。眼前に贄はあり。憎悪のままに怨め、呪え、祟れ。永き神への恨みと我が身を糧に……」

「主様……?」

「眼前の全てを喰らいつくさん。晶牙の獣よ、答え給え……我が前に敵はなし、抜刀」

「今更……」


 剣を抜いていた腕を元の位置に戻す……ただ、それだけの動作で肉塊が全て跡形もなく消え去った。

 肉片がそこにあったことを示しているのは美しく舞っている結晶の破片だけだった。これが、呪具約2つ分本来の出力……!!


「再……」

「やらせると思いますか?」

「ぐ、ぬぅ……」

「消えろ……今ここで!」


 肉塊を生やし始めた奴の背後に回った白露に叩き落された奴の落下地点に向かい、落下してきた奴の体に剣を差し込む。

 消しゴムを引き裂くかのように奴を切り裂き、臓物を辺りに撒き散らしていく。外形をどう取り繕おうと中は汚い……!!

 傷口から結晶が広がり、砕け散った結晶の破片が剣に吸われる。剣を繋ぎ止める繊維が青白く輝いている……おぞましいな。


「折角の……端末を……無駄にっ……これを生み出すまでに……どれだけの……コストを……かけっ……まだ、まだ肉のストックはある。注ぎ込んだ神力は……まだ」

「立ち上がっ……どこだ!?」

「お前を殺せばこの肉体に掛けたコストを大きく上回るぁリターンが出に入る……」


 内臓のなくなったたたの肉塊から筋肉が生え、引き裂かれた体を埋め、無理やり立ち上がっている。

 そして突如、目前にあったはずの肉塊が消え去り、背後から首を腕で掴まれる。


「ぐぅっ……ぬぅっ!!ぐっ!!」

「これで喉の奥に引っ掛かった小骨がなくなる……私の女神としての格も、ようやく」


 後ろの肉塊に剣を差し込んでも差し込んでも肉片が溢れ出してくる。それに、熱い……!!これは炎っ……。

 まだ能力を発動するだけの力が残っているとでも言うのか……!?なんというタフさ。時間も残っていない。このままでは……


「死になさい」

「ご……」

「どりゃぁあぁぁぁあぁぁあ!!」


 白露の弓が奴の脊髄の機械を正確に撃ち抜いていた。偽神の操作を失い、上空から落ちていくその脳に剣を突き立てた。

 これだけ、これだけやれば倒せるはずだ。頼む……倒れろ!倒れろ!!再生する気配はない。剣も悍ましく輝いている……いける!!


「死……んだ?」

「どぉらぁぁぁぁあ!!……死んでますね」

「そうか……面倒だったな」


 本当に面倒くさかった……F(ファイナル)・フルバーストもう二度と戦いたくない。出来ることなら終始こちらが優位でありたい。

 おかしい……終始圧倒的に上の立場から拷問の末に凄惨かつ残忍に奴等を殺し、死体にも侮辱の限りを尽くすはずだったのに……。

 蓋を開けてみればこんか木っ端程度に苦戦する始末……もっと、もっと力が欲しい。終始相手を圧倒する絶対的な力が……!!


「さて……」

「ひ、ひぃっ!!」

「一匹たりとも逃しません」


 辺りで逃げ惑う擬人共を切り裂きながら魔力の回復を待つ。入ってすぐに奴をおびき出すのは失敗だったな。

 見かけるのはある程度歳を食った女顔の擬人か、痩せこけた男だけ……大部分の子供は逃げてしまったのだろう。


「主様」

「あぁ、叩き切ろう」

「グランドっ」

「クロスっ!!」


 白露の糸を風に乗せて空中へと飛び上がりお互いの武器に回復した分の魔力を全て込め、地面にグランドクロスを放つ。

 放った直後に地面に向かって飛ぶ白露に魔力を纏わせたその時、ソニックブームと共に白露のエリムサルエが地面を砕いていた。

 銀白の極光が辺りを灼き尽くしていく。ああ……素晴らしい。奴らの作った街が塵一つ残さず消えていくさまは……美そのもの!!


「主様……」

「もう少しだ……もう少し我慢しような」

「いけず……」

「ごめん……でもあと少しだから、あと少しだけ、感傷に浸らせてくれ」


 白露が頬を膨らませて、俺の頭に両手を添えて、頭を乗せてくる。なんだこれは?可愛すぎる。


「綺麗、ですね」

「あぁ……綺麗だな」


 綺麗だ……文明を隠された歪な都市が全て銀白の極光に帰していく様を見ているだけで涙が止まらない……。

 約束を果たすときは近い。全ての擬人を滅ぼして、過去にケリをつけた後は、白露と旅行でもしよう。


「白露……全てケリがついたら世界一周旅行でもしないか」

「いいですね。この世界にはいい場所が沢山ありますから。復旧もすぐに済むでしょう」

「そうなのか?」

「資源・食料・家屋・娯楽……あらゆる物的不足は300年前には駆逐されてますから。生保制度も不要になって久しいんですよ?」


 そういえば白露から端末の話を聞いたな。小型のものだけでなく大質量の物質、果ては資源までも構築出来るのか。

 凄まじい科学力。人間達が出来るのだからその程度偽神にも出来るはずだ……それをやらないのは偽神の私欲のためだ。

 なんて残酷で醜いのだろう……醜悪で、救いようがない。せめて、奴隷達が世界に還れるように祈るとしよう。


「主様」

「どうした?」

「楽しみですね」

「そうだな……早く行きたいな」

次は火曜までには出します

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