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決戦

お待たせしました


「ん……ん〜っ、ふぁ〜」

「おはようございます♡ちゅっ……くちゅ♡しゅるる♡ちゅぱっ……んむっ♡じゅるる」

「ん〜!ん〜ん〜!」

「ぷはぁっ……はぁ♡はぁ♡どうしたんですか?」


 金色の瞳が桃色に濁って見えるほどに性を纏った白露の顔が眼前にあった。決戦前にするのは縁起が良くないというのだが……。


「今日、生きて帰れるか……?」

「主様は死にませんよ。私が死なせてあげません……私の寿命が尽きるその時まで無理にでも一緒に居てもらいます」

「最後になにか言ったか……それはそれとしてそれは頼もしいな」

「はい、今日は頑張りましょうね」


 白露が服を着せてくれている。白が目立つ長いチェスターコート……血で染め上げてくれる。


「はい、あ~ん」

「ん……筋肉の味がするな」

「はい、素材そのままの美味しさと激しい運動を加味して塩味にしてみました」

「ありがとう」


 ……何の肉を使っているかは聞かないでおこう。白露が口を膨らませながら食べているのはかわいいな。

 端に何か脚のようなものなんてない。そうただ白露が可愛らしく物を食べている景色が広がっているだけだ。


「行こうか」

「歯を食いしばってくださいね、ッ──!!」

「っ!!」


 白露に抱えられ一瞬圧を感じて閉じた瞳を開けると、既に城壁が広がっていた。壁の中から怒号が聞こえてくる。

 よし、予想通りだ。ここまで効果覿面(こうかてきめん)だと怖いくら……まさか罠か?念のため一撃で街を葬り去るとしよう。


「準備は出来てます。主様、お願いします」

「あぁ。よし……行くぞ」

「グランドッ」

「クロスッ!!」


 白露のスイングに合わせて剣を抜き、白銀の魔力を乗せた斬撃を放つ。地面を削り、結晶化させながら進む斬撃が街を薙ぎ払った。


「ぁ、がっ……く、ぐるぼぉっ!!」

「助、けっぇぎぇえぇっ!」

「お前達が息をしているだけで虫唾が走る」

「主様、まだまだ居ますから抑えて抑えて」


 頭を踏み潰すのをやめ、十字状の断面の跡だけが残った城壁に向き直る。最ッ高ッの気分だ……!!

 そんな気分に水を差すかのようにわらわらとやってくる擬人を切り払い、白露のエリムサルエが薙ぎ払う弾丸の間を進む。


「白露、落とせるか?」

「あぁ……そういうことですね。分かりました。シャルルッ!!」


 開いた虚空にエリムサルエが釣り針のように投げ込まれる。そして、腕をわずかに回した白露が虚空からエリムサルエを戻した。


「退避しますよ」

「分かった」

「よっ、とっ……」


 白露に抱えられながら城壁の跡地に立ち、落ちてきた隕石を見守る。これで出てくるはずだ。出てこないわけがない。

 これだけの大質量だ。多少弱るくらいはしてもらいたいが……楽観的過ぎるか。不意打ちが出来たらラッキー程度に捉えておこう。


「来たっ!!」

「今ですっ!!」


 隕石を砕いた人影の時間を遅くしつつ、肉薄し、突きからの打ち上げ、建造物を使った対方向からの連続攻撃からの撃ち落としを先取りする。

 叩き落とされた人影を見送りながら連撃を繰り出し、落下地点に剣を突き立てる。頼むっ……これで終われ……!!


「はぁ〜……クソっ、いってぇなぁ」

「ッ、何故生きているっ」

「なぜってそりゃ……浅いからに決まってるだろ」


 土煙が晴れた先に立っていた筋肉達磨がそう言い放った。傷は確かに、ある……。体中に切り傷がは確かにある。

 心臓に突き立てた刺し傷もき残っている。だが、血が多少出ている程度……馬鹿な、究極の呪具をもってしてもこの程度……!?


「シィィイィイィィイ!!」

「確かに速度は攻撃にとっては必要不可欠、この世界のダメージ計算式ともいえる運動の公式にも要素として関係している、だが、お前のそれは早いだけ……本物の強さとはこういうものを言う!」

「ごぶぅっ……!!」


 高速で動いてた白露の背中に踵落としが命中し、地面が抉り取られる。強い……これが極限まで鍛えた筋肉の力なのか?

 いや、そんなわけがない。あんなものは奴の権能(ちから)で生まれた紛い物……この世界の整然とした法則から外れた歪みに過ぎない!!

 白露の魔力の籠もった剣に魔法に使えない無駄な魔力を3割を注ぎ込み、白銀の極光を纏う。


「確かに……その剣と魔力は厄介だぞ?だがな、お前は遅すぎるんだよ」

「ぐぶぅっ……!」

「思ったより柔らかかったな」


 奴の右ストレートが俺の鳩尾を的確に捉え衝撃が全身を走る。ご先祖様由来の素で鋼鉄並の強度を誇る肉体がなければ即死だった。

 だが、寿命が少し伸びた程度……もう体が動かない。全身の関節という関節が軋んで動けない。


「教皇陛下からのお達しが有った2つの街を崩壊させた贄、強いよかと思っていたが、このざまか……情けねぇなぁ」

「うるさい……親、しみやす、い風を装っているつも、りかもしれな、いが口調が安定してな、くて逆効、果だ」

「お望み通り黙ってやるよぉ!お前を気絶させてなぁ!!」


 頭を掴まれて地面に叩きつけられ続ける。まずい……段々、意識が朦朧としてき、まだだっ!まだやらなければ……!!


「おぉらぁあぁ!さぁっさとぉぉっ……?」

「はぁ……はぁ……ぐぅおっ!はぁ……はぁ……ぶぼぉっ……!!」

「無ぅぅ駄ぁぁなぁぁ抵ぃぃぃ抗ぅぅぅをぉぉぉお、すぅぅるぅぅぅぅなぁぁぁあ」


 なんだ?奴の拳が遅い……?そうか、(俺の)()か……土壇場にこそ力は開花する……よく言ったものだ。

 奴にどれだけ筋肉という加速機が付いていようと肉体自体の時間が遅れているなら、奴の強さはカタツムリ並……勝ったッ!!


「シィィイィイィィイ!!」

「ぬぅぅうぁぁぁあにぃぃぃいぃぃぃい!!」

「塵一つ、残しはしないっ!!」


 白露のエリムサルエが奴の顔を打ち、手を返し伸ばした金棒で地面から離れた肉体を地面と再開させる。

 胸を突き、手を返し脚を薙ぎ、胴を巻き付け辺りに何度か叩きつけ、地面から背中への熱い挨拶を交わさせる。

 そして、図画工作で作った椅子の板に釘を打ち込むかのように、浮き上がった体の頭部を叩き潰した。


「はぁ……はぁ……主様!主様!!」

「白露……俺はいい、早く奴に止めを」

「主様の魔力が無ければ無理です!今はおとなしくしててください!!」

「ぐっ……はぁ、はぁ、そうす、るしかな、さそうだ、な」


 白露の回復魔法がボロボロになっていた筋肉を分解し、再構築していく。痛い……痛いが、神経がまともなだけマシか。


「あぁ……クソが、痛ぇ……痛ぇなぁ!!」

「黙って寝てろ……」

「ふごぉっ……!!ぬぅごぉぉおぉお!!」


 高速で動く白露が奴に再び膝をつかせ、俺の回復に戻ってくる。早く行かなくては……!!奴を早く殺さなければ面倒な事になる。

 間に合えぇぇえぇぇぇぇえぇえ!!遅く……なれ!!頼む……俺の体っ、今、今回復力を高めなくていつ回復力を高めるんだ!!


「終わりました!!」

「行くぞ!!」

「「うぉぉおぉぉぉおぉぉおお!!」」

「フル・バースト」


 金色の光を帯びた奴が変形していく。背には3対6枚の羽、瞳は翠へと変色し、肌は滑らかな陶器のような白さを帯びていく。

 間に合わなかった……!!だが、こいつ程度のフルバーストに手こずっているようではターレンスには勝てない……!!


「何を突っ立っている!!分不相応だぞ……控えろ!!」

「っ!!」

「シィィイィイィィイ!!」

「しつこい……さっさと餌になれ!私にもっと寄越せぇ!!食わせろぉぉおぉぉぉ!!」


 奴が軽く手を振っただけで地面が溶けている。白露が背後から振りかぶったエリムサルエが躱され、蜘蛛の腹が潰される。

 その攻撃後の硬直に先取りした目への突きを放ったが、瞼を傷つけた程度の傷を負っただけだった。

 先取りの為に直線的な最短軌道で肉薄したのをそのまま地面に叩きつけられた。一体奴の手札は何だ……!!まだ尽きないのか……!?


「消えろ……目障りだぞ」

「ぐぼぉっ……!づ、かまえだぞ……」


 奴の拳を脚でしっかりと固定し、腕に剣を突き立てて、ありったけの力を込めて剣を押し込む。

 奴はまるで蚊にでも刺されたかのように余裕そうな顔を崩していない。刺した感覚もまるでない。

 それどころか刺した箇所から剣を押し出すかのような感覚がある。駄目だ。片腕だと押し返せ、ない。


「ぐぬぅ、か、かぁっ!!」

「失せろ。百年早い」


 ぐぅうぅぅうぅ!!痛い痛い痛い痛い!!今すぐ地面でのたうち回りたい!!くそっ……剣が、剣が持てないっ!!

 剣を押し返された勢いを使って身を捻りながら放った一撃が奴の蹴り一発で沈み、逆に俺の骨が粉砕されたとでもいうのか!?


「シィィイィイィィイ!!」

「無駄なことを……するなっ」

「ぎぃいぃぃぃいっ……ぐぅっ!!」

「あ、がっ……や、やめろぉぉっ」


 電撃が白露を襲った。だが、白露は一瞬怯んだが、逆に奴の目に鉤爪を突き立てて脳組織を掻き回している。

 それにより緩んだ手の拘束から逃れ、反対側の手の甲に斬り掛かり、手を切りながら登り、頭部に剣を突き刺す。


「ぐぅぅぬぅぅぅう!!はなれ!離れろっ!!」

「がぁぁあぁぁぁぁあ!!」

「シィィイィイィ!!」

「この、この虫けら共がぁあぁぁぁぁあぁぁぁあ!!ぶを、分を弁えろぉぉおぉぉお!!私は世界の全てを手に入れるものだぞぉおぉ!!」


 白露と共に突き立てる武器に魔力の3割を込める。奴の内部で魔力が変質するまで脚に力を込められれば、俺達の勝ちだ。

 絶対に逃さない。ここで逃せば大量殺戮を引き起こす害獣を世に放つことになる。それだけは避けなければならない。


「離せっ!離せぇぇえぇえぇぇえええ!!」

「内部からっ!」

「破壊するっ!!」

「手がっ、手が動かないぃ!!これはっ、結晶っ!!私の腱に傷がぁぁあぁぁあ!!離れろぉぉおぉぉぉおおぉぉおぉお!!」


 奴の血管から銀白の光が溢れ出し、奴の体が崩壊していく。勝った!!これで終いだ!もうこいつは死んだ!!


F(ファイナル)・フルバースト」

「ぐぅっ!!」

「ぎゃあっ!!」


次も多分これくらいになります。

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