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撤退

おまたせしました


 白露を必死に起き上がらせ、手を脇に挟んで一心不乱に走った。肺が機能不全寸前になる頃には辺りが普通の林になっていた。


「な……に……。ケホッケホケホケホッ、ぉげっ……ごぼぼぼぼぼぼぼ」

「はぁ……はぁ……くっ、主様。手を……私の手を落としてください……」

「な……にを、ごほっごほっごほ!!」


 全身が熱い……酸素、歩かないと……とにかく歩かないと。脈は……ある。心臓は動いている。肩は……チッ、動かない。


「白露、さxなるほど……行くぞ」

「人思……いにお願いします」


 白露の腕や腹部、脚の大部分が結晶化している、そのせいで回復が出来ていない。早く落とさなければ。

 予備の首狩り刀を足に装着し、肩に踵と刃を当て、落とした。くそっ……見通しが甘かった……くそっ!!


「ぐっ……上……手で……すよ、次はお腹……です。綺……麗に頼……みますよ」

「あぁ……もちろん」


 肉を断つ感覚が鮮明に伝わる。くそっ、気分が悪い。だが、切らないと白露の負担が長くなる。くっ……!!


「はぁ……はぁ……はぁ……ようやく治せる、うっ、くっ……」

「大丈夫か……」

「気持ち悪いです、傷が」

「そうか……」


 白露の傷の自然治癒が始まった。いつ見ても羨ましい。擦り傷、指の裂傷もすぐ治りそうだ。

 白露が目の前でこんな状況なのにこんな感想しか出てこない……万死に値する。落ち着こう……今すぐ命なにかあるわけではない。

 そんなわけがないに決まってる!だが、近寄ろうものならかえって悪化が……いや、側で手を握る程度しなくてはならない。


「白露」

「主様……少し我慢してくださいね?」

「あ、あぁぁぁぁあっ!」

「我慢、我慢ですよ〜」


 いきなり肩を腕ごと外された。熱いっ……こんなリラックスした状態でやられると、熱い熱い熱い熱い。

 いつもこれくらいの傷を負ってい……なかった。今日が初めてだ……白露が毎回こんなのに耐えていたかと思うと辛……ぐぅっ!


「はい、治りました〜」

「ふーっ、ふーっ、ふーっ、ふ〜……奴、を倒、す方法、分か、ったぞ」

「どうするんです?」

「縄張りを消滅させた後、奴から付属部位を全て切り離せば倒せるはずだ」


 白露がしばらく悩み、ひとしきり唸った後なんとなく納得した表情になった。なんとなく納得してくれたようだ。

 奴が森を結晶まみれにしていた理由は、周りに結晶があればそこから欠損部位を補填できるからだ。


「なるほど……再生を見たわけですね?」

「あぁ。……さすがに遠隔範囲攻撃の手段なんて、ないよな?」

「ありますよ、一応。……本当にいいんですか?」

「目立つのか……?」


 範囲殲滅をしない理由は一つ。目立ちすぎて他の街に所在がバレる可能性がある、そんなところか。

 今現時点でバレるのは良くない……せめて一日は置いたほうがいや、でも裏社会でのブツの浸透具合も考えるなら3日は欲しいか。


「この武器は月程度の距離までなら空間を繋いでくれるんです。それを使えば隕石を落とせますが……」

「目立つな……何百発も打ち込むのに夜は無理だ。せめて朝」

「そうですよね」

「とりあえず今日は他の準備をしようか」


 憎悪の結晶とかなんとかいう石ならすぐに見つかるだろう。白露もそこら辺にあると言っていたし。


「ふむ……例えば?」

「そうだな、3日間くらい憎……強力な黒石を探すとか」

「なるほど、いいですね」

「探すコツを知ってたり……しないよな」


 どこにでもある物の中から条件に合致した貴重なものを探す、コツもクソもあるわけがない。

 これか……?見分けがつかない。そこら辺にあるはずなんだが。怨念と憎悪なんて感知できないぞ……。


「あ、それです。それですよ」

「これが……そうなのか?」

「質が悪いですが、黒石ですよ」


 水切りが上手くいきそうなこの平たい石が黒石……?だが、質が悪いのは良くない。首狩り刀にでも使うか。

 独特な形をしているのは分かった。後はひたすら探すのみ、やるしかないか。なるべく強力な物を……!!


「今日はこの辺にしておきましょうか」

「いや……まだ大丈……夫、あれ……何故」


 まぶたが重い……これはどういう。もう立てない。どうして立てな……い。なぜこれしきの疲れで……。


「はい、おやすみなさい」


 ──2日目──


「ふふふ……」

「んぁ」

「おはようございます」

「おはよ」


 白露がいる。今日も最高に美しい。美人なんて何年見ようと飽きるわけがない。でももう少しはっちゃけてくれてもいいのに。


「はい、あ〜ん」

「ん……」

「美味しいけど……この固形物は?」

「知らないほうがいいこともありますよ?」


 白露がそう言うなら知らないほうがいいに決まってる……さて、今日も張り切って石探し、行ってみますか。


「あ、これは中々いいですよ」

「ふむふむ……」


 繊維が寄り集まった管のような……これは織って纏めないと使えなさそうだ。そこはかとなく筋繊維のように見える。

 これは剣に嵌められるのか……?にしても石探しか。こんな時だというのに懐かしい。有紗に碧い石をあげたな……。


「これは……ただの石か」

「石を拾って見せつけるなんて、かわいい所ばかり披露してくれますね、主様」

「べ、別にそn……あっ」


 まずい……こんな森の中で足を滑らせたら脳震盪に繋が、こういうときは確か手を、手で空を掻いて……!!

 間に合わないぃ。やばい、こんなところで怪我してたまるか……!!くそっ、これも偽神の呪いかっ、許さない……許さない!!


「ぬぐぅぉ……」

「主様、大丈夫ですよ〜」

「なぜこんなにタイミングよく硬いものが俺の頭に当た……これはっ!!白露、見てくれ!!」

「確かに主様の頭を傷付けた罪深い石ですけど、別になんの変哲もなi……っ!?こ……の怨念は……!!」


 周囲が歪んで見える程の異様なオーラを放つこの異様な石……間違いない、黒石だ。見ているだけで怖気が走る……。

 なんだこの形は……歪な六角形とでも言えばいいか。手触りもおかしい。ざらついているようですべすべしている。

次も一週間後です

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