みっちりと
おまたせしました!
「体中みっちり洗ってあげますね♪」
「や、やった〜」
白露に椅子に座らされた。……よく考えたらいつも体を洗う補助されてるのに今更身構える事でもないか。
いつも多少接触を持ってくるし、今更動揺しなくてもいいか。まぁ体中マーキングでもされない限り驚かなくt
「さっそく洗っていきますね」
「っ!?」
耳元に囁かれ快感が全身を走っていく。不意打ち……油断した。知らないうちにフラグでも建てていたのか?
それ以外は特にいつもと変わらず丁寧に洗われていく。後は湯船に浸かって夜を食べて寝室に行くだk
「んちゅ……♡」
「っ!!」
「ぢゅるるるる……♡ちゅっ♡ずちゅっ……」
白露の口付けが頬、首、肩、背中と下っていく。先刻ほざいていた誰かは少し痛い目を見てもらって……今現在痛い目みてるな。
「んぢゅゅゅゅゅゅぅ♡ぢゅゅっ……♡ぢゅるるるるるっ……ぢゅゅゅっ♡」
「白露……まだ早。んんっ」
白露のマーキングは止まらない。こんなムードもへったくれもない場所でもそういう気分になると止められなくなる。
「白露、こんな所でやる気分じゃ……」
「私は体を洗ってるだけですよ?ぢゅるるるるっ……ぶちゅゅゅゅ♡ずちゅゅゅゅ」
体を洗っているだけの表情ではない。目を三日月型にして目だけでこちらを見ているその顔は顔を洗っている顔ではない。
「さて……こんなものですかね」
「今日は念入りだったな」
「えぇ、しばらく洗ってない所がありましたからね」
「そうか……」
さっきの事は湯船で疲れと共に洗い流すとして……白露が天井に張り付きたがるのをなんとかしなければ。
癖なら仕方ない。そうでないならせめて横にいるとか、正面にいるとか、見えやすい場所にいて欲しい。
心臓に悪い驚きは御免被りたいのだ。何故か分からないが、ショッキングな出来事があると恐怖で足がすくんでしまう。
「さて、そろそろ上がった方がいいですよ」
「相変わらず行動が早すぎないか?」
白露はもう既にゆったりとした服に着替えていた。偶に透けるように敢えてこの服を作ったならチラチラ見るわけにはいかない。
……白露に応えるためにも、片手だけで自分の事は出来るようにしないとな。どうしてそうなるのか、と?
白露が工夫しているのに俺が何も努力しないのは……良くない。今は良くてもいつか絶対に飽きられる。
「ふふ……私天才なので」
「そうだな」
ドヤ顔で胸を張っている。最近気が付いたがドヤ顔をする時、蜘蛛脚をちょこちょこ動かす癖があるらしい。かわいい。
片手だと体も拭き辛い。脇に挟む事も出来ない……いっそタオルを咥えて体を、いやいや流石に顎への負担が凄いか。
「それじゃ、行きましょうか」
白露の通り過ぎざまに俺に触れた。そんなに触り心地がいいわけでもないのによく飽きないな。
「……!!」
「びっくりしましたか?」
「あ、あぁ」
体が拭かれている……白露の反応的に通り過ぎた時に体を拭いていったんだろう。もはや早いとかそういう次元ではない。
この世の物理法足に足を掛けそうな勢いの速さだ。いつか、これを見ても何も思わないような世界に……。
「主様……主様?主様〜」
白露が心配そうな顔でぺちぺちと頬を叩いている。思索に耽りすぎて気付かなくなってしまったか。
最近よく思考が同じ方向に行きがちな気がする。世界とか、幸せとかスケールが妙に大きい。不思議だ……。
「はっ!」
「のぼせてたんですか?それなら休んだ」
「いや、大丈夫だ」
「そうですか?それならいいんですけど」
そう言いつつお姫様抱っこをしているのは休ませる気満々だと思うのですが……それはそうとしても夕食は食べたい。
いつも白露の顔を下から見ている印象がある。今からでもカルシウムを取れば間に合うか?
「はい、あ〜ん」
「ん……美味しい」
「ん〜よちよち」
今日は椅子にすら座らずに夕食を食べるのか……まぁ、今しか出来ない事を経験すると考えればいいかもしれない。
今日はタコ無したこ焼きようだし座る必要もないと言えば……ない。まぁ、お姫様抱っこでは食べにくいが……。
「主様、あ〜んですよ〜」
「ん、はふはふっ」
「熱かったですか、熱かったですよね」
たこ焼きが熱くない訳がない。しかし、よくホットプレートのような型の金属が見つかったものだ。
白露がお姫様抱っこをしたまま手をあたふたさせている……くっ、かわいい。その反応だけで満腹になるまである。
「ふ~、ふ~、あ〜ん」
「白露……なんか無闇矢鱈にイチャつき過ぎているような気が」
「駄目なんですか?」
白露がきょとんとした顔でこちらを見ている。かわいい、かわいいが……無闇矢鱈にイチャつき過ぎると長続きしないと言う。
どうやって説明したものか……どストレートに言うのは躊躇われる。
「いや……別に悪くはないけど、ありがたみが薄れる、というか」
「ありがたみが薄れる、というと?」
白露が首を横に傾けて不思議そうな顔をしている。ありがたみが薄れるという概念から説明しなければ……。
もしかすると恋愛の立場的に弱い男特有の感覚かもしれないが。特に亜人種なんて選び放題だろうからな。
「何事も当たり前と思い込むと感謝やら感動やらを感じなくなってしまわないか?」
「そうですか……?そうですね。それは良くないです」
「分かってもらえて何より」
白露が神妙な顔をしている。心から納得してくれたようだ。珍しいな……いつもなら2、3個例えを言うのに。
何か思い当たる節があったのかもしれないな……本当に珍しい。突いて蛇を出す理由もない、理解したなら何も言わなくていいか。
「お腹もいっぱいになってしまったみたいですしね」
「あまり食べられなくてな……」
「ええ、分かっています。十分過ぎる程に、ね」
次は一週間後です!




