リハビリぃい
お待たせしました
「さ、ご飯にしましょう。今日も主様が好きな物を栄養バランス良く拵えたんです」
「おぉ……」
栄養バランスが整っているというのは素晴らしい。野菜ばかりでも一品肉があるだけで満足感を得られる。
そして、バランスの良い食事は良い体を作る為の第……何故こんなに詳しいんだ?体作りが必要な職だったのか?そもそもの話、仕事をしていたかどうかも怪しい。
「はい、あ〜ん」
「いただ、んんっ……!」
美味しい。何か重要な事が引っ掛かっていたが朝食の美味しさで吹っ飛んでしまった。こんなに美味しい物に集中しないなど論外。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様です。今日は、走りません?」
「あぁ!もちろんだ。なら着替えなくてはいけないのではないか?」
白露の腕が走っている。悔しい事にかわいい。だが、走るのであればもっと汗を吸いやすい服装にしなければならない。
今の服装は動きやすい。だが、運動をするのであれば寝汗を吸った服ではなく、洗濯したすぐ後の服を着た方g
「主様、自分の服を見てみてください」
「もう、着替えられている……?一体俺はいつの間に着替えた?」
「ぷっ……主様、くく……ボケる、くひひひ……上手すぎ、ふはは……ますっ、ははははは!!」
笑い過ぎではないだろうか?抱腹絶倒という言葉があるが、今の白露にはその表現がぴったり当てはまる。
……少なくとも手は。蜘蛛の脚もバタバタとしているから概ね当てはまる、だろう。
「ふー、ふー……」
「落ち着いたか?」
「はい……すごく面白かったです」
何をしようとしていたのだr……そう、走ろうとしていたのだ。白露のツボは置いておいてどこを走るんだ?
外には行ったことが無い……無いよな?昨日変な夢を見たが、別に外には出ていなかったはず。
「走る場所を気にしていますね?」
「何故分かった」
「そんな顔をする原因は今現在それしかありませんから」
自慢した勢いで胸が揺れる。白露への不満は考えなかったのだろうか?……考えなかったのだろうな。
「不満なんてあるわけないです。だってここには食べ物があって、着るものもあって、私も居る。不満なんてありませんよね?」
「そうだな」
そう、不満といえば運動が出来ない事くらいだ。それを分かっているから今日は走らせてくれるのだろう。
「それで、何処を走る?」
「着いてきてください」
「分かった」
白露の後ろを歩く。ふさふさした毛を見せつけられると触りたくなる。腹部分ならギリギリ枕に出来るか……?
玄関がどこかは分からないが、方向が違う気がする。どこに連れて行かれるのだろう。
「主様、着いて来てくださいね?」
「急に……なるほどな」
白露がリズムよく壁を蹴り上がり、地面に消えた。比喩であって欲しかったが残念ながら本当に地面に消えたのだ。
そう、白露と同じ動きをしなければ白露に着いていく事が出来ない。今日はいい運動になりそうだ。
「1、2、3、4,5、6、7、8……よし」
準備体操を済ませ、壁を駆け上がる。片腕のみであろうとバランスを取るという一点においては……可能ッ!!
だが、壁を蹴り上げる程の助走にはなりえない。ならば、そうなるように距離を伸ばすだけでいい。
「ハッ!!この程度独孤の……」
独孤の、なんだ?自分の名字がなんだと言うんだ?ここだけ地面の色が違う。飛び降りよう。名字はそれからだ。
「流石、よくここまで辿り着きましたね」
目の前に白露が立っていた。どうやら色の違う地面は偽装地面だったようだ。人がギリギリ立てる程度の薄さで作ったのだろう。
「辿り着くと確信していた癖に」
「それはそうなんですけど」
「それで……ここはなんだ?」
目の前に温帯に棲息するごく一般的な森林が広がっていた。異常なのは地下に広がっているという一点のみ。
「ご覧の通り、地下森林です」
「そうか……ここを走ればいいのか?」
「そうですが、ただ走っても面白くないでしょう。私を捕まえたらご褒美をあげます」
「ほほう?」
確かにただ走るよりは目標物が有ったほうが走る時間は長くなるだろう。願ってもない提案だ。
「始めますよ」
「ま、っ!?」
森が揺れた。白露の異様なスピードで揺れたのだろう。目で追えるか追えないかの瀬戸際だ。走り出したが追い付ける気がしない。
「ほらほら、どうしたんですか?」
「!?」
すぐ右隣っ!?煽る余裕があるのだろう。このスピードで走りながら喋って何故酸素が無くならない。
「どうしたんですか〜?」
速度を落としてこちらに近寄って来た所で触ることは出来ない。むしろ、その時により体力を消費しているような気がする。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「ほらほら、呼吸のリズムが乱れてますよ」
「はっ……はっ……っスゥ!」
「そうです。そのままですよ」
呼吸法を工夫しても酸素不足から来る肺の痛みは急には消えない。肺の痛みのせいで動けない人間は多い。俺もその一人だ。
「は゛ぁ……は゛ぁ……は゛ぁ……」
「主様、いきなり止まると危ないです」
「あり、はぁ……はぁ……が」
「喋らないでください。死にますよ」
洒落にならない状況だ。それでも呼吸が出来て、歩けているだけでまだマシだ。本当に不味いときは気絶する。
「よっと……」
「こ……こは?」
白露に抱えられた先には地下森林が広がっていた。地下世界と言ってもさしつがえない程整備されたこの場所……一体ここは?
「シュタット家と神は地下と地上をそれぞれの支配圏として確立するつもりだったようです。そして、ここがその地下世界」
「分か……ら」
「そういうものです。割り切ってください」
副都の地下技術も旧帝国技術を下敷きにしている以上ありえない話ではないだろう。
白露の横顔が夕焼け色に染め上げられている。詮索は格好良さに免じてやめておこう。
「さて、運動は堪能しましたし帰りましょうか」
ゼノブレイド3面白すぎる。
皆さん、買ってみてください。任天○の回し者ではありません




