秘密
お待たせしました!!
「起きろ!」
「ぁあぁ······頭が痛い」
「軟弱者め······アフェクション様がお待ちになっている」
「はいはい」
報告······?一体何を報告するんだ?昨日は何も無かったはずなんだが。行かなきゃいつまでも待機されるのは分かってる。
「おはようございます。これを」
「おはよう。頂こう」
悔しい事にこいつの出す茶は旨い。数週間もすれば毒どうのこうのは気にならない。
深刻そうな顔で何を報告するんだ?昨日は夢見が悪かっただけで特に何も無かったはずなんたが······。
「昨日は申し訳ありません」
「なんの事だ?」
「·······この埋め合わせは必ずします。反逆者の正体の件ですが」
「反逆者?」
どうして目を伏せる。可愛そうな子みたいになるだろうが。反逆者······そんなに骨のある奴がいるか?
脱獄しまくっていた俺が言うのもあれだが現体制は強すぎる。それに反旗を翻す人間がいるか·······?
「今回街を崩壊させ、我々が近付けない状況を作り出した人物の検討は付いていません」
「どうして?そんな戦力を持つ相手なんて少ないだろう?」
「貴様、無知にも程があるぞ!」
「ノート······あなたは入学数週間の学生にも同じ事を言うのですか?」
黙った······そろそろ学べばいいのに。まぁ人間は感情の奴隷。そう簡単に治るものでもないか。
入学数週間の学生か。そんなに借りてきた猫に見えr······まだ警戒してる借りてきた猫だったな。
「戦力を持つ相手は粗方確保しています。それに女神様の加護あふれる地に長くいる人間は女神様に危害を加えられませんから」
「そうか······」
脱獄しそうな奴に心当たりはあるが、もしそうなら気持ちはよく分かる。言わないでおこう。
「ここで解決して私の発言力を上げ、悲惨な現状は打破したいのですが」
「上手い話には裏がある。気をつけろよ」
「そうですね。地道にやっていきましょう」
そう、例えば脱獄できたと思ったら脱獄不可能な空間に収容されていた、とかな。
カップが豪華だと茶を飲むだけでもつい肩肘を張ってしまう。こういう物品もこいつをこんな優雅な人間にしてるんだろうな。
「連携もまともに取れない同僚ばかりで不甲斐ないです」
「いつも思うが、お前みたいなやつがどうして領主出来てるんだよ」
「領主というのはやめてくださいといつも言っているでしょう?せめて大司教、と」
「へいへい、で?」
女神は正直信じられない、ので大司教というのには抵抗が強い。だから呼び捨てにしているのもある。
「放置でいいでしょう。今日はそうですね······これで勝負しましょう」
「これは?」
「開示禁止2類物品、ジェンガです。倒さないように板を抜いていくゲームです」
「中々奥が深そうだな」
──時は戻って──
「ここは······どこだ?」
片腕が、ない?ここはどこなのか、何故片腕がないのか?なぜベッドの中なのか?全く状況が分からない。
「良かった······良かった······」
「······?」
「もう大丈夫ですよ。ここは安全な場所ですから。怖い事なんてなんにもありませんから。安心してください」
突然抱きつかれた。この女、誰だ······?何も分からない。それにこの包帯はなんだ?
俺は怪我でもしていたのか?何故······?記憶を漁ったが全く見覚えがない。それどころか何の記憶もない。
「離れるんだ」
「そ、そんな······」
「離れろ」
信じられない程冷たい声が出た。俺はこんな底冷えするような声が出せるのか?俺は一体どんな生活をしていた?
「·······」
女が離れた。見た目的に年齢は15といったところか?Eくらいか······?見事と言う他ない。
伏せた顔を覆う吹雪のような銀白の髪の隙間から微かに覗く瞳は金色に輝いている。
特筆すべきは腰から下、白い蜘蛛······なるほど、アラクネか。どうしてここまで珍しい人種が?
「名は?」
「······!!白露、です」
一瞬、一瞬感情が混在した迫力のある笑顔が見えたような気がする。だが、すぐに消えた。幻か······?
「そうか。今は上手く記憶を辿れない。どんな関係だった?」
「恋人です」
「そうなのか?それは申し訳ない」
「いえ、関係なんてまた作れますから」
そう言って手を握ってきた。感覚を確かめるように握るのを鑑みるに、まだ手を握るような関係ではなかったのか?
「主様、あ〜ん」
おかゆの入った木製のスプーンが口に近付けられた。確かに気恥ずかしい、だが問題はそこではない。呼び方だ。
「従魔契約をしていたのか······!?」
「いえ、そういう呼び名です」
「そうか······」
ただの呼び名で良かった。人種的なトレンドなのだろうか?そういった記憶がないから全くわからないが。
次も一週間後です!




