わからせ
お待たせしました
「行ったか。新入り······金出せよ。持ってるんだろ?出せよ!」
「そんなものはない」
「おいおい。こいつ、状況が分かってないみたいだぞ」
下品な笑い声に混じって周りの蠍や猪、蛇などの警戒音が聞こえる。どこかでパフォーマンスはするつもりだった。
まさかこんな早くに実力を見せる事になるとはな。ストレス発散も兼ねて·······やるか。
「お前の従魔、殺してやるよっ!!」
「目が悪いようだな······取り替えてやろう」
白露に飛びかかった魔獣を蹴り落とし偉そうな奴隷の片目を抉り取った。もう分かっただろう。
「がぁあぁぁぁっ!なんでっ!」
「従魔と魔物使いはセット。そんな事も分からないのか?」
「クソが······だが貴様が強かろうと従魔s」
「準備運動にすらなりませんね」
残っていた残像が白露の動きが分かる。糸を出しながら一回転し、魔獣達を絡め取り一瞬にして行動不能にした。
「あ······あぁ」
「分かったか?この圧倒的な実力差が。分かったなら、やる事があるのではないか?」
「ぁ······ひ」
奴隷達が土下座している。物分かりが良いようで助かる。大分動きやすくなったな。
革命を起こすまでの準備が早く終えられそうだ。ふふふふふ、はーっはっはっはっ!
「俺はお前達を虐める為にここに居るわけではない。革命を起こさせに来たのだ」
「革、命······?」
「俺を連れてきた視察員もグルだ。そうだな·······お前達には武器庫から俺達の武器を取り返してもらおうか」
「そ、そんなッ!」
頭を上げた奴隷を睨み返しただけで何も言わなくなった。こっそり守ってやるから何も心配はいらない。ま、分からないか。
「出来る、よな?」
「は、はいっ!」
「隕鉄剣、そして神肉を食らうモノ。分かるだろ?」
エリムサルエの名前を聞いた瞬間、男の震えが止まった。知っていたか······いや、常識だったんだろう。
「そ、それがあるという事は······」
「誰が質問していいと言った?まぁいい。早速今晩取ってこい」
「そ、そんっ」
「やれ」
ほんの僅かな殺気を込めた“だけ”でガタガタ震えだした男を尻目に積まれた布団の上に座った。
「聞こえるが(ボソっ)」
『はっ!』
「今晩、全兵士を区長の護衛にあたらせる」
『無茶言いますね······了解しました』
これで万が一の場合を警戒すればいいだけだ。しかし、魔獣使いは一体何をするんだ?
ここで作られるのはたいがいが武器······だが、カートリッジなどの精密機器をわざわざ魔獣に作らせるだろうか?
「そろそろ時間だ。行け」
「し、しかしっ!」
「警備は今日、区長の護衛に出払っている。これ以上のチャンスがあるのか?」
奴隷達がビクビクしながら外に向かった。どうせ取りに行くなら全員武器を、といったところだろう。
「さて······聞こえるか?」
「はい、バッチリです。後500メートル地点に居ます。敵影はなし」
「サボりでもいな······やめよう。フラグだ」
「主様······居ます。後方約100メートル」
フラグが回収されてしまったか。はぁ······行くか。この部屋から少し離れているのが非常に面倒だ。
「あ、処分しました」
「仕事が早いな······」
「罠は得意分野ですよ。アラクネですから」
「そういえばそうだったな······」
アラクネは罠による狩りを得意とする種。白露が強すぎて忘れていたが間違っても正面突破向きではない。
「そうだ……副都の常識について聞かせてくれないか?」
「つまらない話ですよ?」
「そのつまらない話が聞きたい」
「聞きたいというなら。そうですね······家畜はほとんど食べません。狩りもしないです」
どういう事だ······?一体そんな環境でどうすれば生きていける。この間聞いた街の様子とは合致しないぞ。
「ほとんどの食品は培養品です」
「培養品······?そもそも培養とはなんだ?」
「あぁ、ここで言う培養品っていうのはですね、生物の一部から体を作り出す技術といいますか……普通に育てる手間を省く技術といいますか」
「そんな事出来るのか?」
白露に詰め寄ってしまった。だが、今はその技術の方が気になる。たかだがそんな神の如き真似を出来るのか!?
次も一週間後になります!!




