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強化法

お待たせしました!!


 白露が背後に居た女の顔を吹き飛ばしていた。素晴らしい······!!擬人が耐久性に驚く顔は見たかったが······仕方ないか。

 そこまで侮れる相手でもない。雑魚とて油断しきって対処すれば噛みつかれる事はある。


「もう、気を付けてくださいね!!」

「あ、あぁ。ところで······散策は好きか?」

「?好きですけど」

「ならば散策をしないか?」

「???いいですよ?」


 気まずい······女性を散策に誘う。ただそれだけの行為なのに無性に気まずい。懐かしい、

 しかし、誘ってしまったものは仕方ない。散策するとしよう······。


「てやぁぁあぁぁあ!!ぁ······」

「白露はアガルタ出身、そうだよな?」

「よく分かりましたね」

「らぁあぁぁあ!!······」


 切りかかってくる擬人を無造作に薙ぎ払い街を歩く。血の雨に彩られた石造りの家屋に白露の銀髪が映えている。


「地上で捕まっていたからな」

「うがぁあぁ·······」

「それからどうやったら······?」

「天上界で生まれれば地上程度には出荷されない。地上で捕まったのは容易く分かる」


 俺は例外だ。独孤家を普通の擬人は生かしておかない······秘密を握る人間は違うがな。

 偽神に強い恨みを持つ人間を殺せば女神は強くなる。まさに俺はうってつけだった。

 にしても、手だけで薙ぎ払うのは面倒だな······体力を使う。やはり突きでないと。


「なるほど······副都(アガルタ)がどうしたんですか?」

「どんな場所なのか聞きたい」

「どうと言われても······普通の街ですよ?陽がそそぎ、コンクリートの家があって、子供が公園で駆け回ってる普通の街です」

「死ねe······」


 背後から切りかかってきた擬人が糸に引っかかっり輪切りになっていた。流石白露。

 普通の街、か······。だが、楽園というのは案外そういう場所なのかもしれない。

 楽園は地下に広がっていた······いや、地下にしか残らなかった、というべきか。


「いつか······帰りたいものだ」

「帰りたい?」

「目標発見、撃t······」

「そう······両親は物心付く前に何故か地上に移住したらしい」


 弾丸を蹴って家屋の屋根に跳躍、擬人の首を平刃で突き、跳躍して向かいの擬人の首を足でへし折った。


「おそらく擬人の殲滅の為だろうな」

「おそらく······?」

「ひ、ひ、かぁっ······!!」

「昔は······擬人と暮らしていたからな」


 口をあんぐりと開けるとは······珍しい。何せ今とは真逆の立場、今も擬人の首を落としたばかりだ。無理もない。


「え······何故、それが」

「全員死んだ······呆気なかったよ」

「死ん······え?」

「ぐわぁぁあぁ!!」


 動揺している姿は初めて見たな。······人間なのだな。怒涛の展開だった······俺の適応力が異常だったと言う他ない。


「突然殺された······何の前触れもなくな。よく覚えている。燃える家、足止めをする父、必死に逃してくれた擬人······」

「どう、して······?」

「何故だろうな?だが、あいつはよく言っていたよ。外に出るなら擬人は殺せ、とな。最期にも、そう言っていた」

「そう、ですか······」


 重い話だったのか?思い出話のつもりだったのにそこまで暗い顔をされると逆に困る。

 思い出に浸っている間に切り掛かってきた擬人を蹴り上げ跳躍、地面に突き刺した。


「邪魔が多い、そうは思わないか?」

「市街ですからね」

「確かにな······建物を壊すのは忍びないが仕方ない。少しm······回復魔法は使えるか?」

「え、あぁ······使えますよ?」


 使えるのか······散策に味気が無くなるのは嫌だが雑魚を一掃するためだ、仕方ない。

 あの二人にも伝えておかなければな······死なれては困る。


「魔力を込めてくれ」

「これでいいですか?」

「聞こえるか?高台に避難しろ」

『はっ!!』


 30秒······これだけあれば十分だろう。属性を加えるたびに色が変わる。美しい······。

 銀白になった剣で360度を薙ぎ払った。極光が世界の穢を浄化していく。家屋は天上へと還り、魂は輪廻の流れに乗っていく。


「美しい······この光景が生きているうちに見られるとはな」

「こ、れは······」

「独孤家の開祖が使った究極剣······全てを切り裂く最強の強化法。開祖はこれで己の敵を全て切り払ったという。白露のおかげだ」

「どう、いたしまして」


 魂は輝く空に還り、肉体は黒く染まる大地に捧げられ、切られた物だけが銀白に輝く。

 こんな光景を見れば圧倒され、震えが止まらなくなるのも無理はない。



「黒は未熟、といった意味が分かったか?」

「え、え······十分すぎるほどに」

「怯えることはない。この程度、白露なら真似できる」

「言い過ぎ······では?」


 言い過ぎ······そんな気はしない。白露は自己評価が低いようだ。この程度白露のスピードとパワーならすぐ再現できる。それに······


「回復······それは物を本来あるべき姿に還す魔法。黒い魔力はそれに破壊力を加えているだけだ」

「そう、なんですか」

「お前が居なければこの光景は成し得なかった······ありがとう」

「どういたしまして」


 これで自己評価が適切になってくれるといいが······その為にも心臓を集めなければな。

 白露か早く本来の姿に成長した時、この歪んだ世界もまたあるべき姿に還る······楽しみだ。


「行こうか」

「ちょっ、主様早いですよ!」

「?······そうだな」


 何故今バテているのだろう?理由を考えても仕方ない。美しい······何という輝き。今まで見た何よりも素晴らしい······!!


「涙を流してどうしたんですか!?」

「白光の美しさに感動していた······」

「そ、そうですか······」

「後の楽しみを一気に消費してしまったのは少しばかり後悔しているがな」


 明日までとはいえ、楽しみが全て無くなってしまったのは少々辛い······この景色の対価としは安いがな。


「そこは安心みたいですよ」

次も一週間後です!

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