背中
お待たせしました!!
相変わらずアンテーは軽薄だな。だが、ああいう人間は居れば空気を軽くできる。探して得られる人材ではない。
「白露は何人来ると思う?」
「そうですね······10人じゃないですか?」
「なるほど······現実的な数字だな」
恐らく、恐らくだが、死体の奪い合いが起こる。それを踏まえたらそんな数しか来ないだろう。見れないのが残n
「主様、モニターがありますよ」
「何ッ!?何を移している·······!!」
「え······ま、街の様子ですけど」
「そうか······そうか······ふふふふふふふふ!はーっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
街の様子が見れる······殺し合いの様子が見れる。素晴らしいッ!最高だ!最っ高だ!!
擬人共が獣に墜ちる姿が見られる······想像しただけで脳汁が溢れ出てくる!!音は······音は聞こえるのか!?
「音は聞こえるのか?」
「聞こえます」
「ははははっ!ふぁーっはっはっはっはっはっ!!あははははははっ!ふーっ、ふーっ!」
「ぬ、主様?」
笑いすぎて腹が······なぜ白露は顔が引きつっているのか?これ程面白い見世物、中々無いぞ?
「はぁ······はぁ······早く見ようではないか」
「は、はい」
一体何に引いているのだろう······引く要素などこれまでの会話にあっただろうか?
そんな事よりも街の様子だ様子!殺し合い、殺し合いを見せろ!!奴等が劣等種に墜ちる瞬間を見せてくれ······!!
『き、貴様ら······何だその顔はっ!!』
『悪いけどあんたには死んでもらう』
『私はヴィクトリア様から寵愛を多く受k』
『死ね······へっへっへっ、あいつも殺せばもっと金が手にはいる。こんな威張ってるだけのやつともおさらばって訳だ。くかかか』
忠誠、ねぇ?どうやらその枕詞は盛大なフリだったようだな。鐘さえ出せばすぐに裏切る。もっとだ、もっと殺し合え······。
『ァギッ!?』
『はぁ、はぁ、これで金は私のもn······』
『馬鹿め······』
頭を持った擬人の首が撥ねられた。そう、下劣な簒奪者······それこそが貴様らの本性!!もっと、もっと堕ちろ······!!
「こ、これがあれ、くはぁっ……!!」
最初の犠牲者はこいつか······もう少し苦痛を味あわせたかったが……雑魚相手に時間はかけていられない。
「白露、行くぞ」
「はい!」
装置の前にある悪趣味な椅子に座り、足を組む。悪趣味この上ない椅子も迫力という点では役に立つ。
1つ有ってもいいだろう。この世界に無駄な物など1つmいいや、1つだけあったな······擬人共だ。
「こ、これがあれば見逃してくれr」
「頭が高い。跪け」
「何故!きちn」
「自分の立場を弁えろ」
剣を首筋に当てるだけで跪いた。早くこいつの首を切り裂きたい。だが、もう少しいたぶるとしよう。
「お前、忠義は無いのか?」
「金さえ出るならどこだっていい。この世の中長いものには巻かれなくちゃあね」
そう語ったふたなりの顔には下品な笑みが張り付いていた。まだだ······もっと、熟成させられる。
「見下げ果てた奴め。ほら」
「うへへへへっ!ありがとうございます!ありがとうございます!!」
「良かったな。最後に好きな物に囲まれて」
「えぇえぇ。え······?」
振り返った奴の肺に剣を突き立てた。そうだ······虚ろな瞳にあんぐりと開いた口、その顔が見たかったんだ!!
「ふははははははははは!騙された気分はどうだ?ん?」
「な、んで······約、束」
「産業廃棄物と等価値の貴様らと交わした約束のどこに守る必要があるのか?むしろ最後に有益な物を生み出させた事に感謝してほしいくらいだ」
「き······さ、がぁっ!!」
白露が拳を胸に突っ込み心臓を取り出し、奴の目の前で噛み砕いた。涙と目の光が同時に流れていく。
「はーっはっはっはっはっはっ!!あの顔を見たか?実に滑稽な顔だったろう?」
「すっっっっごく、スカッとしました!」
「そうだろう、そうだろう!?これを見ないなんてもったいないと思っていたんだ」
白露とは趣味が合いそうだ······この趣味を理解するには大きな復讐心が必要になる。
こいつらへの憎しみはそこまで大きくないあの二人には理解できなたいだろう。
「メインディッシュは一人で十分だ。街に繰り出すとしよう」
「そうですね!」
きっとまた違った反応をする事だろう。くくくく!楽しみだ······そうだ、こんな教会は破壊してしまおう。
「聞こえるか?」
『はっ!』
「今から教会を爆破する。引き続き見張りを続けよ」
『了解です』
アンテーが丁寧な返事をすると違和感を感じる。しかし!そんな事はどうでもいい!!今から最っ高のショーが始まるのだからな!!
「黒眩断」
魔呂は属性を帯び、全ての属性を帯びた魔力は銀白に輝くと聞く。だが、俺は聖属性を帯びさせることが出来ない。
故に魔力は黒にしかならない。だが、使えないわけではない。黒でもこの程度の建物は切れる。
「教会が一瞬で······!!」
「あまり見ないでくれ······恥ずかしい」
「恥ずかしい······?」
「黒は非才の証だからな」
きょとんとした顔だ。騙しているようで罪悪感で胸が痛い。実際騙しているのだが······
いずれ分かるだろう。魔力を纏うようになれば嫌でも分かる、魔力はそういうものだ。
「その首、もらったぁ!!」
「死ね······」
「な······で、おま······が······」
「姿は見てないから気付いてないんですよ」
思考を読まれた······?アルミホイルを巻いた方がいいだろうか?いや、考えすぎか。
単に顔に出ていたのだろう。昔よく言われていた······今となっては本当なのか確かめようもないがな。
「主様教会壊したけどどうするんですか?まさか、抹殺を我慢できなくなって飛び出してきた······なんてことはないですよね?」
「もちろん違う。今度は略奪をスパイスに加えようと思ってな」
「なるほど?」
我慢出来なくなった所もある。しかし、街の根幹にある思想をひっくり返すという意味では効果的だ。
こんな状況でノコノコ歩いている男はが居れば皆切りかかってくる。ゲームにも勝てる上に財産も見込めるのだから。
「にしても美しい景色だ」
「そうですか?」
「建物は残っているのに街は死んでいる。これが美しくないなら他に何が美しいのか?」
「······確かにそうですね」
反応が良くない······不評なようだ。擬人だけが死に街は残る。まさに完封、美しいと思うのだが······。
「キェェェェエェェェエ!!」
「それで動いているつもりか?」
「ぁ······」
飛びかかってきたふたなりの下半身を切り落とし後ろに······白露が心臓を食っていた。
早い······!!成長が早いようで何よりだ。俺を凌ぐ実力者になる日も近いだろう。嬉しいやら悔しいやら。
「ん〜、並」
「ほら」
「あ。ありがとうございます」
「どういたしまして」
なぜそんな驚いた顔をしている?俺とてたまには礼を返してい······無かったな。
驚くわけだ。外見はまだ幼い······心臓を食べて2日程、外見に変化があるわけがない。
そうではあるが、やはり気持ちは逸る······早く本来の実力を見たくて仕方ない。
「主様!」
「ん······?」
「ぁ、ぐぇっ······!!」
「ありがとう、助かった」
白露が背後に居た女の顔を吹き飛ばしていた。素晴らしい······!!擬人が耐久性に驚く顔は見たかったが······結果オーライだろう。
「もう、気を付けてくださいね?」
白露が手を振って返り血を払いつつ、首を傾げながらこちらに近付いてきた。白露には感謝しなければ……。




