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料理


「世界にとっての害悪······」

「分かってくれたようだな」

「はい」


 どんよりした顔を見るのは辛いが、必要が無かったとは思わない。これからは赤子だろうと殺すのだ。

 葛藤をここで終わらせるのはお互いの為だろう······必要な犠牲というものだ。


「せめて、次は生物に·······」

「······そうだな」


 擬生命体の魂は死ねば即座に偽神に吸収される。だが、必死に祈っている白露に言う必要はない。


「計画は?」

「その前に·······お客様のようだ」

「いつつ······」

「任せてください」


 白露の姿が消えた。目で、追えない。この俺が、目で追えないと?素晴らしいッ!!素晴しいぃぃぃぃぃぃい!


「んくっ、ばきっ、べごんっ、べちゃぁ!!」

「早食いだな」

「ふぅ〜······主様!美味しかったですよ」

「そうか、それなら良かった」


 骨も残っていない。どうして食べたか分かるのか······体液は残っているからだ。綺麗に食べるものだ。


「外は夕焼けでした······やはり美しいです」

「良かったな······」


 夕焼け程度がいつでも見れるわけではない世界······歪みをいつも節々から感じる。歪みは正さなくてはいけない。


「あの二人、帰ってきませんね」

「多分そのまま殺し回ってるんだろうな」

「「へくちっ」」


 糸電話からくしゃみが聞こえる。男受けを狙ったようなくしゃみ······爆死させてやる。

 真歴の時代、街には必ず娼館があり通りかかった老若男女を喰いまくっていたそうだ。

 しかし、そんな時代であろうと初めて同士を貫きたい猛者は少数ながらいた。

 そんな彼等は恋人が街でイチャついているのを見てこう言い放ったそうだ。

 ──リア充爆発しろ、と。爆発という言葉は何故こうも人間を惹きつけるのだろうか?

 そしてリア充。古の時代に有りがちな安易な略し方ではあるが、非常に分かりやすい。

 今の時代ではこんな言葉は生まれないだろう。本当に悔やまれる。


「主様どうかしましたか?」

「いや、なんでもない」

「そうですか······ところで最近暑いですね」

「初夏といった所か······」


 白露が汗をかいているのを見るに熱いようだ。長年地下に居たから季節も分からない。

 その上、改造のせいか温度を感じる事も出来ない······早く元の体に戻りたい。


「本当に暑いですね〜」

「汗をかいたのであれば風に当たるといい。大分暑さが楽になるはずだ」

「ア······ハイ」


 豆鉄砲を食らった鳩のような顔をして外のに行った。どこか驚く要素があったのか?

 俺には分からないが、副都出身の白露からすれば驚きの要素だったんだろう。


「······倒せば元に戻るだろうか?」

「ぬ、主様ーーーっ!!」

「白露······!!無事か?」

「Gがっ!!」


 なんだGか。命を取るようなものでなくて良かった。今食べる理由もない······潰そう。


「潰れたぞ」

「ありがとうございます······助かりました」

「······?どういたしまして」


 G程のタンパク源、捕まえ脂を洗い丸かじりが鉄s······そういえばGは害虫だったな。

 食事よりGの方が美味しい環境で忘れていたがGは未だ生き残る台所の悪魔だったな。


「主様······なぜ涎を垂らしてるんですか?」

「美味s······腹が減ってきたのだ」

「······主様には食事というものを思い出させてあげますよ」


 白露が変な顔をしながら外に出て、適当な魔獣の死体を持ち帰ってきた。何をするつもりなのか検討もつかない。


「でやぁっ!!」

「······」


 骨を砕いたような音がする。見たくもあり見たくなくもある。確かめたいが藪を突きたくはない······。


「よっ······熱っ」

「······」


 何をしているのだろうか?骨を砕いたり熱くなったりする······駄目だ。戦闘以外の回答が出てこない。


「ふ〜······出来ました!」

「一体何が······!!」


 確かこれは······ハラ、違う。ハンバーガー······違う。そうだ!ハンバーグだ!!懐かしいな。8年振りか?


「料理を思い出してもらいますからね!」

「ア······ハイ。イタダキマス」


 あまりの迫力に敬語が出てきた······。それよりもハンバーグだ。確か、ナイフで切り裂いて食べるんだったか。


「·······」

「どうです······聞くまでも無かったですね」

「美味しい······美味しい······」


 懐かしい味に涙が溢れる。そうだ······こんな味だ。これが、料理······!!手が勝手にハンバーグを口に運ぶ。


「あぁ······ああ······ああぁ······!!」


 あの頃を思い出す。幸せだった、皆生きていた······だが、それが戻ってくる事はない。

 絶対に手に入らない幸せを見せつけられ涙が止まらない。もう、戻る事はない······。

 考えないようにしていたというのにっ!!ずかずか······他意は無いのだ。それに苛つくのは筋違いというもの。


「よしよし」

「あ゛ぁ!なんでさぎに゛っ!!置いでい゛がないでぐれ゛っ······いがない゛でっ······!!」

「大丈夫、私はどこにも行きませんから。これからずっと作ってあげます······だからもう泣かないでください·······」


 何故そんなに優しい······そんな事を言われたら何もかも放り出したくなってしまう。

 皆の無念も、思い出も、俺の怨みも······全部忘れてしまう。辞めてくれ······頼む。


「落ち着きましたか?」

「あぁ······」

「良かった······」


 こういう時何を言えばいいのだろうか?何を言っても変な空気になりそうだ······。かと言って黙っているというのも······


「主様」

「!?なにかあったのか······?」

「二人が動き出したので」

「そうか······いよいよか」


 領主がここを留守にしたのだろう。高位の殉神教徒には恒常性がある。領主に錯乱は効かないだろう。

 ······こんな話、しただろうか?いや、俺の知識は偏っている。この程度の知識は常識である可能性は大いにある。


「出r」

「静かに!」

「んんっ······!?」


 口を指で塞がれた······何をするっ!まさか俺を暗殺するためにここまで強引に付いてきたt······


「危なかった······領主はもう行きましたよ」

「聞いて、居たのか?」

「はい、気付かれるところでしたよ」


 走行音を聞いて咄嗟に口を塞いだ······?何という判断力。やはり、この娘頭が切れる。

 知識が伴っていないだけだ。絶対に俺よりも地頭がいい。天才······羨ましいものだ。


「準備はできましたか?」

「8年前から出来ているとも」

「そうですね······行きましょう」


 二人には連絡しなくてもいいだろう。分かっていてこの時間に動き出したのは明白。

 連携して教会騎士団を一網打尽にしなければならない······教会騎士団が死体を調べた。

 つまり、領主はこの事件を知りえた。能力を把握された可能性は否定できない。

 早く一網打尽にしてここから去らないとまずい······カルウェナンが無いのに来る。


「楽しみですね······」

「そうか?」

「顔、にやけてますよ?」

「そうか。隠しきれていなかったか······くくくくくくくく、そうかっ、くふふふふふふ!!」


 8年に渡る恨み、皆を殺された無念、奴らを殲滅する喜び······全てを叩きつけてやる。


お待たせしました!テストを終えた私を束縛するものは……それなりにあります。それでも週一は確実にいけます!

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