拷問
「取って食おうというわけではない。ただ、その男を殺してほしいだけだ。どうだ、興······聞くまでもないか」
少女は一瞬戸惑ったもののすぐに首を縦に振った。よく見れば体が衰弱している。
もしかすると俺と歳が変わらないかもしれない。どうやら正解だったらしい。
「これで出来るだろう?」
「ありがとう、ございます······!!」
「感謝は是非ともいい光景で返してくれ」
「はいっ!!」
首輪を切ると少女は喜々として男を押さえその心臓を抉り、食った。髪が汚れているのが残念だ。絵になっただろうに······
「ぁ、貴様」
「ぐちゅ、べちゃ、くちゃくちゃ」
彼女が男の内臓を引きずり出し、噛み砕いている。だが、男は未だに死ぬことが出来ない。ショック死しないように痛みを調整しているようだ。
「ぁ、ぁあ……」
「べっきぃっ!!」
そして、彼女が心臓に付着していた石のような物──神エネルギーの塊を引き剥がし、噛み砕いた。その瞬間、男が苦悶の叫びをあげた。
「がぁぁあぁぁぁあ、ぁぁぁぁぁぁあ!!」
男はしばらく手足をバタバタとさせた後、力尽きた。だが、偽神の加護は強力だ。この程度では死なない。
それがこの男にとって良いのか悪いのか、それはこの悲鳴を聞けば明らかだかな。皮肉な事だ。
「死ねッ!!」
「ぁ、かぁっ……」
彼女は男の脳味噌を引きずり出し、握りつぶした。男は動かなくなった。ふむ、体を損壊されるとどうやら魂は脳に宿るようだ。
「気分はどうだ?」
「最高です!」
華とはまさにこういう物を言うのだろう。美しい······なんと美しい光景だ。ゴミも引き立て役としては役に立った。
「達者でな」
「あ、あのっ!」
「なんだ?」
「私も連れて行ってください!」
この少女は何を言っているのか······。何故わざわざ危険に突っ込むような真似を······。
「全殉神教徒抹殺······付いてこれるのか?」
「はいっ!是非ご一緒させてください!」
「口ではなんとでも言える。少女g」
「私は今年で18になります!」
同い年······なのか?信じられない。この男······!!どこまでも下衆な!!食事すらまともに与えていないのかっ!!
「そこまで言うのであれば······名は?」
「まだありません······良かったら付けてくれませんか?」
「······白露はどうだろうか?」
「白露······素晴らしい名前をありがとうございます!」
こんな眩しい笑顔、直視すれば死にかねない······ん?この剣はまさか!やはりそうだ。こんな所に隕鉄剣が······。
「血相を変えてどうしたんですか?」
「父の形見があってな······」
「そうなんですね······」
「見つかってよかった······そんな顔はしなくていい。全て俺の力不足故だ」
わ
この白露という少女、優しい。しかし、その優しさに甘えている時間はない。やるべき事をやらなければ······
「着る物がないな······済まなかった」
「いえ!そんな。自分で用意できますから」
そう言うと彼女は服を織り、羽織った。器用なものだ。流石はアラクネと言うべきか。
「さて······」
全ての牢の扉を開いた。これで下にいた囚人達も出られるだろう。こんな物騒な塔ともおさらばというわけだ。
「この服では目立つ······すまないがフード付きのコートを作ってもらえないか?」
「もちろんいいですよ!ちょっと待っててくださいね······はい、出来ました!」
「早いな······ふむ、素晴らしい」
なんという着心地······権力者が血眼になってアラクネの糸を追い求めるのも分かる。
そんなさんさんと輝いた顔を向けないでくれ······眩しくて死んでしまう。
「これくらい追ってこれるか?」
「······?」
窓から降りて塔を切り裂いた。少し切れ味が落ちているか?後でしっかり手入れするとしよう。
「流石ですね」
「いいや、まだまだだ。これだから縦斬りは嫌いだ······やはり突きでなければ」
「じっとしててくださいね」
白露の糸が俺を包み込む······これだけ大規模な物をこの短期間で編み上げた?なんという速さだ······。
「どうですか?」
「素晴らしい速さを持っているな」
「ふふっ、そんな事ありませんよ」
そう言って本人は謙遜しているがこのスピードは異様だ。父さんですらこの位置には一生かけても至れない、極地。
「謙遜することはない。つい先程までの俺を殴り飛ばしたい程の力だ」
「そ、そうですか?ふへへ······」
なんだこの生命体、概念上の存在なのか?汚れているのはもったいない。早く人並みの生活を確保させてやらねば······。
「な、なんだこれは」
「誰がこんな事をしたの!?」
生々しい拷問を書けなくて申し訳ありません。なにぶん脳味噌を潰したことがなくて……




