始まり
遅れて申し訳ありませんッ!
──1時間ほど前──
前力も順調に付いてきた。この邪魔な矯正帯も筋トレと考えれば役に立った······そろそろ頃合だろう。
「······?」
脱獄王に埋められた歯が大きくなり口から飛び出した。原因は多数考えられる。
だが、誰かに買われ、能力の有効範囲から外れたと考えるのが自然だろう。
脱獄王······せめて、この宴がお前の旅の供にならん事を······。
「ぬぉおおぉぉおぉおお!!」
「実験体a-666の魔力数値が異常です!」
「矯正帯をフル稼働しろ!!」
「無理です!抑えられません!!」
無駄だ······この8年鍛え上げられたこの肉体が矯正帯ごときに抑えられるはずがない。
それどころかお前達はまだ起こってもいない爆発によって死ぬのだ······。
「な、何が······」
「な、なんだこれはっ!!」
扉は溶解され、研究員は全員死んでいる。多少火傷はしたが無傷······成功だ。
ふはははははは!時間を我が手に収めた今俺に敵は居ない!!
「ふん!」
脱獄王の爆弾を扉の残骸に向かって投げつける。何も起こる事はない。俺が結果を先取りしたのだから当然だ。
「はーっはっはっはっはっ!」
これだけの爆発を起こして壊れないとは······さすがの技術力。だが、無意味な事だ。
こいつらの会話が正しければ、そこにカルウェナンの手掛かりを握る男が居るはずだ。
「中々いい剣を持っている」
「ぅ······がぁっ」
「この爆発の中生きているか······ふん!」
「······」
この8年間の筋トレは無駄では無かったようだ。まさか足で頭蓋を砕くことが出来ようとは······。くくくくく!!
「地上へ」
エレベーターは音声認識かつ階が限られている。よく考えたものだ。この手間がその証明と言えるだろう。
「貴様、どうやっ······」
「行けっ!貴様らの出番だ!」
目の前の実験体を突き抜きざまに首を落とし心臓を貫き投げつける。覚えていたか。
静かに眠れ······お前達を傷付ける者はもういない。
「く、来るなっ!」
「ぐ、ぁ······」
軽く剣を振るうだけで血の雨が降り注ぐ·····皆、見ているか?ゴミ共が本物のゴミになっているぞ?
「ふはははははははははは!」
「がっ······」
「殺さないでくれっ!私には家族がっ······」
はははははは!なんと滑稽な事か!!床が踏まないでくれと懇願しているぞっ!!不思議な事もあるものだな?
サリア······外にはこのような愉快な物が存在すると教えてくれても良かったではないか。
「そうか······それは大変だな」
「な、なんでもし──かはっ!な、ん······」
「すぐに貴様の家族?とやらも送ってやろう。感謝するがいい」
「ぁ、が······あ、くま······」
なぜ俺が降って湧いた貴様のごとき人擬きのゴミに非難されなければならないのだ?
むしろ、ここ120年程知的生命体の真似事をさせた事に感謝して欲しいところだ······。
「俺も出してくれっ!頼む!!」
「その時を座して待つといい······」
「おぉ!ありがとうございます!ありがとうございます!!」
感謝、か······ここまで心を揺り動かすものとは今まで気付かった。存外悪くない······。
ようやくエレベーターか······。擬人が手間取らせよって······だが、それもここまでだ。
「ふんっ!」
「んぎっ·······」
「そうだ、もっとその顔を見せろ······」
「い、ぎっ······ひぅっ♡あぁっ······いきなり入れな······♡言って······ふぅっ♡んんっ♡」
扉を蹴破ると目的の男が人の上半身と蜘蛛の下半身を持つアラクネという人種の女を犯していた。
俺の剣は男の胸を貫き、もう片方の手で頭を掴んでいた。知識を持っていて幸運だったな。寿命が伸びたぞ?
「擬人が······あまり手間をかけさせるなよ」
「なんだっ、貴様、あがっ!!」
「俺の質問にだけ答えろ。それ以外の事を口走れば殺す。返事は?」
「は、はひっ」
外の擬人共には滑稽さという長所があったがこいつにはなにもない。さっさと情報を吐かせ速やかに殺そう。
「カルウェナンはどこだ」
「か、カルウェナン?」
「とぼけるな」
剣を少し喉に押し当てただけで顔色が青くなり、体がガタガタと震えだし、脂汗を書き始めた。抵抗するなら最後までと習わなかったか?
「はひっ!い、一番街にありますっ!!」
「そうか」
一番街か······教義の中で忠義を最も重視する輩の集まりだったか?自己中心的な人間の集まりが笑わせる。
さて、こいつを生かしておいても何も良い事はない。さっさと殺s······アラクネに殺させるか?
「そこのアラクネよ」
「は、ひ?」
次は三日後になります。




