実験
前回のあらすじ
屈辱
目覚めると鋼鉄の部屋の中に居た。体に着けられた鎧のような物は矯正帯の亜種か?
······ターレンスッ!!どこまで人を馬鹿にすれば気が済むんだっ!!あれが初めてだったんだぞ。クソがっ!!
「······」
目の前にゴキブリの這い回っているチーズと水があった。これが飯、というわけか。随分と特別な待遇で······。
「はぐっ、べきっ、ぐちっ!」
「ギ、ギィッ······!!」
こんな環境下ではゴキブリも貴重なタンパク源。贅沢は言ってられない······デビルローチだって食べたんだ、いけるいける。
「右腕は······ない、か」
腕立て伏せをしようとしてみる。が、左腕の筋肉が足りない······膝を立てるか。多少の効果はあるはず。
「ふぅっ······!!ぐっ······!ぬぅっ!」
かなり辛い。両利きで良かった······もし右利きだったら剣の練習もしなきゃいけないところだった。
「はぁ······はぁ······はぁ······」
疲れた······。しかし休んではいられない。このクールタイムを利用し腹筋も鍛える。まさに完璧な布陣。
「いちっ、にぃっ!さんっ······」
疲れた······矯正帯の負荷がえげつない。飯は多分一食しかでない。虫か何かを捕える仕掛けを作っておかないと······。
「よし、出来た」
幸い時間だけはあるから仕掛けは作れた。パン粉を餌にゴキブリを引き寄せ、汗で痺れさせる。完璧だ。
汗はしびれ薬じゃない?因子のない人にとってはね。でも独孤家は度重なる交配によって汗をしびれ薬にする事に成功してる。
「ギ、ギギ」
「はぐっ、ばきっ、ぐちゃ、べきべき」
美味しくないし油でテカテカしてて食べにくい。しかし、脱獄王や皆の屈辱を思えばこんなの屁でもない。
「ふぁ〜······ん?」
腕に鎖が付いている······?いつの間に付けられたんだ?パンをゴキブリが這いずり回っている。
「まずいパン、まずいゴキブリ······」
ここを抜け出すためならなんだって食べてやる。こいつらは後で絶対に殺す。だが、今は耐え忍ぶ時だ。
「これより光輪実験を開始する」
光輪実験······なんの話だ?瞑想をしていると突然頭に冠のようなものを被せられた。
「ぐっ······」
この針のような物は一体······手が勝手に目の方にっ!!何とかして手を止めないと······止まれっ!!
「ぐっ!!」
「もう少し調整が必要だな」
「はぁ······ぐっ」
なるほど、実験体ってわけか。なんでこんな目に······力だ。力さえあれば皆だって······!!
やる事は一つ······筋トレだ。矯正帯を外せる力を付けるんだ。その為ならなんだってしてやる······!!
「睡眠剤、注入」
「ん、がぁ······」
寝ちゃったようだ。睡眠剤って言ってたし多分それだろう。とにかく筋トレだ。腹筋、背筋、腕立て······やる事は無数にある。
「実験、開始します」
「ぁ゛あぁぁぁあぁぁぁあ!!」
「魔石、投入します」
しびれるっ!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!肌が切り裂かれて、異物が体に······ぎぃいいぃいぃいい!!
「耐水実験を開始する」
「ぐぼぼぼっ······がっ······ごぼっこぼっ!!」
苦しい······息、空気!空気をよこせぇっ!空気······なんで空いてない?開けろっ!開けろぉおお!!
「がばっ······ごぼっ!ごぼっごぼっ!ごぼぼぼぼぼぼ······」
許さない······偽神も、ふたなりも、殉神教徒も、全員ぶっ殺してやる······!!息、が······
「α-666意識、回復しました」
「飢餓実験に意識は必要ない。無駄な報告をするな」
「がっ······申し訳ありません」
飢餓実験······?口に何か付けられている。何も口に入れられない。こんな実験が何日も続くのか······?
「はぁ······はぁ······はぁ」
筋トレをすれば体力が持っていかれる。ならどうする?どうすれば身体を鍛えられる?
魔力を纏おう。そう、確か独孤家は魔力を纏って剣術を使う一族だったはず。それを使えば効率よく力が手に入るはずだ。
──見知らぬ誰か──
「これ美味しいんですよね」
この木の実に栄養は大して無い。しかし、美味しいなら食べなくちゃいけないと思うんです。
「ふんふんふんふんふーふふふーふふー」
せっかく危険を犯して地上界を散策してるんです。美味しい物を食べなきゃいけませんよね。
私の名前?まだ無いですね。名前を授かるなんてだいそれた事、若輩者の私には無理です。
「アラクネ······死ねっ!!」
「水を差さないでもらえますか?」
「ぁ、が······」
飛びかかって心臓を貫いた。最近人間が多い。おかしい······地上界は偽神の加護なき地のはずなのに。
「よっと······質の悪い心臓ですね」
殉神教徒の心臓にはエネルギーの塊的な何かがある。それを食べれば普通の何倍も成長出来る。
「ふふふふ······もう少し、ですかね」
殉神教徒の死体を糸で覆って酸を流し込んだ。こうしておかないと居場所がバレますからね。
「忌々しい······さっさと崩れればいいのに」
監獄要塞、殉神教徒の最前線にして無辜の民の処刑場······最近は芽殖Ⅰ型も倒されてきている。
所詮搭載しているのは殉神教徒の脳、大した成果はあげられませんか······せっかく再利用してやっているというのに。
「今日はこの辺にしておきますか······」
そろそろ処刑の時間ですからね。早く副都アガルタに戻らないと······早く大手を振って歩きたいです。
「······!!」
誰か居る······。このまま戻るとまずい、適当に撒きますか······。糸で方向を調整しながら木々を駆け抜けていく。
「どこへ行こうというのかね?」
「!?!?」
「中々の上物?私には男の価値感はよく分からない。だが、売り物にはなりそう」
「っ!!」
無駄だとは分かりつつも全速力で逃げ出した。こんなところで人身売買組織に見つかるなんてっ!!
「無駄な事を······」
「ぅ······か······」
睡眠薬······意識が朦朧として、帰······らないと。こんな······所で捕まって······たまるもの······で······
最近日常生活が忙しくなってきたので不定期更新になる可能性があります。