誓いは永遠に
お待たせしました
「あなたはその健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いまか?」
「誓います」
「あなたはその健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くことを誓いますか」
「はい」
教会ももう崩れ落ちている。誓いを仲介する神父も、もう居ない。こんな廃墟でこんな事をしても意味はない。
いや、そうじゃない……結婚式は合理的云々を求めてするものじゃない。気持ちの為にするもの。だから、続きをやるべきだ。
「武器と指輪の交換を」
「はい」
結構重い。これだけの物をあれだけ振り回していたのか。武器を腰に掛け、白露の手を取り、そっと指輪を嵌める。
外にも出なかったから剣の結晶しか用意出来なかった。でも、身を切って手に入れた物だ。誠意はきっと伝わるだろう。
「ぁ……」
感嘆なのか感動なのか分からない声を漏らした後、指輪が嵌められる。残ったのが左手でよかった。
「それでは、誓いのキスを」
「……」
いつもは目を開けてねっとりとした視線を向けてくる白露が、大人しく目を閉じて、こちらを待っている……美しい。
「ん……」
「ん♡……さぁ、ここにサインを」
結婚誓約書にサインをする。名前を書くだけなのに手が震える。さっき振りの緊張……重みのある行為ということか。
「……これで、私達はめでたく夫婦となりました。新郎新婦の退場です。太陽からの溢れんばかりの祝福が、これからも私達を照らしていますように」
「絶景だ……今目の前にあるこの景色の事、絶対忘れない」
「私もです。長い長い二人の時間の始まりですね」
────
偽神の襲撃から10年……今もなお寂れたままの住宅地に、雰囲気にそぐわない小綺麗な小さな教会が建っている。
「こんにちは……何のご用事で参りましたか?」
「結婚式、礼拝、懺悔……お任せください」
隻腕の男性と白銀のアラクネは、今日も訪れた男女二人を出迎えている。かつて、自分達がそうされたように……
第4章
普通の黒髪で物理的にぼっちな俺に彼女達の距離感がおかしい気がする······
──完──
今まで読んでくださりありがとうございました!!