偽神ヴィクトリア
お待たせしました
心臓がまだ必死に働いているが、だいぶ落ち着いてきた。そろそろとどめを刺さないと蘇生されるかもしれない。本調子ではn
『信徒達よ。祈るのです。祈りだけが救済への扉を開くのです。さぁ、祈りなさい』
「頭に響くッ!頭が割れるッ!」
「くっ……なんですかっ!この不愉快な音はっ!!」
音量がどうこうの問題じゃない。生理的に無理なものを見た時に走る怖気が何千倍にもなったような本能的な不快感が湧いてくる。
「ぐぅぅぅぅぅッ!……何だッ!あの光はッ!」
「がぁぁぁ!!ぐぅぅぅ!!はぁはぁ……!」
全身を走る怖気の正体が分かった。擬人の祈りが流星のように集まってきている。流星は塵らしい。目前のこれもそうなんだろう。
「な、なっ……」
「こんな事知らない……一体何が」
下品な金色の光が穴から溢れ出ている。不愉快な祈りの流星はもう終わっている。絶対に何か良くない事が起こるに決まっている。
「どうせ何か起こるにしても!!」
「やるだけやらないといけませんよね!!」
「グランドッ」
「クロスッ!」
音を立てて穴が埋まり、悪趣味な光が消えていく。頼む……何とかなっててくれ!!何とかなれぇぇぇぇぇえ!!
「縺上°縺九°縺九°!縺九▲縺九▲縺九▲縺九▲!螳後●繧薙↓縺励※遨カ讌オ縺ョ螯セ!降ッ!臨!はははははは!!」
瓦礫を突き破って現れた妙に艶かしい翠のグラデーションの掛かった二重の光輪。そして、翠のラインが走る女を極度に抽象化した芸術作品のような不気味な金色の胴体。足の代わりに柔らかな三対の触腕がスカートのようなものを形作っている。髪らしきものはあるが顔が無い。代わりに口のようなものが水晶のようなものを咥えている。それを守るように一対の円柱状の物体が浮かんでいる。
「「ッ!!」」
「妾がッ!この程度の攻撃でッ!滅びるわけがなかろう?永遠不滅ッ!恒久不変ッ!千古不易ッ!妾の敷く美しき秩序の一部になる権利を放棄した愚か者には死、あるのみ!」
「ぐっ!ぬぅっ!!」
「先程までの勢いどうした?この程度で死んでくれるなよ。妾のッ!怒りはッ!この程度で到底晴れぬッ!!」
語気が荒くなる瞬間飛来する巨大な円柱。白露が目で見て回避出来ず、これまでのどんな攻撃よりも重い。
必殺の一撃が通常攻撃のような頻度で下すのが最も強い。種も仕掛けもないから受け流す以外の対処が出来ない。
「結晶化はせずともっ!剣が効かなくなったわけじゃないようだなっ!!」
「攻撃を受け止めただけでほざきよる」
「くくく……」
「狂ったか。まぁ良い。ただの肉塊であっても人質としての……おらぬ。どこだ、どこにおる?」
こいつの攻撃手段は今ここに釘付けになっている。だから、白露の攻撃を阻むものは何も無い。
「シィィィィィィィイ!」
「忘れたのか?世界はッ!妾の為に有るという事をッ!!」
「お前こそ忘れているんじゃないか?さっき呆気なく負けた、その理由を」
「くかかかか!かっかっかっかっ。残念だったのぉ」
柱が崩壊して白露の方向にとんでもないスピードで向かっていく。いや、違うっ!これは柱なんかではないっ!擬人の肉体ッ!!
「白露っ!」
「なるほど……」
「妾に感謝せよ。妾を傷付けた罪をッ!貴様は命で償えるのだからッ!!」
「死ぬのは貴様だ。辞世の句でもゆっっっくり考えなさい。もっとも、そんな時間を貴様に残すつもりはないけれど」
胴体接合部に会心の一撃が入った!だが、これで死ぬようならさっきみたいな苦労はしていなかった。確実なトドメを刺すッ!!
「な、にッ!!」
「なにが永遠不滅の完全な存在だ!攻撃は届いている!!これは、貴様が死という運命からは逃れられない事を示しているっ!!」
「ふくくくく……くかかかかか!!妾は完全なる存在っ!この程度の傷、なんでもない。目に見えるものしか感じられぬ矮小な有機生命体如きが妾の魂を滅そうなどというのが土台無理な話なのだッ!思い知れッ!」
奴の光輪が変形して白露を包み込もうとしているっ!攻撃を終えた瞬間が最も無防備になる!それは俺達も同じっ!油断したッ!!
白露の耐久力はさほど高くないっ!普通に火傷をしたりしているっ!潰された上で偽神の魔力に灼かれれば死ぬっ!
この状況を覆えす方法は一つ。残り時間は130秒……やるしかない。ごめん白露っ!持っていけっ!30秒先取りっ!!
「しまっ──」
「何故前触れもなく上半身が千切れておるのかえ……!?」
「自分自身で何もしない貴様に分かるわけがない」
白露の下半身から上半身が生えきた。臓器からの再生では無いことにも驚いたが、ここまで再生に時間が掛かった事にも驚いた。
「ぅぁ──ぁあ……助かりました」
「危なかったね」
「近接は避けた方が無難ですね。変形主体で行きます。まだ剣生きてますか?」
「生きてる。後87秒残ってる」
白露が頷いて高速で移動し始めた。やる事は簡単。攻撃を耐えて未来を見て白露の攻撃が当たった箇所に斬撃を飛ばすたまけ
たったそれだけ。攻撃が早くて重い?それがどうした。ただ耐えればいいだけだ。絶対にやり遂げる。
「シィィィィィィィイ!!」
「ふん、そんな豆鉄砲のような攻撃で妾を削り取ろうなどと、思い上がりも甚だ……ぐッ!小癪な……潰れろ下郎ッ!」
「ぐッ……!ッぎ……!」
効いている。痛みなんて感じている暇は無い。とにかく淡々と攻撃し続けろ。時間が尽きる前に!
「妾は永遠不滅の存在。エネルギー切れなど起こらぬ。だが、貴様らは違う。攻撃がいつか必ず途切れる。その時が貴様らの最後ぞ」
「それはどうかな?」
「くかかかかか。妾はゆっくりその時を待っておればよい。しかし、ただ待っておるというのもつまらぬであろう?妾の怒り、とくと堪能するがよい」
触腕が展開し、魔力が収束していく。地鳴りと共に魔力が高まっていき、大地が崩壊していく。
俺を潰す事に集中していた擬人の塊が散開、偽神の周囲を高速周回する。一体何の目的d
「くッ!」
「……っ!!」
攻撃の軌道が逸らされているッ!!鞭のように伸ばして攻撃する以上、軌道を少しでも逸らされると当たらない。
どうする?どうすれば攻撃が当てられる?はっ……!!
「白露、戻ってきて」
「!?」
早めに出します