終わり
お待たせしました
「それでは武器と指輪の交換を」
「っ!?」
いきなりステンドグラスが崩れてっ!まずい、崩落するっ!主様はっ!主様はどうなってるッ!
「……」
「主様っ!これならすぐ治るっ!」
よし、外傷治ったっ!呼吸も穏やかになってきた!糸で隅を補強して回復体位で寝かせておけばすぐに目を覚ますはず。
「一体何が……っ!!」
乳魔も神父も死んでる……友人ってわけでもなければ、ましてや知人でもない。何もかも中途半端。
正直好きなタイプじゃない。本当に少し話しただけ。不思議なもので怒りがふつふつと湧いてくる。
「シィィィィィ──!」
「誰かと思えば……ふふふ。どうだ?以前とは比にならないだろう」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「ぐゥ!ふふふ……どうした?そんなものだったか?」
咄嗟だったからほとんど魔力は纏えなかったが最高速で土手っ腹に打ち込んだのに青痣ができた程度?
誰だったけ?前に放棄された地下都市から脱出する時に戦ったはず。ターレンス?フル・バースト済とはいえ腑に落ちない。
「ふふふ……お前達のおかげで私はここまでの恩寵を授かる事が出来た。感謝するぞ」
「穿神・砕骸衝!」
「ふふふふ……」
効いていない?魔力が大して篭っていないからさっきはほとんど効いてないのかと思った。しかし、今は魔力は纏ってある。
私の出した最高品質の糸すら引き裂ける威力が出ているはず。さっきのが通じて今のが通じないわけない。
「私のは全てを寛容に受け入れる。だが、清浄な私の体は穢れを勝手に拒んでしまう。そんな私の体にお前のような穢らわしい魔物が包み込まれるとどうなると思う?」
「チッ!」
「どうした?近付いて来ないのか?」
自切が少しでも遅かったら跡形もなく消し飛ぶところだった。魔力だけでは不十分……全身で振り抜くだけでも足りない。
近付けば攻撃の射程に入ってウェディングドレスみたいに消え去る。私には遠距離攻撃がある。
「アミノ……」
「遂に自暴自棄になったか。弓で私の恩寵を破ろうなどと……射ってみろ」
「ハバキリ!!」
「この程度で──居ない?ど、ごほぉッ!」
「後ろだノロマ」
どうやら魔力を込めた上で渾身の一撃を打ち込なら防げないみたいね。あんな玩具に気を取られて後ろからの接近に気付かなんて。
「貴様……よく、ごふぅッ!」
「どこを見ている?」
「ぐぅッ!ふふふ……どうやらそれが限界らしいなぁ。私は、がぁッ!この程度では死な、ぐぁぁッ!ないぞぉ!」
いいや、そんなわけない。この武器越しに骨が折れる音を何度も聞いている。擬人はこの武器で負った傷を癒せない。
確かに一撃一撃のダメージは致命傷に届かないかもしれない。それでも堅実に攻撃し続ければいつか殺せる。主様の攻略と同じだ。
「がぁッ!まずい、手足がもう動ぉッ!」
「はぁ……はぁ……くたばれっ!!あの世にすら行けないよう魂すら残さず消し去ってやる!!」
「こ、こんな所でっ!こんな所でぇぇぇぇ!!
……なんてな」
「!?」
脚が掴まれっ……いや、脚が掴まれたくらいで。まずい、いきなり止まったから呼吸がっ!避けられないっ。
「かはっ!こひゅー……こひゅー……」
「お前には高い再生能力がある。そして私の全身でもお前を包み込むには足りない。そこで、恩寵の副産物を使う」
「ごほっごほっ!はぁ……はぁ……」
「貴様ら魔物は女神の眷属の聖なる魔力に拒絶されているが故に微量に浴びるだけで火傷する。なら、高出力の魔力を浴びるとどうなるか?試すまでもない」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
まずい。再生能力が追いつかない。このままこんな高出力の魔力を浴び続けたら溶けてなくなるっ!
嫌……こんな所で死ぬ訳には……主──様を残し──て死ぬ訳に──はいか──な──い──の──に──
「マア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
「終わった……願わくば女神の許しのあらんことを」
早めに出します