結婚式
お待たせしました
「んん……んふふ♡」
太陽だ。日の光で起きるなんて久しぶり……数年振りくらいか。そう考えると思ったより経ってないのね。
「今日の朝は……うん。多めにしよう」
13時必着のはずだからお昼を食べる時間はなさそうだし。今日はちょっと豪勢にしちゃったな。主様食べれるかな?
「ヨシ!完璧〜」
朝食が飯出来た。我ながら完璧な仕上がりだ。今は……9時半か。そろそろ主様を起こそうかな。
「んふふ……♡」
今日もかわいい寝顔。いつまでも眺めていられる。このまま起きるまで眺めていたいけどもうそろそろ起こさないと。
「主様……主様……!主様……!!」
「ん〜……んあ」
「おはようございます」
「……おはよう」
寝起き弱いから何しても受け入れちゃうの良くない。あまりにもえっちがすぎる。朝から煽りやがって……反省しろっ♡
「今日は豪華だね」
「一応私達にとって記念すべき日ですから」
「やっぱり楽しみなんじゃないか」
「当然の形に収まるだけですが、一応?」
鋏角に乗せた主様の顔がニヤついてそうだったのでつついた。私の頬よりゴツゴツしてる。当たり前か。
「ごめんごめん……白露さん?まだ終わらないんですか?聞いてる……?」
「まぁ一旦この辺にしておきましょうか」
「一旦……」
ご飯を健気に食べる主様は今日も尊い。ふふ……一口が大きいからちょっと無理して口を開ける時とかは特に♡
「終わりましたね」
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまです。さて、準備しましょうか」
「そうだね」
そうは言っても準備する事なんてあんまり無いけれど。適当な着替えと指輪、それと武器、これだけあれば足りる。
「どうしたの?ぼんやり武器を見て」
「いえ……この武器の最後の役目が私達が結ばれる儀式だと思うと感慨深くて」
「確かに」
そう長く使っていたわけでもないけれどもう使わないと思うと惜別の念が湧いてくるものね……。
「さ、行きましょうか」
「うん」
主様を抱えて外に出る。相変わらず人通りが少ない。まぁこの地区はそういう場所だし多かったら怖くはあるけど。
「着きましたね」
「そうだね。そろそr」
「よいしょ。さ、行きましょうか」
「あぁ、うん」
受付を済ませて主様と分かれてヘアメイクやドレスアップがあっという間に終わっていく。
作業が見えなかった……有り得ない。私の動体視力ならこの程度の作業を見落とすはずがない。
「緊張してるんだ。若いね」
「誰が……!」
「皺の付いた顔なんて見せたくないでしょ?笑って笑って」
「ふん」
最後まで先輩面……ふん。どうせもう会わない。最後くらい大目に見るとも……主様に皺の付いた顔は見せたくはないし。
「さ、入場だよ」
「乳魔にされる魔除けのベール以上に頼もしいものなんてそうそうないや」
「皆そう言ってくれるよ」
女狐め……これだから悪魔は。昔の私に縁もゆかりもないこんな女とバージンロードを歩くなんて言っても信じないだろうね。
今までの思い出が甦ってくる。後半が濃厚すぎて思い出しもしなかったけど、思い返してみると私の前半生って最悪ね。
「あ……♡」
主様だ……格好良すぎる♡スーツ似合いすぎ♡片腕ないのにちゃんとフォーマルな雰囲気醸し出してるのなんなの♡反省しろ♡
「コホン、互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したよう──」
聖句の引用。人を愛する心得を今更説かれたところで、心に響かないけれど……主様が目を輝かせている!余計な事するな!
「新郎彼方はその健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いまか?」
「はい、誓います」
「新婦白露はその健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くことを誓いますか」
「誓います」
この言葉は好きだ。責任をもって幸せにしてあげる事こそが愛情だって、私は何も間違ってないと実感できるから。
「それでは武器と指輪の交換を」
早めに出します