千客万来
お待たせしました
やっと倒れた。これだから擬人は。ふっふふ、ふふふ、ふふふふふ……。過去の女の影はもう振り払われ、復讐をする積極的な理由はもうない。復習をする気力も今亡くなった。主様を縛るしがらみは何もない。
本当なら誰にも邪魔されない場所でゆっくり過ごしたいけど、この間そんな場所は爆破されてしまった……副都は気が進まないけど零番街が襲撃された今安全なのはそこしかない。真に主様と二人きりではないけど仕方ない。
「あったあった」
三界を繋ぐ扉。どこから侵入してくるのかと思っていたけれど、まさか私達と同じ扉から宣教師を送り込んでいるなんて。
舐められている。見ようによっては軍が制圧しやすい、のかもしれない。なんにせよ一般人が外に出たらそりゃあ捕まります。
「これは……?」
「私達の愛の巣への玄関です♡」
「そうなんだ」
かわいい……かっわいいですねぇ♡住民登録と現役と採血擬人診断が待っているのがまた面倒……でも、仕方ない。
「ちょっとだけ失礼しますね……ん♡」
「っ……!!」
「大丈夫ですよ……入るのに必要なだけですから、もう痛い思いはしなくて良いんですからね♡」
主様の唇を伝う血を無人の遺伝子検査機に入れ、私の指紋を機械に取らせる。数分の掛かるという噂だ。面倒極まりない。
『数値正常、殉神教徒ではありません。ID未登録の為、仮端末を発行します。台から端末を受け取り、腕に装着してください』
「危険なものではないので大丈夫……付けちゃいますね♡」
「……お願い」
主様の腕に仮端末を着ける。主様が私由来ではない物質を身に着けている考えると虫唾が走る。
でも、これがないと私たちの安息の地には入れないから我慢するしかない。なんていやらしいシステムなんだろう。
「ようこそ、私の故郷アガルタへ」
──白露視点に書き直し──
「ようこそ、私の故郷アガルタへ」
「お……おお……!!」
主様がキョロキョロしてる……またそうやって私を喜ばせるんだから……♡陽光照射魔具に戸惑ってるのかな?
主様と一緒だと平均的な晴れが再現された上部空間も秘境にしか見えない♡主様も喜んでるみたいで何より♡
チッ……主様が町中を歩く普通にモン娘やら、虫やら、獣やらの魔人、さらにはエルフやらドワーフやらの亜人を見てやがる。
スライム娘と30代くらいのババァが談笑する光景なんか見て……もっと私を見ろ。
チッ……道行く有象無象が薄着なのがなんだ?私の方が扇情的でエロくて交尾催促してるのになんで私を見てくれないの。
「ぐいー」
「いひゃい、いひゃい」
「現実ですよ」
「ほーひたい」
主様の頬を高速で引きちぎり治す。珍しいのは分かるけど……もっと私を見ろ。ニヤニヤして……もう!好きっ!!大好きっ!!
「狭いので気を付けてください」
「う、うん」
主様を抱っこしながら狭い路地を通り過ぎ、ボロい雰囲気の家屋が目立つ区画に足を踏み入れる。
先程の人々より活気は感じない……ほとんどの住民が今まさにセックスしてるんだから当然といえば当然なんだけど。
「ここは無貢献者区画です」
「無貢献者区画……?」
「この国ではなにもしなくても端末さえあれば生きていけます。ただ……何もしないと生活環境というか生活のクオリティ?そう!クオリティ・オブ・ライフが低下するんです。私もバイトとかはしてたんですけど、もう月限定貢献ポイントも、累積貢献ポイントも素寒貧で……。コホン、そんな事は置いておいて私達の愛の巣、行こ?」
「う、うん」
ボロい見た目の割には綺麗……というか見た目が凝ってる。これなら主様が天井のシミを霊か何かと勘違いはない。
そんなことよりも……もう我慢できない♡はぁ……♡主様の体♡主様の顔♡主様の腕♡大きい♡抱き締めると落ち着く♡
「ぎゅうううう♡はぁはぁ……♡んちゅっ♡んちゅううう♡んれろれろれろれろ……♡」
「んっ、んんっ」
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