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世界に音楽が足りてない  作者: 読みたいのを書く迷子
1/3

序章1

読みたいものを書いていきたいと思います。

目指せ着地。

私には前世の記憶がある。

といっても気がついたのはついこの間だ。


私は幼い頃から何を覚えるのも早かったし、上達するのも早かった。

同年代の誰よりも早く立ち上がり、字を覚え、四則演算を理解したのだ。

しかし同時にどんな物事も既視感を感じていた。


産まれて初めて足し算を教わる時も先生が説明する前に理解することが出来た。

問題を見た瞬間に解き方を思い出したというか、一度覚えた記憶がある気がしたというかその時は定かではなかった。


私はてっきり自分に素晴らしい才能があり、理解力がずば抜けているからそのように感じるのだと思い続けていたがどうやら違うようだ。私はただ単に前世の記憶、経験を生かして年端も行かぬ同年代に勝利し続けていただけに過ぎなかったのだ。しょんぼりである。


とはいえ前世の記憶はとてつもなく朧げなのだ。

何もなく思い出すことはかなり難しいが、キッカケさえあれば思い出せるようだ。

例えば足し算の問題を見ればそれの解き方は即座に思い出せたが、問題を見るまでは足し算という存在を思い出せていなかったし数字の組み合わせも扱えなかった。


そんな前世の記憶だがついこの間決定的な事があり、とんでもない事実に気づいたのだ。


この世界は前世の私が見ていたアニメの世界であった。





『輪廻のレクイエムコード』

人類の敵である怪物が現れ、主人公とその仲間たちがそれを撃破していく。

いわゆる能力バトルと呼ばれるジャンルのアニメだ。

中々人気のあった作品で私もまぁまぁ好きであった。


能力バトルという部分から分かる通りこの世界ではコードと呼ばれる特殊な能力を持っている人々が登場する。

設定では確か10人に1人の割合でコードを持っているとかそんな感じだった気がするが、主要な人物は当然のように全員コードを持っているし、何なら脇役っぽい奴も軒並み持っていたのでコードの希少性は定かではない。


しかしこのアニメ大きな難点を持っている。

『輪廻のレクイエムコード』が人気の出た要因の1つではあるのだが、何を隠そうこの作品バッドエンドなのだ。

言ってしまうと主人公は死ぬ。そして当然ヒロインも死ぬ。

ヒロインも中々悲しい死に際だったりするのだが、主人公も中々ヒドい最期である。

そして主人公を失った人類サイドも大変なことに……!?といったところでアニメが終わる。

最前線を支え続けてた主人公チームを失ったのだから人類の行末も推して知るべしといったところか。





なぜ私が前世の記憶を思い出し、ここがアニメの世界と気づいたのか。

というのはとても単純な話で第1話の最初の戦闘シーンを目の前で見たからだ。

主人公が怪物に襲われ、それをとある女性が助け、女性が少し不利になったところで主人公が覚醒する。

その時2人がこれから言う言葉が頭から溢れ出し私は全てに気がついたのであった。


さて自己紹介をしよう。

私の名前は月読月光(つくよみげっこう)。今年で20歳になるコード持ちの男である。


前世の記憶が正しければ『輪廻のレクイエムコード』に月読月光という名前は出てこない。

なんだか語感も好みであるし忘れているということは無いだろう。

それに重要な名前であるなら、名前を聞いた時点で私の前世の記憶が溢れだすハズだ。


すなわち私は月読月光というなんだか大層な名前に反してアニメストーリーには関係のないモブである。


私の話はともかくとして、このままシナリオ通り進んでしまうとこの世界はバッドエンド確定なのでそれを覆したい。

とは思うのの恐らく無理だろう。正直私1人が介入したところでどうにもならない理由で主人公たちは死ぬのだ。

ぶっちゃけ怪物の設定が厄介すぎる。少しばかり助言や手助けをしたとこでどうしようもない。

それに私のコードも問題だ。能力バトルアニメの花形である戦闘において一切役に立たないのだ。


記憶も曖昧で助言もしづらく、戦闘の手助けも出来ない私ではシナリオに影響を及ぼすことなど夢のまた夢。これはもう諦めるしか無い。


だがせっかく前世で大好きであったアニメの世界に転生したのだから、間近で主人公くん達の活躍を見守りたい所存だ。なんといってもこのアニメ、アクションシーンの魅せ方が良いのだ。





ということでやって来たのは夕刻の街。ここで主人公の2回目の戦闘が見れるはず。

私時間的には1日ぶりだがアニメではまだ第1話の内容だ。


せっかくなのでビデオカメラも用意してきた。帰った後スクリーンで見てアニメの実写みたいになるか試してみたい。ポップコーンと炭酸ジュースも持ってきたが、ソファーが無いことを失念していた。鑑賞会気分で来てしまっていたからてっきり用意されてるかと思っていたがそんな訳なかった。これは持って帰ろう。


というくだらないことをしている間に主人公がやってきた。

このタイミングで主人公はヒロイン(予定)と出会って一悶着する。

そして2人がヒートアップしてると怪物が現れる、といった流れのはずなのでカメラアングルの良い位置取りをするなら今がベストタイミングだ。


「アタシを知らないなんて、アンタ新顔?」

「だったらなんだよ?」


どうやら一悶着が始まってしまった。

75点くらいのアングルになると予想されるがこのへんで妥協しよう。

音声が入ってるかどうかはこのビデオカメラ様の気分次第と言ったところか。


「先輩には敬意を……!?」

「……何だ!?」


怪物である。

とは言え敵は第1話に出てくるような雑兵で、こちらはダブル主要人物だ。

こんなものは赤子の頬より柔らかい壁、容易さのバーゲンセールだ。

つまるところこの敵はコードについての説明や、主人公達の能力を改めて説明するために出てきているだけなのでヒーローショー気分で見守ってられる。


怪物に恐れをなした人々が逃げ出したので近くのオープンカフェの席が空いているのに気づいた。

おやつタイムチャンスである。





家に帰ってきた。

戦いは危なげなく終わったし、生の迫力は言い表せないほどスゴかった。

スゴかったハズなのだが……、なんかこう違和感があるというか。


とりあえずビデオを確認してみる。

75点のカメラアングルはやっぱり75点だ。


ビデオで見直してみてもアニメのバトルシーンさながらの大迫力を感じる。

肌で空気を感じてたせいもあってか臨場感もスゴい。


ただ、なんだろうイマイチ燃えない。


『輪廻のレクイエムロード』は熱い戦闘シーン、暗めの展開、そして素晴らしいBGMが売りのアニメだ。

その三本柱の戦闘シーンがこう……ん?戦闘、展開、BGM……戦闘BGM?


あ、違うわかった!BGMだ!

そうか!BGMがないんだ!





そして月読月光は世界を変えることになる。

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