あの女が会長だなんて・・・話をつけてきますわ。
その夜、フローラは転移鏡でローゼンの屋敷に向かい、彼の部屋を訪ねた。
「ローゼン様、見て見て。レアが2枚も入っていましたのよ。」
あの後、サラとルシアに3セットずつ購入させて、60枚のカードの中にレアのシャワーローゼンカードが2枚入っていたのだ。
ローゼンは見せられたカードを見て眉を寄せ。
「このようなカードが売られていたなんて、困ったものだな。」
「カードだけではなくて、ローゼン様のファンクラブがあると聞きましたわ。
会長はアンリエッタ・シャルマン公爵令嬢。どうしましょう?」
「アンリエッタか…付きまとうなと言ったはずだが、このような会を作っていたとは。シャルマン公爵に苦情を入れようか?」
「いえ、私が直接話をつけます。この際だから、名誉会員にしてもらおうかしら。」
「フ、フローラ????」
「冗談ですわ。でもローゼン様。せっかくローゼン様を愛でている方達のファンクラブを潰してしまっては、気の毒だと私は思いますの。ですから、ローゼン様に迷惑がかからない範囲で続けさせたら如何かしら。」
「私が公認するのか?」
「いえ、公認したら、アンリエッタが調子に乗って、ローゼン様に近づきますわ。
私が乗り込んで、話をつけてまいります。よろしいですわね?」
「ああ、君に任せる。」
「この際、ローゼン様はファンクラブに反対だと言っておきますわ。私の権限で、目を瞑るという事にしておけば、アンリエッタは調子に乗らないでしょう。それでいいですわね?」
ローゼンは立ち上がると、フローラを抱き締めて。
「私は君が傍にいればそれでいい…。愛しているよ。フローラ。」
「ローゼン様…私も愛していますわ。」
チュっとキスを交わして、幸せを満喫するフローラであった。
数日後、ファンクラブの会合が街の某カフェを貸し切ってあると言うので、フローラは参加させて貰う事にした。
50人の女性達が集まり、さながら立食パーティ形式である。
ローラがフローラを見つけて、手招きしてくれた。
「こちらですわ。フローラ様。」
レディナが、アンリエッタがいる方を指し示して。
「これからフローラ様を紹介しますわ。われらが会長へ。」
アンリエッタが、フローラの方を見た。そして、固まった。
フローラはにっこり笑って近づいて。
「お久しぶりですわ。アンリエッタ・シャルマン公爵令嬢様。」
「フローラっ…様、何故、ここへ???」
「ローゼン様を愛でるファンクラブがあると聞いてきましたの。ローゼン様は、許さないと言っておりますわ。」
アンリエッタは崩れ落ちた。
周りの女性達が何事かと近づいて来る。
「ファンクラブ位、作ったっていいじゃないのっ…。私だってローゼン様と結婚したかったのよっーーー。私の方がふさわしいのに。何故、私は結婚出来ないの?あんなにあんなにローゼン様は私と仲良くしてくれたのにっーーー。」
ミレーユやローラが崩れ落ちたアンリエッタの傍に行って心配そうに気遣う。
レディナがフローラに尋ねる。
「ローゼン様が許さないって…。ローゼン様とお話した事ありますの?フローラ様。」
アンリエッタはフローラを指さして、
「この女は…この女は…。フローラ・フォルダン公爵令嬢。ローゼン様の婚約者よ。」
「「「ええええええっーーーーー」」」
その場にいた女性達が全員驚く。
フォルダン公爵令嬢。父、フォルダン公爵は国王の側近中の側近で、中央で権力を振るう権力者だ。フローラはマリアンヌから奪って無理やりローゼンを婚約者にした我儘と悪評高いのだ。
フローラは皆に向かって。
「このようなファンクラブ。ローゼン様は許さないと言っておられます。でも、私は…
ローゼン様に迷惑をかけなければよいのでは?と進言しましたら、ローゼン様はそれならばいいだろうとおっしゃって下さいました。ですから、ファンクラブの皆様。安心してローゼン様を愛でて下さいませ。アンリエッタ会長。私は失礼致しますわ。くれぐれもこのファンクラブでローゼン様に迷惑をかけてはなりません。これは婚約者の私からのお願いです。」
アンリエッタは悔しそうに涙を流しながら。
「解りましたわ。フローラ様。」
「それでは私は失礼致します。」
優雅にカーテシーをし、フローラはその場を後にした。
その後、偶然にまた会った、友のクロードにその話をしたら爆笑された。
「何それ。それにしてもアンリエッタって人、余程、騎士団長の事、好きなんだね。」
「まったく、泣いて悔しがっていたわ。でも、私はローゼン様の婚約者。絶対に渡さないわ。」
「後、2年、結婚出来ないからね。この国の女性は18歳すぎないと駄目だから。」
「ああ、2年が待ち遠しいわ。」
2年後にフローラはローゼンと結婚するのだが、結婚後も、ローゼンファンクラブは長く続いたらしい。アンリエッタもこの後しばらくして、素敵な人と結婚するのだが、それは別の話。
結婚後もファンクラブの会長は長く続けたという。




