君のための選択、君のための転生、そして君と生きる為に‥‥
~プロローグ~
この世に生を受けたものは必ずあの世へ召される。
その時を決めるのは神だとされているが
原因を元に選別しその時期の査定を行うのは
我々の役目である。
これはあまり知られていない事実であるが
我々の存在は多くのものが知っているだろう。
実態を持たない架空の存在として‥‥
その姿は憂いを帯びたあたたかい光に包まれ、優しい眼差しと笑顔に満ちた幼い子供。
しかしそれは、伝承された、言わば想像の中の姿に過ぎないのだ。
まずはそんな我々の話をしておこう。
既に予想出来るように我々は人間ではない。
『天から神に遣わされた者』として神の言葉を人間に伝えるメッセンジャーである。
唯一、神によって創造された存在であり、この世とあの世の秩序を守ると共に輪廻転生においての査定を司る使者なのだ。
簡単に言うと、寿命を迎える魂をあの世へ誘導し、各々を相応しい場所へと還す。そして再び転生を受ける魂をこの世に送り出す。
それが我々の主な役割である。
そんな我々は一般的に『天使』と呼ばれている。
ここで改めて言っておくが、そうやって存在する我々『天使』の姿は幼い子供などではない。
この世で言う、性別は男であり、見た目は人間と変わらない。
そしてその存在たちは大きく分けて3つの階級に分類され与えられている役割もそれぞれ違い、特徴ともされている『翼』も階級によってその数は異なる。
それは階級を見分ける上で最も分かりやすい特徴とも言えるだろう。
次にその階級について説明しよう。
まず『天使』の中で最も高い階級とされる『熾天使』について。
『翼』は6枚。
愛、光、火という聖なる神の神聖な光を受け、
その鋭い威力は全てのエネルギー源となっている。
神に一番近い存在として天界の保護に不可欠な役割を担っている。
そして次に位置するのが『智天使』。
『翼』は4枚。
その翼同様、4つの顔を持つ。
それぞれが人間、獣、牛、鷹の顔をしており
より高速に飛ぶことが出来る。
主に天界に存在する地を守る番人としての役割を担っている。
そして最後に『座天使』について。
『翼』は2枚。
複数の眼を持ち、神の玉座を運ぶ尊厳と正義、
意思の支配者として月と太陽の運行を担っており、物質的な肉体を持つ最も人間に近い存在である。
その他にも多くの天使たちが存在するこの天界。
この世でもあの世でもない世界で使者として日々
あらゆる生と死に関わっているというわけだ。
しかし、全てを正確に、かつ、その時間の流れを保つ事が絶対として存在する我々は決して美しいものでも清らかなものでもない。
我々としては、神話や伝承に登場する幼い姿は正直受け入れがたいものであるし、翼を与えられるまでどれだけの時間と経験が必要か想像もできないだろう。それでも限られた者にしか与えられず、厳しい掟を守りながら存在し続けなければならないのだ。
頭上に光る『天使の輪』と呼ばれるものこそ、虚像の域を越えているということも是非、知っておいてもらいたいくらいである。
そして、そんな我々の存在理由は全ての生者たちの為にあるのだという事も‥‥
それなのに‥‥
時に我々の仕事を邪魔する者がいる。
そう、それは人間だ。
あらゆる生の中で最も厄介で扱いにくい存在である人間が稀に、その秩序を乱してくれる。
ここからは嫌味と愚痴になってしまうが、その稀な人間のせいで最高位として存在するこの俺が窮地に立たされることになろうとは‥‥
これは、そんな俺と稀な人間が起こす天界史上最も危険で残酷かつ、奇跡の物語である。