特異(得意)なバスケで異世界攻略 第16話
『あなたの目は節穴ですか!きちんとした家を紹介してください!』
と急に怒ったミリカに俺は何事か聞いてみた。すると、こちらの世界では通常、家の紹介をしてもらう時は2パターンあるみたいだ。一つは先に予算や間取り等を聞いてくる業者。こちらは駆け出しの業者に多いらしく失敗しない事を優先にする場合らしい。
もう一つが、今回の業者みたいに少しの質問や客の人と成りを見極め、自分のセンスや経験で家を紹介する業者だ。こちらの場合は間違った選択をすると今回みたいに客の機嫌を損ねてしまうが、値が張る家を紹介しプレゼンする事が出来るのでベテラン業者のほとんどがこの手法を使っているらしい。
不動産屋のおっさんは慌てて、『失礼いたしました。もう少し手頃な物件がよろしかったでしょうか?』と謝ってきた。するとミリカはあきれた顔をして『もう結構です』とだけ言い残し、俺の手を引っ張りその場を離れたのであった。
怒ったミリカを初めてみた俺は(ギルドを壊した時はお説教みたいな感じだったのでノーカンで。)、
「急にどうしたの?なにが気に入らなかった?」と聞いてみた。するとミリカは
『こんな失礼な事、私の口からは言いたくありません。もう一軒行きましょう。今回は相場が知りたいってだけだったので、近くの不動産屋に行ったのが間違いでした。次は老舗の有名店に行きましょう!』とまだ少しご立腹な様子のミリカに手を引っ張られて次の不動産屋を目指した。
次に着いた店は店舗こそ大きくは無いが、掃除がしっかりと行き届いており、年季を感じさせる作りが高級感を醸し出している。入り口には控えめな大きさの文字で”オーシャン商会”と書いてある。中に入ると、すらっとした体形で上品な感じのする少し年配の男性が『いらっしゃいませ。我が商会へようこそ。』と迎え入れてくれた。俺たちはその丁寧な所作に安心を覚え、結婚することになったので、物件を見せて欲しいと伝えると、『かしこまりました。遅れましたが私はこの商会のオーナーのオーシャンと申します。今後もお付き合いの程よろしくお願いいたします。では物件の案内の前に1点だけご質問がございます。すぐにお住まいになられるご予定はありますでしょうか?もし時間をいただけるのであればお薦めの物件が1つございますが、ご紹介をさせていただいてもよろしいでしょうか?』と尋ねてきた。
俺は今回は下見なので、住むまでに少しだけ時間がかかると伝えると『かしこまりました。それではお薦めの物件を早速見に行かれますか?』と問われたので、俺達は『お願いします。』と声を合わせた。
オーシャン商会から20分位歩いた所に物件はあるらしく、馬車を出してくれるというのを、「周りの環境も確認したいから」と断り歩いて向かう事にした。商会を出て暫く進むと段々周りの家が大きくなっていく。さらに庭付きの家が立ち並び屋敷の広さも豪邸ばかりになってきた所で、俺はミリカの耳元で「何か場違いな感じの所にきてないかなぁ?」と小さな声で尋ねた。するとミリカは『そうですか?私には良い所だと思うのですが?』とコテンっと可愛く首を傾けたので、黙って付いて行くことにした。
それから数分後、オーシャンさんが『こちらの物件でございます。』と紹介してくれたのは、サッカーコートが2つ位取れそうな庭に、学校の校舎位の大きさの3階建ての豪邸だった。
その豪邸を見たミリカは満足そうに『うんうん。』と頷きながら、『なかなか素晴らしい物件ですね。気に入りました。ところで何故スグに住む事が出来ないのですか?』とご機嫌さんで尋ねていた。
オーシャンさん曰く、この物件は先日まで大商会のオーナーが住んでいたのだが、他国との大きな取引に失敗し借金のカタに差し押さえられている物件みたいだ。オーシャンさんの商会が買い取る事は既に決まっているらしいが、前住人の借金の清算に時間がかかっているらしくそれまでは名義の変更は出来ないのだそうだ。ちなみに値段は10億G。大白金貨100枚だ。
俺があまりにもの凄さにびっくりしてボケーっとしている間に、ミリカは色々と質問している。
そしてオーシャンさんとミリカの次のやり取りにに俺はびっくりして我に返るのであった。
『奥様、旦那様の器量でしたら最低限この位は必要だと思われます。』
『さすが有名店のオーナー様ですね。ロウさんの事を良く見抜いていますね♪』
「ええええええっ~~~~~~!!」