15.対峙
三人は公民館の一般用駐車場の目立たない隅のほうに車を止め、車内で待機しながら朋実からの連絡を待っていた。
時刻は、午後八時になろうとしている。公民館の事務所の明かりに映る影が、先程からあわただしくなってきた。どうやら、帰り支度を始めたようだ。
車内灯も消しているため、その動きはよく見えた。
「……なんだか冷え込んできたみたいだわ。やっぱり、都市部みたいな変な暖かさはないわよね」
「特に内陸地は、どうしても寒暖の差が激しくなるさ。このあたりなら、夜はかなり冷え込んできてもおかしくはないだろう」
結城と和海が、何気ない会話で気を紛らわせる。連絡はなかなか来ない。
(うまく説得出来てるといいがな。どこまでこっちの話を信じてくれたか、だが)
(島木さん自身、依り代になってしまった高岡さんの様子がおかしいと思っていたみたいだから、ある程度信じてくれているとは思う。直接隠れ家に連れて行ってくれなかったところが、その信用の薄さだろうけど)
(そいつに掛けるしかないのがつらいところだが)
(僕だって、万一また言いくるめられたら、と思うと不安だけど、信じるしかないよ)
晃はワンショルダーから細い鎖のようなものを取り出すと、前方で話す二人に気づかれないように、そのまま右手に巻きつけ、輪になっているところに指を通して外れないように止めた。
(本当は、こんな準備したくはないけど、話し合いが出来なかったときのことを考えたら、借りてこざるを得なかった。ずいぶん頭下げて頼み込んだけど……)
(……切り札だな。もっとも、使わずにすめば、それに越したことはないシロモノだが)
(これのせいで、ここに来るのが遅くなったんだからね。自分でも、石橋叩いて渡ってると思うよ)
その時、結城のスマホに着信を告げる電子音が鳴った。
「はい、結城です。あ、ああ、そうですか。わかりました。あと一時間ですね。はい、こちらはいつでも大丈夫です。では」
結城が電話を切ると、和海がすかさず尋ねた。
「一時間後って言いましたが、一時間後に二人がこちらに来るということですか」
「そういうことだが、待ち合わせ場所も変更して欲しいそうだ。公民館の裏手にある、グラウンドのそばの用具倉庫のほうで待っていてほしいといってきた」
結城が肩をすくめる。
「ご本尊が、そちらにしてくれれば行くと言い出したらしい」
「所長、それはもしかして……」
晃が口を挟んだ。
「公民館の裏手のほうは、まったく明かりが見えませんよ。相手は何か、狙っているような気がするんですが」
「それは私も考えたが……。ここは行かざるを得まい。たとえ罠でも、な」
「一応依り代の友人が近くにいるんだし、あまり無茶なことはしないのではないかと思うんですけど……」
晃と結城の会話に割り込んだ和海の言葉が、ただの希望的観測に過ぎないことは、口にした和海自身がよくわかっていた。
程なくして、公民館事務所の明かりが消えた。まだ残っている廊下の明かりの光の中から、幾人かの人影が姿を現し、職員用駐車場へと消えていく。
最後のひとりが廊下の明かりを消して戸締りをし、去っていくと、辺りは漆黒の闇に包まれる。今日は月齢も悪く、空は晴れているのに月は見えなかった。
周囲から人に気配が消えたのを確認して、三人は一旦車を降りた。
辺りは、道路沿いに思い出したように立っている街灯が周囲に投げかける光によって、わずかに照らされていた。しかし、公民館の裏手には、一切の光が見えない。
公民館のはす向かいに建つ町役場も、すでに真っ黒い影となっている。
結城が、腕時計を見た。午後八時をわずかに過ぎている。
あと一時間で、本当に相手は来るのか、それはまったくわからない。しかも、外気は意外に冷たかった。
三人は車に戻り、予め用意しておいた懐中電灯を手に取ると、ぎりぎりまで車内で待機することにした。
心なしか、外の冷気が車内に忍び寄ってくるような気がする。
普段なら何も感じないはずの冷気が、なんともいえない重苦しいものを連想させる。
三人はふと、すでに悪霊の斥候が来ているのではないかという思いに囚われた。
周囲を見回した三人は、互いの視線が交錯することになり、苦笑した。
「……考えることは、皆同じだな。悪霊の手先になっている連中がいないか、確認したんだろう」
結城の言葉に、和海も晃も顔を見合わせて軽くうなずく。
「特に、性質の悪い霊体はいないようですね。この冷気は自然のものですよ。あの悪霊に関係するものではありません」
晃が改めて確認するような口調で言い切ると、二人は安堵する。
「だが、気をつけているに越したことはないな。油断は禁物だ。深夜でも明るい繁華街と違って、この辺りは闇。もはや、人間が動く時間ではない。霊たちが跳梁する時間だ」
結城が、外に広がる闇に目をやりながら、つぶやくように告げる。
「月でも出ていれば相当違うのに、間が悪いですね、わたしたち。でも、そういうめぐり合わせだったんだって思って、気を引き締めるのが、正しい対処法ですよね」
和海が、自分自身に言い聞かせるように言った。
向こうの様子がわからないので、どれだけ気を揉んでもこちらからは連絡出来ない。
三人は辛抱強く、待ち続けた。
和海が何度目かの現在時刻確認をしようと、スマホの画面を見たとき、結城のスマホの着信音が響いた。
結城が出ると、またも朋実からのもので、もう三十分ほど遅れるという内容だった。ただし、これがほぼ確定で、これ以上は遅くはならないと言い、電話は切れた。
「やれやれ、わずかずつでも遅くしようとする意図が、はっきりわかるぞ」
結城が思わず苦笑すると、和海も肩をすくめながら外を見た。
「本当に来るんでしょうかね。今ひとつ、信じ切れないという気がするんですよ、わたし。そりゃ、島木さんは一所懸命やってくれているとは思いますけど、悪霊をうまく説得出来るのでしょうか」
「それは……やってみなければわからんだろう。ただ、相手にこちらの素性はばれていると考えたほうがいいだろうが」
「あえて会いに来て、そのまま全力で潰しに掛かる、という可能性もないわけではないですよね」
晃が、一番考えたくない可能性を口にした。
「冷静に言ってくれるな。最悪の可能性なのに」
結城が苦笑する。晃も微苦笑した。
「……どちらかというと悲観主義者なもので、最悪な場合のことを、考えてみるだけですよ」
それを聞いた和海は、力なく溜め息をついた。
「……今、九時少し前。あと三十分くらいで、さっきの電話が真実かどうか、はっきりわかるわ」
和海は視線を外に向けたまま、続けて溜め息をつきながら、さっきから手にしている懐中電灯を、点灯させては消すということを何度か繰り返した。
「おいおい、小田切くん。肝心のときに電池切れになるとまずいから、その辺にしておきなさい」
結城が注意すると、和海はぎょっとしたように自分の懐中電灯を見つめる。完全に無意識にやってしまっていたようだ。
気まずそうに懐中電灯を消す和海の様子を見た晃が、微笑みながら自分の懐中電灯を差し出した。
「いざとなったら、僕のを使ってください。いや、ここで取り替えましょうか。あとで、交換なんて言っていると、タイミングを逃すときがありますからね」
「君は大丈夫なのか、早見くん」
結城が案じるが、晃は大丈夫だと笑った。
「僕はこれでも、わりと夜目が利くんです。順応性が高いというんですかね。だから、万が一懐中電灯の光が弱くなっても、平気は平気ですから」
晃はそういって、和海のものと取り替えた。
「……ごめんなさいね。つい落ち着かなくなって、所長に言われるまで、いじってたの自分で気づいてなくて。本当に平気なの? 晃くん」
「ええ、気にしないでください。ある程度、勘でも動けますから」
「勘で動けるなら、たいしたもんだ」
結城が半ば本気で感心している。車内に張り詰めていた緊張感が、わずかに弛んだ。
三人は、少し早めに現場を確認に行こうと車外に出て、もう一度公民館の裏手に視線を向ける。やはり、一切光が見えない。それを確認した結果、余計に不安が募る。
「一応車から降りてはみたが、どうする。約束の時間までには、あと二十分くらいはあるが」
「ゆっくりと、慎重に行きましょう。向こうに行ったら、懐中電灯を消して、待っていればいいんですよ。相手が来たときには、やっぱり明かりが近づいてくるはずだから、それで誰かが来たことくらいはわかります」
和海はそう言って、奥を指差した。
それをきっかけにするように、三人は懐中電灯の光を頼りに、ゆっくりと歩き出す。途中までは舗装された道路が続いていたので、特に問題はなかったが、そう強くもない懐中電灯の光に照らされた倉庫らしい建物は、道路から離れたところにあった。
倉庫の先は、すぐ後ろに金網が張られたフェンスが見え、その先は何もないようだ。あそこがグラウンドと考えて間違いない。
道路から倉庫までは、懐中電灯の光の届き具合から考えて、五メートルほどだろうか。その間は、細かい砂利が敷き詰められている。広さはそれなりにあるので、駐車場も兼ねているのだろう。
表の通りからは、ざっと百メートル。公民館の事務所も閉まり、一番近い民家まで三百メートルはある。すでに雨戸やサッシを締め切っているだろうことを計算に入れると、ここで少々の騒ぎを起こしたところで、誰も気づかないに違いない。
「……明らかに、狙っていませんか。ここなら、もし何か事が起こったとしても、本当に朝まで誰にも気づかれませんよ」
倉庫のほうを照らしながら、晃が淡々と口を開く。
「冗談でも、そんなこと言わないでよ、晃くん。これからここで、悪霊と対峙しなくてはいけないのに……」
和海の言葉は、口調こそたしなめているが、不安の陰りがありありと感じられた。
「とにかく、指定場所はここなんだ。ここで待っているしかない。さあ、倉庫の前へ行くぞ。そこで、懐中電灯を消して、相手が来るまで待機だ」
結城は、心の中の不安を打ち消すように、自ら倉庫の前へと向かった。砂利を踏みしめるかすかな音が、闇の中で妙に大きく響く。
結城のあとに続いて、和海と晃も倉庫の前へと向かう。
「今日は歩くと思って、ウォーキング・シューズを履いてきたのだけど、正解だったわ」
「出来れば、荒事にならないことを祈っていますよ」
晃がそういうと、和海はわざと明るい口調で答えた。
「荒事だったら、所長に任せておけば大丈夫じゃないの」
「それは物理的に睨みあいになったら、の話でしょう。僕が言っている荒事は、能力のぶつけ合いのことを言っているんですよ。そういう事態になったほうが、どう考えても厄介ですからね」
「それは、晃くんにお任せね。もちろん、わたしも所長も出来る限りのフォローをするけど」
「僕だって生身の体なんですよ。まして、体力的なことを言えば、和海さんより駄目かも知れないのに……」
思わず愚痴をこぼす晃に、和海はその肩を軽く叩いた。
「わかっているわよ、それは。でも、わたしや所長じゃ、あの悪霊には太刀打ち出来ない。ポルターガイスト事件のときに、痛感したの。あのときだって、晃くんが来てくれなかったら、どうすることも出来なかった。だから、お願い、頑張って」
頑張ってと言われて、晃は内心苦笑した。
(僕が頑張れるかどうかは、これからの成り行き次第だからね。全然先が見えないよ)
(いざとなったら、俺が手を貸す。切り札もある。自分の力を信じて、全力で行け)
遼の励ましに、晃は大きく息を吐き、自分自身に気合を入れた。
倉庫の前に集合すると、三人は次々と懐中電灯を消していく。
始めは何も見えないまったくの闇に感じられたが、次第に目が慣れてくるにつれ、星明りが目に入るようになる。
月がないせいでもあるが、夜空に瞬く星は思いがけないほど美しかった。人家の明かりが気にならないため、都会の空では見えないようなかすかな星の光までが、仄かに目に入ってくる。
遅い時間になれば、華やかな冬の星座も東の空に現れるのだが、今は秋の物寂しい星空が、それでも精一杯輝いていた。
三人は荷物を降ろし、しばらく空を見上げ続けた。
星空を眺めていると、少しは気持ちが晴れていく。しかし、都会より明らかに冷え込みがきつい。
放射冷却が始まっているのか、どんどん気温が下がっているような気がした。
「まさか、気温一桁にまで下がらないでしょうね」
和海がつぶやいたその時、表の通りに繋がる道からエンジン音が響き、ヘッドライトが闇を引き裂くように周囲を照らした。
やってきたのは、見覚えのあるミニバンだった。島木宅前に止めてあったものに、違いない。
ミニバンの中には運転席と助手席に人影があり、そのままハンドルを切って砂利の敷かれた敷地の中に入り、片隅に止まった。
サイドブレーキを引く音がして、中の女性らしい人影が、何か話をしていたかと思うと、運転席と助手席のドアが同時に開き、懐中電灯が点けられる。直後に、ヘッドライトも車内灯も消され、闇の中に懐中電灯の光だけが浮かび上がった。
三人も懐中電灯をつけるが、助手席から降りた人物の放つ異様な気配に、全員が緊張感を募らせた。
冷凍庫の中から漏れてくるような、冷たい、そして死臭にも似た特有の臭いというか気配。
しかし、これが尋常のものでないことは、すぐ隣にいる島木朋美が何も感じていない様子であることでわかる。
三人は、慎重に近づいていった。朋実の持つ大型の懐中電灯が、三人の姿を照らす。
「さあ、麻里絵。とにかく、この人たちがご両親から頼まれた人たちだから。ちゃんと話をしてね」
朋実が促し、高岡麻里絵がゆっくりと三人に向かって歩き出す。そして、あと二メートルほどで正面に対峙するというあたりで立ち止まると、表情をまったく変えぬまま、いきなり晃を指差した。
一応警戒はしていたものの、それはいきなりの攻撃だった。
晃の体が、まるで目に見えない何らかの力によって弾き飛ばされたかのように吹き飛び、物凄い勢いで倉庫の外壁に、背中からまともに叩きつけられた。
晃はそのまま崩れ落ち、倒れ込む。
朋実が、にわかには信じられないものを見たショックで、声にならない悲鳴を上げて懐中電灯を取り落とした。
「いかんっ」
結城が晃の下に駆け寄ろうとして、やはり弾き飛ばされるように横に数メートル吹っ飛んだ。
「やめてっ」
和海が叫び、二人を守るかのように、麻里絵の前に立ちはだかった。
「しつこく追いかけてこなければ、手加減してやったのに」
麻里絵の声を聞いた朋実が、震える声で言った。
「……あなた、誰? 麻里絵の声じゃない。あなた、誰なの……」
麻里絵が、懐中電灯を投げ捨てて、朋実のほうを振り返る。和海が必死で照らす懐中電灯の明かりの中で、逆光となった影の口元が、笑いの形に歪むのが見えた。
「そうよ。あんただって、この連中から、あたしの正体聞いてるんじゃないの。あたしはただ、体を借りてるだけ……」
麻里絵の口から、金切り声のような甲高い笑いが飛び出した。
あまりのことに硬直する朋実の体が、突然背後に飛ばされた。彼女はドアミラーを体で弾き飛ばしたあと、そのままミニバンの横に倒れ込み、動かなくなった。
「勝手なマネはさせんぞっ」
立ち上がった結城が、麻里絵に向かって突進する。だが、その体に触れる前に、まるで壁にでも激突したかのように体が後ろにひっくり返った。
咄嗟に受身を取って、最低限のダメージですんでいるが、それでも無傷というわけには行かない。必死に立ち上がろうとする口元から、呻き声が上がる。
「あなた、松崎淑子さんでしょう。どうしてよっ。どうしてこんなことをするのよっ!」
和海の叫びに、麻里絵に中にいるもの、松崎淑子が答えた。
「あんたらが、あたしの邪魔をするからよ。あたしはね、凍え切っている体を温めて欲しいだけ。誰も、温めてくれないんだよ。温めてもらおうとしてるのに、みんなみんな勝手に自分から冷たくなっていくんだ。どうしてなのさ。どうして温めてくれないのっ!」
「それは、絶対に叶えられない望みよ。だって、死んでしまっているあなたを、温められる生身の人間なんて、いるわけないじゃないのっ!!」
和海の必死の言葉にも、松崎淑子は聞く耳を持とうとしない。
「……きっといるはずなんだ。あたしのこと、温めてくれる人が。彼氏も勝手に冷たくなった。彼氏に横顔が似てる人も、話し方が似てる人も、後姿が似ている人も……みんな勝手に冷たくなって、動かなくなった」
淑子を宿した麻里絵の顔が、怒りに歪む。
「……男なんて、みんな勝手なんだ。彼氏だって、あたしじゃなくて、関係ない女と見合いしようとした。そしてあたしは、こんな風に凍えてしまった。だから温めてもらうんだ。温めてくれる人が現れるまで、あたしはずっと探すんだっ!」
その時、隙をついた結城が飛びかかろうとした。だが、さすがに動きが鈍くなっていたためか、一瞬早く気づかれ、再び弾き飛ばされる。今度は、狙ったように和海のほうに。
逃げるまもなく巻き込まれた和海は、結城もろとも撥ね飛ばされた。
結城の体の下敷きになる形になった和海は、その瞬間の衝撃に耐え切れず、気を失ってしまった。結城は全身の痛みに耐えて、かろうじて立ち上がったが、またも撥ね飛ばされて、ぐったりとなった。
皆が持っていた懐中電灯は、あらぬ方向に転がって、無関係なところを虚しく照らしている。
ここを誰かが通りかかったところで、何が起きているのか、わかるものはいないだろう。
この場で意識があるのが自分だけだと確信し、麻里絵の中の松崎淑子はほくそえんだ。
その彼女の視線がふと、倉庫のところで倒れている晃に向かう。
「顔を知られたし、どうせこの体も乗り換えるつもりだったけど……。あの子に温めてもらおう。あんな綺麗な子はそういないものね。それに、あれだけの能力があるんだから、きっと……」
晃のほうへ数歩歩み寄ったところで、彼女は足を止める。晃が半身を起こし、彼女のほうを睨んだのだ。その顔は、怒りのためにかすっかり雰囲気が変わり、一種の鋭ささえ感じられる。
「……目を覚ましたのね。なまじ能力が高くて厄介だから、ずっと寝ていてくれたほうが、面倒がなかったのに」
晃が、ゆっくりと立ち上がる。その様子を見ながら、彼女が怪訝な顔になり、次の瞬間にはそれが驚愕に変わった。
「……あんたは誰!?」
思わずそう言った松崎淑子に向かって、晃が口を開く。
「……てめえに、そういうことを訊く資格があるのかよ」
聞いたこともない男の声だった。
しかし、それより彼女が愕然としたのは、その気配だ。それはとても、生きている人間のものとは思えなかった。まるで死霊がそこに立っているかのようだ。
いや、完全な死霊でもない。死霊と生霊の中間、というより、気配が入り混じっているようだと感じた。
「……あんた、誰……」
「てめえだって、気づいてはいるんだろ、俺が何者であるのかくらい」
晃が、いや、晃の中にいるものが、にやりと笑った。