勝利王の書斎08「罰を受けずに私に触れることはできない」
第七章が終わり、第八章が始まる直前である。
勝利王の書斎は、歴史小説の幕間にひらかれる。
第八章の章タイトルが物騒だが、事実である。
私が殺人者と呼ばれるまでのいきさつは、この章全体を通して書かれることになるだろう。私の心が深刻な傷を負っているとしたら、おそらく、このときの事件が大きなウェートを占めている。
死んでも消えてくれない苦い記憶、癒えない心の傷、終わらない悪夢がある。
第六章〈王太子の受難〉編の冒頭「書斎06」で、「記憶とは、死後も消えない永遠の財産だ」と書いたが、不幸な記憶とは負債のようなものかもしれない。
ジャンヌ・ダルクの件は、生きている間に清算したと思っている。
彼女に関して、私にやましいことは何もない。
詳細は、作中でしかるべきときに書かせていただこう。
さて、今回のサブタイトルは次のとおり。
"Non inultus premor."
フランスの慣用句……と言ってもほぼラテン語だが、直訳すると「前歴(前科)はない」
その意味は、「罰(または報復)を受けずに私に触れることはできない」
まだ先の話になるが、私の長男で慎重王(もうひとつの二つ名は「遍在する蜘蛛王」)と呼ばれたルイ11世の座右の銘でもある。
さて、時間が来たようだ。
これより第八章〈殺人者シャルル〉編を始める。




