第99話 Girl with Gun その四
ミランダさんの攻撃型エー・トゥールは、それまでは黒色だったのに今は地金の色が剥き出しになったのか金色になっている。その色がキラキラと研磨されてるかのように薄皮を剥がされて行き、中の配線がいよいよ剥き出しになっている。
これはもう破壊寸前だな。真理ちゃんと恵風ならいつでも料理できる。
(見せるのはこれぐらいでいいか?)
恵風が突然にオレの方につないで来た。
(どういうこと?)
(きちんと恐怖を与えてやるんだろ? 真司をやっつけたと思って勝ち誇ってたコイツを、完膚無きまでに打ちのめした方がいいんだろ)
(あ、でも通信機は持たせてね。持って帰ってもらわないと、今後の情報が入って来なくなっちゃうから)
(了解。背中回りだけをつなぐよう残して、後はひたすら恐怖を与える方向で遊ぶぞ。真理を舐めてかかった罰は与えんとな)
(いや、罰ってのは随分と上からだな)
(じゃあ初めてこちらの都合を受け止めてもらうってことでどうだ?)
おお、それは名案だな。今まで散々セプトの都合に振り回されてきたからな。
(おっけ~)
(でもやるのは真理だ)
(ええーっ?)
真理ちゃんがムリむり無理と首を振っている。
ならちょっとだけ助け船を出そう。
この作戦は元々真理ちゃんの気持の快復がオレにとっては目的だった。
(真理ちゃんさ、彼女の思考だけ加速させてあげなよ。そうすれば恵風の目論見はすぐ達成できるから)
(そうなの?)
(だってこれは大変だってすぐにミランダさんわかるでしょ。思考が深度一に入ったらそれだけ理解が早まるんだから)
(なるほど。わかりました)
(脳みそだけオレたちの深度一に入れてあげてね)
(うーん、はい。じゃあやってみます)
するとこれまでミランダさんの周囲にあった風だけの空間がなくなって、ミランダさんがぐるんと有り得ない回転軸で回された。回りの風の方向とは逆に、しかも三次元的に回されたのだ。
見てるこっちが虚を突かれたのでミランダさんはもっと虚を突かれたことだろう。
するとミランダさんの体勢が元の位置に戻った時には、塵風の壁がミランダさんの回りに差し迫っていた。細かいくらいに覆われている。これでは手を伸ばすことも足を曲げることも、もちろん自分の意思で動くことも出来ない。
もしそれをやったら、その時は手足がもげることを前提とした自殺行為を心に決めた時になる。
(真理、試しに岩塊に撃ってみろ)
(わかった)
真理ちゃんが深度一から現れた空間操作銃をつかむ。適当に近くの岩塊に試し打ちをすると音もなく岩塊が崩れた。
その結果にミランダさんが目を瞠る。
「私がやっても通用しなかったのに、なぜ」
簡単だ。恵風がそういう風にしてるからだ。真理ちゃんを動かすのも、塵風を動かすのも、空間操作銃の弾丸に何を込めるのかも、みんな恵風がお膳立てしてることだ。でも恵風が憑いてることを知らないミランダさんにこの答えに辿り着けるわけがない。
「なぜっ」
重ねて問うが、真理ちゃんは困った顔をしていた。
なので聞こえるかどうかは知らんがオレが答えて上げた。
「知らないって恐いよね」
その声が聞こえたらしい。ミランダさんがオレをキッと睨みつけた。
「そう。未知は恐ろしいんだよ。知らないジャングルに分け入る時、知らない深海に潜る時、知らない星々へ渡る時、オレなんかは知らないからおっかないし、すぐ逃げれるよう慎重に入るけど、地球の人々を猿だの原始人だの見下して、端から慎重に行動してないんだから、今さらやられる恐怖からこうなってる理由を教えろなんて言われてもさ、しょせんその程度の準備だったんでしょ」
「私に負けたくせに」
「じゃあ彼女にも勝てばいいじゃない。そういう言語でしょ、ミランダさんがして来たことは。殴って言うこと聞かせて奪うだけ」
「つっ、生意気よっ」
「話はもういいよ。オレたちだってもう充分に確認した。ストーカーに付き合って逃げるのにも、もう疲れちゃったよ」
本当に充分に確認した。
オレがそうして真理ちゃんに肯くと、真理ちゃんも怖々と頷いた。真理ちゃんは人に銃など向けたことがない。
だがそのためらいをあっさりと恵風が振り払った。
真理ちゃんが銃を構える。そう思ったその時には──。
もう引き金を引いていた。
「あっ」
真理ちゃんの声より早く、ミランダさんの脳に深度一がかかる。
するとそれまでおとなしかった塵風にもエンジンが掛かった。流れる速度が一段階速くなり、その中に取り込まれたミランダさんが金属片や岩塊の間を縦横無尽にすり抜け始めた。
時折その塵芥はミランダさんをかすめるのか、金属と金属が耳障りな甲高い音を立てて互いに牙を向けるように噛み付きあっていた。だがその牙に傷つくのは、決まってミランダさんの着る攻撃型エー・トゥールの方だった。
ミランダさんは眼前を横切る岩塊に眼を閉じ、耳のすぐ脇を擦過音を残して彼方へと消えてく金属塊に怯え、自身の身体は風によっていいように危険な場所へ、危険な場所へと運ばれ続け、為す術もなく舞上げられたり舞落とされたりしている。
まさに恐怖体験の連続。
恐怖に次ぐ恐怖。
だが頭は回るけど身体は動かない。それが今のミランダさんの状態だった。
脳だけ加速してるのだ。
恐怖ばかりを感じるが、その恐怖に反射してるはずなのに身体がついて来ない。動かそうにも身体が動かないのだ。これも脳だけ加速してるからである。
深度一はそういう世界だ。それはセプトの人間こそ恒星間を宇宙船を駆使してほぼ光速の速度で移動してきたのだから、オレたちよりよっぽど詳しいだろう。
そして恐怖も加速する。
恐怖しか与えられていないのだ。ミランダさんにしてみれば、まるでアステロイドベルトの中に生身で飛び込まされたような気分だ。それも感知だけが光速で、動きは通常通りなのだ。その感覚のずれはミランダさんを苦しめてるだろう。だって脳が動けと反射を促しても、ほぼ光速に動くことも可能となる深度一と、光速などでは到底動けない生身の肉体とでは、神経伝達だけでも大きな齟齬がある。
それなのに、そんな状態なのに、ミランダさんは意に反してアステロイドベルトの中だけを風によって強制的にぶん回されてるのだ。
恐怖だけが加速した。
いつ重い岩塊にぶつかって蛙のように潰れても、鋭い金属片にぶつかって細切れのバラ肉のようになってもおかしくないのだ。
それがそれだけしか認知できないのだ。ミランダさんはもう自分がどれだけ塵風に翻弄されたのかもわからない。こちらとしてはいつでも止めを刺せるのだ。
それを恵風には禁じているけれど。
◇
ミランダは事象だけを認識する。身体は動かない。目を閉じようとする速度ですら遅い。遅すぎるのだ。と言うか動いてくれない。
その眼前を遠慮なく鋭い金属片や無骨な岩塊が飛び回る。
ぶつかる、またぶつかる、今度こそぶつかる。切れる、切り刻まれる、今度こそバラバラになる。その連続だ。そしてそれしかない。それが世界で全てだった。
やめてと願う心も最早遠くなった。
加速した世界では自分の願いなど何処にも届かない。認知してくれる者がいないのだから当然だ。
ただただ孤独だった。恐怖だけがそばにあった。
そんなえげつない効果を生んだ真司発案のオレたちの深度一作戦だが、当の真司はこんな事を思っていた。
重ね掛けされた時のオレの苦労がこれでミランダさんにもわかるといいなぁ~、と。
もうすでに真司はこの状況を経験済みだった。
腕とか足とか時間軸をずらされて苦労したのだ。その応用だが、自分がされたことを返して上げている。ただそれだけのことだった。
◇
オレは自分だけ深度一に潜って、ミランダさんがどうなってるのか、ミランダさんに降伏条件として渡した小さな鉄塊を通して思念を垂れ流してもらった。
すると口すら動かないミランダさんが渾身の願いを込めていた。
(深度一っ)
でも何も起きない。
(どうしてっ。深度一に入れっ。入るだけでいいのっ。それだけでいいのっ)
だがミランダさんの攻撃型エー・トゥールは胸部を残して既にその形の大半が失われていた。そしてその機能も最早維持してることすら叶わず、完全な機能停止を待つばかりだった。
(ああ~っ)
執れる手段はあとひとつぐらいかな。
(真司。それは用意してたらの話だろう)
(そう。でもミランダさん、さっきアミックのエー・トゥールを農耕用だろうってバカにしてたからなぁ)
(じゃあ頭にはあるわけだ。真理、かまをかけてみろ)
(わかった)
塵風がいつの間にか自分から離れて、自分が一定の空間にいることをミランダさんがようやく気づいたようだ。オレが密かにミランダさんの脳にかかった深度一を解除する。するとミランダさんが最初にぴくりと動き、それからガバッと自らの身体を抱えるようにして、手足を動かしたり身体の各所をぺたぺたと触ったり、存分に攻撃型エー・トゥールを剥がされた自分の身体に触れていた。
そして意識と行動のずれがないことに感じ入ったようだ。
涙をまなじりに溜めていた。
もうどんな体勢を取っても強制的に中を舞わされることは理解したらしく、浮かされるままに無駄な動きはしていない。
「もう降参しますか?」
真理ちゃんが尋ねた。
「もう武器はないんでしょう?」
重ねて真理ちゃんが尋ねた。
それにしても真理ちゃんは素直だなぁ。いやぁ、そんなあからさまに誘導するなんてビックリだよ。
そしてハッとしたミランダさんが自らの装着する攻撃型エー・トゥールの残ったわずかな部分、背中の収納機構をあけて何かを取り出した。
エー・トゥールだ。
それも予備の空間操作銃だった。
そしてミランダさんは自分の頭に空間操作銃を向けた。
「自殺は駄目です」
とっさに真理ちゃんが優しい言葉をかけていた。でもミランダさんの狙いは違う。ミランダさんは大笑いしたいのを堪えるかのような表情で真理ちゃんに目を眇め、その引き金を引いた。
「深度一っ」
ギリギリのところで深度一に入った。ミランダさんはそう思っただろう。
自分の身体だけに深度一をかけて自分だけが加速状態に入る深度一。
これだけはまだ試していなかった。
ミランダさんはさっき自分が脳だけ加速させられたことには、あの様子ではおそらく気づいてないだろうなぁ。ただただ笑って加速状態に入って行く自分を喜んでいる。
位相のずれで塵風を透過する気満々だ。
「でもミランダさんが喜んでるそれももう、実はもうオレが何度も喰らって対策を教えてもらってるヤツなんだよなぁ」
思ったことが恵風に伝わってるのはすぐにわかった。
真理ちゃんがすぐに空間操作銃を撃っていた。
もちろん深度一をである。「ミランダさんの深度一を」と解するか、「真理ちゃんが深度一を」と解するかで結果は変わる。
ここらへんはあの超越した反則のような存在、超臨界水のおかげなんだろうなぁ。今まであれがさんざんオレたちに学習させていた方法だ。
そして表向きは真理ちゃんが撃ってるように見えるが、実際は真理ちゃんに憑いた精霊の恵風が真理ちゃんの身体を動かしている。
真理ちゃんの表情がどうであれ、そこに容赦は一切なかった。
真理ちゃんが手にしてるのは空間操作銃である。もちろん参考にしたミランダさんの空間操作銃同様、深度一は撃てる。ただし決定的な違いはそれはセプトの深度一ではなく、オレたちの深度一を撃つということである。
逃げ切ったと大笑いしていたミランダさんは、真理ちゃんが銃口を向けてることに恐怖した。
何故追いつけるのだ。その一事だ。
しかもミランダさんにしてみれば、自殺は駄目だと勘違いしてくれたお人好しの女の子が自分に銃を向けてるのだ。その裏腹振りには、それはもう相当な鬼畜に見えたことだろう。
そしてアミック含め、アミック隊の面々も「うげ」とか「げっ」とか、女性のハナダまでもがはしたない言葉を口にしている。
連立組んでて良かったな。この貸しもでかいぞ、君たち。
セプトの面々がどれだけ真理ちゃんを甘く見積もっていても、実際優しい彼女の本質を見抜いていても、真理ちゃんに憑いてるのは恵風である。
真理ちゃんが傷つけられたことによってガチギレしてた、あの恵風なのである。
見逃すはずがないだろうに。
真理ちゃんが空間操作銃を撃ち、ここら辺一帯をオレたちの深度一に入れた。
塵風によってこの階は階段回りぐらいの照明しかなく、遥か上の階と更なる地下からの灯りで薄暗く物の形を見取っていたこの階層が、一気に青くキラキラとした世界に包まれる。
「わ、よく見える」
ハナダが向こうで手を叩いて喜んでいた。
そして容赦なくオレたちの深度一に包まれたミランダさんは、自分がこの世界に取り残されたかのように一人だけ動きが遅いことに気づいた。
「深度一に……潜れてない?」
「もぐれてるさ。でもオレたちはもっと深い」
アミックがオレの告げた言葉のその本質に気づいてギョッとした視線を向けて来たが、オレは無視してミランダさんを見ていた。
塵風がミランダさんにまとわりつく。カンナ掛け直前の心境はどうだろうか。暴れて風の浮力からすっぽり離れたら、その瞬間に塵風の中に落ちて自分がミンチになることがわかっている。降伏勧告を無視して戦線継続を選んだんだ。その末路は自分の常識と照らし合わせればどうなるかぐらいわかるだろう。
ミランダさんは歯をガチガチとさせながら恐怖に顫えていた。
真理ちゃんが岩塊に乗ってミランダさんの周囲を飛び回る。ミランダさんはいつ攻撃されてもおかしくないと、真理ちゃんが眼前を通過する度に身をこわばらせ、背後を通る度に首をすくめて遣り過ごす。ここでも真理ちゃんのことを彼女はわかっていなかった。
そしてミランダさんを覆う塵風の捕縛空間が音もなく移動を始めた。
ゆっくりとした動きだったが彼女にはとてつもなく早く感じたのだろう。何度も息を飲んでいる。自分にかけた深度一を今にも解きたいようで、その誘惑にかられて何度か空間操作銃を握り直していたが、それをすれば今度こそ時の流れに取り残されると思い直したのだろう、結局ミランダさんは解除しなかった。
もっとも例え加除しても結果は同じなのだが、彼女は耐えた。
やがて塵風は、オレたちのいる場所を避けて階段のところまでミランダさんを運んであげていた。
その際に距離を稼ぐために横に塵風を拡大したのだろう。
ごつんとオレに石くれが中った。塵風を思うままに拡大したからその余波がぶつかったのだろう。痛くない程度にはコントロールしてくれてるが、どうせならぶつけないでほしいもんだ。
そう思ってる矢先に鋭い金属片があたった。
状態固定かけてなきゃ傷ついてるぞ、おい。
(かけとくって言ってたじゃん)
いや、かけとくとは宣言しといたが……。うん? 問題ないのか?
いやいやいや。コントロールは大事だ。
(よし真理。風牢を込めたから撃て)
(はい)
あっさり無視されたが真理ちゃんが空間操作銃を撃ったのでそちらに注目した。今のところ不具合は起きてない。だがあの空間操作銃は思いつきでダブルで作った物である。そしてオレはそれほど自分のことを信頼していない。
物作りは失敗の繰り返しだと知ってるから──。
だがオレの心配をよそに、ミランダさんにはキッチリ風牢がかかった。
(おお~)
その風牢が機能してるのを確認して、恵風がピタリと塵風の発動を止めた。
数多あった岩塊が空間に消えて行き、それまで塵風が吹き荒れてた空間がただの通常空間にもどった時には、地下五階は一部を残してがらんどうになっていた。
オレたちが隠れていた荷揚げ場は、もうすでにその姿はない。
「俺、あの子とほとんど関わってないでよかったよ」
「私もわたしも。顔と行動が一致しないっての恐いよね。慈愛に満ちた顔してドカドカバンバンだよ。乱れ撃ちだよ」
それは真理ちゃん最恐説だな。
アミックとアッチはその会話に加わろうとはしなかった。フハハ。顫えて眠れ。
マークとワルテールも最早オレたちに関わろうとは考えてないのだろう。無関係を装っていた。
どうやらこちら方面でも当初の目的は達成したようだ。
なのでオレがグレンとハナダに手を振っておく。
「ひっ」「おい、俺の後ろに隠れるなよ」
なぜかオレまでおっかながられていた。確かに君たち兄妹とは戦ったけど、そこまで酷いことはしなかったはずなのに。
あれか。あれだな。地味に恵風はやり過ぎだろ。しかも全部真理ちゃんのせいになってるぞ。おかげで一緒にいるオレも同類に見られている。
(くるるの魔法使いって先入観も大きいだろ)
いや確かにくるるの魔法使いとは騙ってしまったが……。
「れ、連立してんだよな」
「そうだよ」
グレンに尋ねられたので肯いておいた。
「連立相手に酷いことはしないよな」
「しないよ。オレたち本来ストーカーからおさらばして帰りたいだけだし」
「おい。地球を戦場にしたくないんじゃなかったのか?」
アミックが横から尋ねて来た。
「わかってる。そのための連立だ」
「ならいい」
その間に真理ちゃんが一番大きな岩塊の上に立っていた。風牢のかかったミランダさんは身動きが取れないようだ。風牢は動こうとすると身体が風に押し戻されて、結果的にピクリとも動けなくなる強力な拘束魔法だ。その動けないミランダさんがつむじ風にさらわれて中に立たされた。
グレン達はもう恐い物を見るような眼で真理ちゃんを見ている。
(真司。お前はこの女を、女の人が銃を持ってるなんて凄いと誉め上げてたな)
(ああー、うん)
そんなこと言ったかなと思い出して、確かにミランダさんとの交渉時に、言うに困って誉めた覚えはある。でもオレの誉め方が下手くそすぎて真理ちゃんがプリプリするぐらいだったから逆効果となってなかったか? 今さら掘り返すなよ。
要は黒歴史だな。
思ったことを口にしてればいい幼少時代真っ盛りのオレが、思ってもいないことを的確に言葉にしろと求められ、その結果、オレは嘘とか方便とかおべっかとか、その手のことが全くなってないってことが判明したんだよな。
(でもそれが何だよ)
すると真理ちゃんの身体を好き放題に操って、恵風が真理ちゃんなら絶対にしないようなポーズをキメキメで決めた。
(Girl with Gun ってのはこういうことさ)
高らかに吠えた。
そうか。それがやりたかったのか。そのために真理ちゃんを辱め、オレの黒歴史を表に再び晒したのか。
怒りが込み上げてきたが、真理ちゃんには羞恥が込み上げてきたようだ。
今にも泣きそうだ。
やばい。そのポーズで泣き出したら真理ちゃんが異常者に思われてしまう。
恵風もいい加減やめろ。真理ちゃんは泣きだしたら止まらないんだぞ。
「そうかー、女の子に銃ってすごいんだな」
真理ちゃんの泣きそうな顔と行動との齟齬に、オレが精一杯のフォローを入れて上げた。
だが真理ちゃんはノリノリで泣きながら銃口をアミック隊に向けた。
「ほ、ほら。ちゃんと誉めてやれよ。お前達の裏切り者を彼女が何とかしてくれたんだぞ。女の子に銃ってすごいだろ、ホラ、お前、オレに負けた奴っ」
オレはグレンに何か言えと無茶振りした。
「いや、明らかに銃より女の子の魔法のが凄かっただろ」「何で俺たち平気なんだよ」「たまにごつごつ身体に中ってたよね。それなのに痛くもないなんて」「やっぱ命中してたよね」「うんうん」「「…………」」
オレに助けてもらってたくせにこちらの意図する助けをしてくれず、しかも外野となって外野がうるさいが、とにかく、真理ちゃんがすっごく格好良く困っていた。
その真理ちゃんが再び飛ぶ。
螺旋を描いて風がその勢いを弱めて行き、いったん中空まで舞い上がった真理ちゃんがつむじを滑るように滑空して、くるくる回りながらオレの目の前にピタリと着地した。
その時の真理ちゃんがどんな顔をしてるのか、興味はあったが可哀相だったのでオレは見なかった。
真理ちゃんの気持ちが快復したのかどうか。
とりあえず、いつか恵風とも一致する日が来ますように。




