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第1章 幼稚園時代
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第54話 控え室にて

 クーリエが地下から地上へと上がって来た。催事場の控え室に顔を出す。相変わらず胸がでかい。スタイルもいいし、見目麗しいとは正にクーリエのような存在に対して言う言葉なのだろうが、しかし、その顔は非常に不機嫌そうであった。


「アミック、何の用? こっちは忙しいんだけど」

「プリンターでビルの再現をしてるだけだろうが」

「これだから素人は。経過を見ないと要望通りなんていかないんだよ」


 そしてエー・トゥールからライブ映像として送られてきてる画像を見て、何かの真っ只中だということをクーリエは知る。

 大人一人と、子供二人を追いかけてる?

 だから控え室に部下の姿が見えないのか。それにしても全員出動とは、この地球の文明度から見て破格の対応をしている。


「なによ。そっちこそ経過を見てたくせに自分の要望通りに出来てないのね」

「突発事項だ」

「なに? 私の探し人が見つかった?」

「そうじゃない。見ろ」


 アミックがクーリエに、過去の映像を見せた。ちょうどアミック自身が、真司から風刃を浴びせられて足止めを受けたところだ。

 その画像にクーリエが食いついた。


「何これ? 魔法? だよね」

「どう見える」

「いや、でも、魔気がないのに魔法が使える人間がいるの?」

「驚いたか」

「ええ」

「魔法よね」

「お前の言ってた精霊魔法という可能性は?」

「あれはこんな足止めに使うような魔法じゃなかったでしょ」

「そうだな」

「やっぱり魔法なのよ」

「この星の条件で魔法が使えてたまるか」

「そんなこと言ったら、それこそ我々が相手にしてるのは規格外と言うことになるわよ。こんな子供なのに」


 だがクーリエからのその馬鹿げた問題提起に、アミックは何も答えることが出来なかった。


「くるる以上の魔法戦を仕掛けられたら、軽く殲滅戦だーね。もちろん、やられるのは我々だけれど」

「連盟でそんな事が出来るのはくるる人とマルメ人だけだが」

「どうしたの」

「例外がいたな。なんてことを思い出してな」

「プ。面白い冗談ね」

「…………そうだな」

「で、どうするの? というか何したの、この子達」

「俺が宇宙人だと、この女の子供が尋ねて来た」


 クーリエがアミックの目を見た。正気を疑ってるようだ。


「本当に?」

「ああ」

「あなた、この国で誰かに言った?」

「いいや。そして面白いデータがある」


 そう言ってアミックがエー・トゥールの情報をクーリエに転送した。


「何これ。エー・トゥールに直接何かが働きかけてきたの?」

「正確にはエー・トゥールにではなく、我々その物に、というのが正しい理解だと思うがな」


 そこにはこう表示されていた。

 解析不能。だが何かがこちらの全てを舐めるように舐めている、と。


「でもって宇宙人かと問われたわけね」

「そうだ」

「情報を握られた?」

「やり方はわからんがな」

「まさか、本当に銀河連盟の手の者が来てるの?」

「子供だとしても厄介だ。大人に報告されたら、我々の行動は立派な連盟の規約違反だ」

「こんなとこまで来て、まさか連盟の影を見ることになったと?」

「可能性はある」


 あちゃーとクーリエは(かぶり)を振った。


「だから魔気弾をくれ」

「はあ?」

「魔気弾の残弾がない」

「そんなのあるわけないじゃない」

「なら取って来てくれ」

「冗談でしょ?」

「本気だが」

「ならあんたが行きなよ。今この現状で、魔物船なんかに乗ったら、無事で済む担保がないでしょ。船団もいないんだし。やーよ」

「魔気弾がないと、この子供らの深度一に牙を立てられない」

「では正式に母船に依頼を出して、我々の上司に許可をもらって来てくれる。話はそれから考える」

「言い方を変えよう。魔気弾がなければ、奴らの深度一の謎が解けないぞ」

「それ、本当に深度一なの? 重ね掛けをしてくるわけでもないし、多重起動してくるわけでもない。ただ一つ、ポコーンと深度一を放つだけ。芸もクソもない」

「その芸もクソもない輩に、ことごとく出し抜かれてるんだが」

「それはアミックの部下がそのレベルに達してないだけでしょ。何で私があなたの能力不足の尻ぬぐいをするために母船に戻って魔気弾を調達してこなければいけないの?」

「俺がお前の隠しごとに関して、査察部に黙っているから。という理由ではいけないのかね?」

「私があなたの隠しごとに関して、査察部に黙っていることに関しては、あなたがどう思ってるのか、そこらへんの見解も聞きたいところね」


 クーリエが苛立っていた。

 それもわかる。

 自分の仕事の真っ最中に余計なことをしてる俺たちから、魔気弾を寄越せ、何て言われたら腹も立つだろう。

 何よりクーリエの母船は俺たちの間では忌み嫌われている。その母船に戻って魔気弾の調達などというお使いを頼まれても、普段の扱いが扱いなだけに、そう簡単には頷くまい。

 しかもクーリエが美人なだけに厄介だった。

 クーリエの母船は忌み嫌われてるが、クーリエ自身は人気があった。

 そういう狂信的な派閥の藪をつついて、表沙汰になるのも困る。

 アミックに選べる選択肢は、ほぼなかった。


「わかった。悪かった。だがそうなると、多少の情報漏洩は覚悟して、事に臨むほかあるまいな」

「派手にやっちゃだめよ。そうでなくても査察部を招きやすいんだから」

「あいつらとて、今さら本星に連絡が取れるとは思ってないだろうよ。指示待ちで待ってる間に死んじまう」


 しょせん地球は場末の星だ。


 それも連盟に加入してない未開の星でもある。ばれなきゃ煮ようが焼こうが指をさされる事もない。これは研究対象に打って付けの星なのだ。


「じゃあ魔気弾は頼むな」

「届くのに、あったら三時間。作成しないといけないとなったら、三日はかかるわよ」

「出来てることを願うよ」


 アミックに頷いて、クーリエは耳に嵌めたエー・トゥールを起動すると、魔気弾あるだけ持って来てと要請した依頼書を、土星の公転軌道上にいる母船へと送信した。


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