彼女な猫
日々思い浮かぶ妄想が溜まってきたので、少しずつ形にして行きたいと思います。
昨日彼女と別れた、原因は些細な喧嘩だった。
彼女は俺への不満をぶちまけ、私物を持って出て行った。
この部屋に残ったのは「俺」と「俺の私物」そして彼女が拾ってきた「猫」だけになった。
「お前、また捨てられたな。」
俺が嫌味を言うと猫は首を傾げて「ニャー」と鳴いた。
「まあ今回は俺の部屋だから問題無いか。」
そう呟いて餌と水を用意してトイレの掃除をした。
猫の名は「ミーヤ」メスである、本当は彼女が世話をするという約束で飼う事を許したのだが、
彼女は一度も猫の世話をすることは無かった。
彼女はそういう人間だったのだろう、飽きたら興味を無くし捨てしまう、つまり俺と「ミーヤ」は
飽きられてしまったということだ。
日中は仕事や家事などで気が紛れるが、夜になると寂しさが込み上げてくる、
夜の闇が心を蝕んでいくかの様に。
スマートフォンの中の彼女との思い出を見ながら泣いていると、いつもの様に俺の上で寝ていた
「ミーヤ」が布団の中に入ってきた。
今まで一度もそんな事が無かったのでとても驚いたが、猫なりに空気を読んでくれたのだろう、
その行為はとても有難かった。
その行為に甘え、そっと猫を抱きしめた、猫は体を丸め目を細めてグルグル言っている、
嫌では無いようだ。
初めて猫を抱いて気が付いた
「猫ってとても暖かい。」
そう思いながら俺は寝落ちしてしまった。
瞼を朝日に照らされ俺は微睡んでいた、モフモフな抱き枕が心地よい
「ん?抱き枕?そんなの有ったっけ?」
そう思いながら俺はゆっくりと瞼を開けた。
目の前に「ミーヤ」の顔が有る、ビックリして俺は「ミーヤ」から離れた、よく見ると頭がデカい、
人間と同じ位の大きさは有るだろうか、凝視する俺を見て猫は目を細め
「ニャー」
と鳴いた。
鳴き声は今迄と同じだった、しかし首から下がどうなっているかが気になった俺は、
恐る恐る布団の中を覗いた。
そこには全身を毛に覆われた人間の様な骨格の体が有った、まるで着ぐるみを着た人間の様な「ミーヤ」を見て俺は
「もう少しモフモフしていたい。」
と思ったが時間が無いので支度をして仕事に向かった。
念の為、餌と水は大きなボールに入れ、トイレのドアは開けて部屋を出た。
夕方、仕事が終わり家に付いた、玄関の前で深呼吸をしてゆっくりとドアを開ける。
出迎えてくれた「ミーヤ」は、いつもと変わらない姿で尻尾をピンと立て俺の足元に纏わり付いてきた。
いつもと同じ姿の「ミーヤ」にホッとした俺は、今朝の出来事を無かった事にして寝ることにした。
昨日と同じ様に俺の上で寝ていた「ミーヤ」は布団の中で丸くなり目を細めてグルグル言っていた、
今夜もそっと「ミーヤ」を抱きしめ眠りに落ちた。
翌朝、昨日と同じ様に微睡んでいると抱き心地に違和感を感じた
「ん?モフモフ感が無い?」
慌てて目を開くと、そこには見た事の無い女の子がそこにいた。
咄嗟に彼女から身を離し
「誰だ?なぜここに居る?」
頭をフル回転で考えていると、その娘は目を細め
「ニャー」
と鳴いた。
その鳴き声は人間の声だったが一瞬
「ミーヤなのか?」
と頭を過ったので、もう一度よく顔を見てみた、目元や口元に面影を感じるし、
何より頭に付いている耳の柄は「ミーヤ」のそのものだった。
「ミーヤ」だと分かった途端、例の疑問が頭を過った、そう首から下だ恐る恐る布団の中を覗いてみる
「ヴッ!」
女体だ紛れもなく女体である、しかもスタイル抜群である、俺は込み上げてくる様々なものを理性で
何とか抑え込み一旦トイレに避難した。
トイレで興奮を冷ましシャワーを浴びて気持ちを落ち着かせた、
そして冷静を装いリビングを覗いてみる。
居ない、まだ寝室に居る様だ、寝室を覗いてみると彼女は布団から頭だけを出し体を丸めて寝ていた。
今のうちに支度を済ませ昨日と同じ様に餌と水とトイレをセットそして念の為、
人間の食べ物もテーブルに用意して仕事に向かった。
仕事を終え俺は玄関の前に立っていた、深呼吸をして、ゆっくりとドアを開け中を覗く、
リビングからいつもの「ミーヤ」が尻尾を立て近付いて来た、ホッとした俺は「ミーヤ」を抱き上げ
「お前はこの姿が一番だよ。」
と思わず呟いた、「ミーヤ」を下ろしテーブルの上を確認する、
さすがに人間の食べ物を食べた形跡は無かった。
仕事の残りを自宅のパソコンで済ませる、明日はしごとが休みなのだが疲れて居るので早めに寝ることにした、今夜も「ミーヤ」は布団の中で寝ているが嫌な予感がしたので今回は抱いて寝るのを止めた。
翌朝、目が覚めると「ミーヤ」の姿はどこにも無かった
俺は安心してもうひと眠りしようとしたその時リビングの方から何やら物音がしていることに気付いた。
そっと布団から這い出しリビングを覗く、
「えっ!!!」
そこで俺が見た物は、裸にエプロンで朝食を作る「ミーヤ」の姿だった。
俺の気配に気が付いた「ミーヤ」は振る返り目を細めて笑った、そして
「お早う、もう少しで朝ご飯が出来るからもうちょっと待ってね。」
喋った!ハッキリと日本語で喋った、動揺を隠しきれず言葉を失っている俺を見ても気にせずに彼女は
続けた
「いい天気だね、朝ご飯食べたら何処かにお出掛けしようか!」
嬉しそうに話し掛けてくる、俺は目の前の光景を混乱している頭の中で整理しながらこう言った
「ごめん、俺ちょっと出掛けてくる。」
そう言って力無く支度をする
「え〜どこ行くの〜?今日は仕事お休みでしょ〜?」
不満気な顔で声を掛けてくる彼女に
「病院。」
と、ぶっきら棒に答えた
「えっ!何処か具合でも悪いの?」
心配げに話し掛けてくる彼女を無視して俺はヨロヨロと部屋を出た。
スマートフォンで「心療内科」をググりながら...
読んで頂き有難う御座います。
しばらくは短編を書いていこうと思います。
長編は慣れてからですね。