ファーストコンタクト2
2019年9月2日昼。
「んんー」
栗山加奈はまだ寝ていた。
最近の出来事は、加奈にとって気持ちを楽にする出来事だった。
加奈は気だるそうに起き上がり、時計を見た。
「寝すぎ・・・」
呟いて、固形色を口にする。
ぼんやりしている頭の中が、少しずつ、ハッキリしてきた。
「そうだ、返事来てるか見なきゃ」
パソコンのスイッチを点け、政府のサイトにアクセスした。
恐る恐る開いた加奈だったが、画面を見た途端、笑顔になった。
「返事が来てる!!」
加奈にとって、もしかしたら相手にとっても、しばらくぶりの話し相手になるかもしれない。
そう思いながら、中身を読み進めた。
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2019-09-02 05:14
title:re:私は栗山加奈です。投稿して下さい。必ず返事をします。
初めまして。
私は宇野弘明といいます。
いない人同士で、話したりしても大丈夫な事に気がつきましたか?
私も、先日おじいさんとほんの少しだけですが、話す事ができて、わかりました。
でも、どこに住んでいるかは、わかってません。
まずは、お返事をいただけませんか。
私も多分、書いてもらえたお返事に、お返しができるはずです。
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うの・・・宇野さん。
この人も、"いない人"同士なら、話しても大丈夫な事を知ってるのね。
良かった。
私も、もしかしたら、もっと沢山の仲間の人達も、これでみんな安心できるかもしれない。
そう思うと、どんどん心が軽くなってきた。
「返事を書かなきゃ」
加奈の言葉が明るい。
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title:re:re私は栗山加奈です。投稿して下さい。必ず返事をします。
宇野さん。
お返事ありがとうございます。
それと、信じてくれてありがとうございます。
いない人同士のルールの間にこんな抜け穴があるなんて、気が付きませんよね。
もともと、会えないとみんな思ってるわけですから、それを命をかけて実行する人はなかなかいないと思います。
私も、この前の事件の人と、何時間か前にお返事をもらったことから、もしかしてと思った事が始まりです。
もっと、情報交換しませんか。
人と話すのも久しぶりで、とても、本当に嬉しいのです。
お返事お待ちしています。
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加奈は迷わず更新ボタンを押して、ふう、とひと息着いた。
あんまり浮かれてもいられない。
今日は、すれ違う日。
加奈は気持ちを切り替えようと、シャワーを浴びに浴室に向かった。
短いので、連続で投稿しました。




