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シナリオⅣ 3 後章 第7話〈後編〉

(^ー^)ノ賢者の山編…完結。

シナリオⅣ 3.17〈私が変わったときに変わり、私が頷いたときに頷くような友は必要ない。そんなものは、私の影がずっとうまくやる〉

I don’t need a friend who changes when I change and who nods when I nod; my shadow does that much better


草創歴0449年9月(9/17)〈後編〉


カズ・アダマンテーウスの聖剣「フェアブレッヒェン」が振り上げられ、失血死寸前のケンタ・ウルス・タングマアイに振り下ろされる。

その刹那(せつな)、ある者が刃に割り込んでいた。


…身代わりに切り裂かれた者。


その身は肉体を持たぬ魂魄(こんぱく)

なれど実体剣をも霊質と化す「幽現の瞳」(タングマアイ)の刃なればこそ、それは致命傷となり、盾ともなり得た。


「ば…馬鹿なっ!?なぜ、あなたがっ!?」


あまりの事態に、カズは聖剣を手放し、それは(かわ)いた音を立てて転がり落ちた…。


カラン…カランッ…カランッ…。


…ああ、これは(まぼろし)か?俺は夢を見ているのか?


ケンタの目蓋(まぶた)の隙間から垣間見(かいまみ)える人影。

君の存在を守る為だけに、一族の造反(ぞうはん)に乗じて帝国に降った。

「占星術士の塔蓋」(アストロロジートゥール)の破壊に際し、その魔道回路から彼を切り離す為、ありとあらゆる手段を(こう)じたのもその為だ…。


それが魂魄と肉体を切り離し、「星見の因子」の影響力を抑える為の「神性(アガリアレプト)盲目の君」を移植する手段であった。


…だと言うのに、何故、君がそこで俺の身代わりになっている??


これでは、今は亡き「黄金宮(ロゴス)」総主ゲレヒティカイト・クリシュナ・パトリとの約束も果たせなくなる。

全ては彼の命に従って行なった密約(みつやく)であった。

エノイキアン・ダイダロスの名を継ぎ、永遠の存在となる筈だった君が…。


『…もういいんだよ、ケンタ。…僕の為に、君が苦しむ必要は無いんだ。』


ガチャトーレ・クリシュナ・ラ・ウルの魂魄体は千々(ちぢ)に乱れていた。


「…それじゃ、ダメだ…それじゃ、俺のやってきた事が無意味になってしまう…死ぬのは俺で良かったのに…。」


『君は死んじゃダメだよ…君が黄金宮(ロゴス)を引き継がなければ、僕が消える意味がない…そうだろう?僕のたった一人の親友なんだからね。』


嗚咽(おえつ)が喉から(こぼ)れ落ちた…。


もはや意識は(よど)み、視線も定まらぬ。だが、我が心に語りかける言葉を(しか)と感じ取っていた。


『…頼むよ、カズ・アダマンテーウス卿…僕の命と引き換えに、どうかケンタを見逃してやって欲しい。』


「わっ、私は…何と言うことを…いかに(つぐな)えば(よろ)しいのかっ…。」


わななく身をどうにも(おさ)えようもなく、カズは(うめ)いた。

もはや戦意は消失している。

ましてや、状況を(かんが)みて逆恨(さかうら)みであったと知れた。

それ以上に、してはならぬ事をしてしまったのだ…。


『…君が悪いんじゃない…いや、悪い人間なんて誰もいない…僕は皆を信じているよ…未来はまだ決まっていないよね…?』


思いが昇華(しょうか)し、白き羽根が夜空に散った。


…未来はまだ決まっていない。


それは希望か?

星見(ほしみ)の予言か?

今となっては知る(よし)もなかった。


更に、今一つの決着もまた、結末を迎えようとしていた。


宿曜(すくよう)の間」より、水鏡(みずかがみ)を前に見守り続ける大賢者シサイア・ヴァジャンであったが、時期尚早(じきしょうそう)であるとは分かっていても、もはや残されし手段は限られていた。


「ふむ、あの馬鹿弟子め。恐らくは、刻印もろとも自滅自壊するつもりなのだろうが…そのような未来を選ばせてなるものか。」


永劫種(アドラスティア)」の呪縛を打ち破るには、「大賢者の霊位」(ジヴァートマ)を注ぎ込み、内側から浄化する(すべ)を用いる他なし…。

それがもたらす副作用は計り知れず、彼の余命(よめい)(いちぢる)しく縮めよう。

だが、宿曜(星見)の選択肢に()いて、それ以上に()き未来は見当たらない。


その時、水鏡が揺らいだ。


「…これはっ?まさか、そなたが死んだのか?」


白き羽根が「宿曜(すくよう)の間」を埋め尽くす…。


気高き風が吹き(すさ)んだ。


「馬鹿なっ。星見の選択肢に無き事象(じしょう)を、その身を以って示したと言うのか、ガチャトーレよ??」


『未来は…まだ決まっていない…。』


その指先が示す景色が一変し、濃霧(のうむ)を引き裂き、2人の人影が飛び込む様を映し出す。

またしても、この「賢者の山」に侵入した者があった。

大賢者シサイア・ヴァジャンは眼を閉じる。

未来が変わると言うのか…?


さりとて、それは刻一刻、間近(まぢか)に迫りつつあった…。


射程距離、並びに視界を確保するには限界ギリギリの先行であったが、何とか間に合ったか。


「ダン、頼むぞ!」


「了解だ。」


ダン・ラーフアングリフは、高速で飛行したまま、伊達男(だておとこ)よろしく右眼の眼帯を()ぎ取り、その封印を解放する。


その義眼「コスの珠霊」が宇宙光(ジャガンナート)最大臨界(さいだいりんかい)にまで達する輝きに導く。

それも「不夜種(ミディアン)」の耐久力あってこそだ。


白光の波動が(ほとばし)り、(まばゆ)い光が蜃気楼の壁を切り裂いた。


ドドドド…ドドドド…ドドドドォォォ…ォォォンンン!!!


禁断(きんだん)の力にて「大賢者の霊位」(ジヴァートマ)を分断し、飛来した「永劫種(アドラスティア)」の姿を虚空に(あら)わにさせていた。


「…(とら)えたぞ!!」


すかさず、サクトリフ・ヴォルフォルターは標的を射程に捉える。ダンの加速に煽られながらも、微塵の迷いもない。


…弾道直進性計算を電子領域に直結し、演算結果を即座に超長距離対応型の光学狙撃銃にフィードバックする。


ギュィィィーーーーーーン!!


銃身に装填(そうてん)された「太陽の弾丸」(バル・ソレイユ)が線を描いて打ち出される。


『…これはっ!?』


外部からの介入を受けて、その一瞬、ヴィンター・パトリオティスの自我が(まさ)った。黒影が急停滞する。


…外れたっ!?


黒翼を(かす)め、弾丸が抜ける。


精製に成功し、持参した「太陽の弾丸」(バル・ソレイユ)は僅かに2発…。


残り1発。


霧が再び視界を(おお)わんと(うごめ)く…。

これが最後のチャンスか。


「…かつて、魔弾の射手と呼ばれしこの私から…逃れられると思うな!!」


黒翼をまとったダンに吊り下げられたまま、空中から放つ、サクトリフ・ヴォルフォルターの放つ第二撃。

銃音が木霊(こだま)する。


ギュィィィーーーーーーンッッッ!!!


空を(つんざ)く弾丸を前に、葛藤(かっとう)する心を(あらわ)すかのように、それは黒鳥を振り()いた。


弾丸がマスター・エイヴィスの額を貫く。


バシュッッ!!


仰け(のけぞ)り血を散らすも、その弾丸は口の端に(くわ)えられ、吐き出された。

額の弾痕(だんこん)は既に治癒している。

寄生されたことにより、その恐るべき再生力は「永劫種(アドラスティア)」と同様であった。


『貴様らの企みなど、この私には届かんよ…。』


…それはどうかな?痛覚の一部分を(さえぎ)る事ぐらい、今の私なら出来る。


『何だとっ!?』


元より、光学狙撃銃には初撃の銃弾以外に「太陽の弾丸」(バル・ソレイユ)は装填(そうてん)されていない。

ならば2撃目は(おとり)だ。


この超長距離にして120メートル弱。


光学狙撃銃と同時に放った、左手の大口径拳銃(ハンドガン)ショートリコイル作動機構タイプで狙い撃ちた弾丸。

それが遅れて胸部中央にまで届いていたと言うのか?


『そんな神業(かみわざ)と、まさかただの人間と(あなど)りし貴様に遅れを取ったと言うのか??』


「太陽の弾丸」(バル・ソレイユ)の効力が炸裂(さくれつ)し、不意にマスター・エイヴィスは浮力を失い地に堕ちた。


ドシャ…ッッッ。


「…出てこい、ヴィンター。お前はもう終わりだ。」


処断(しょだん)()さぬダン・ラーフアングリフが、地に舞い降りると同時に、間合いを容赦無く詰める。


『馬鹿めっ…私とこの人間は表裏一体。私を殺せば…この人間も死ぬぞ?それでも、この私を殺せると言うのか…ダンよ?』


「俺をこれ以上、怒らせるなよ…。」


冷徹(れいてつ)なる怒気が、地に()いつくばる「永劫種(アドラスティア)」を(ひる)ませる。

それを手で制し、その眼前に(おど)り出たのは…。


「やあ、久し振りだな、ヴィンター。私を憶えているかい?」


『?…まさかっ…貴様は!?』


「そう、お前達の生みの親とも言えるウルカヌス様の1番弟子、サクトリフ・ヴォルフォルターだよ。」


蒼白(そうはく)の肌色に…銀の髪。

狂気に満ちた科学者の相貌(そうぼう)

見降(みお)ろす対象は、興味深い研究材料と言わんばかりの眼差し…。


「まさか、私が苦労して精製(せいせい)した弾丸が、お前を地に這いつくばせる為だけのものだとは思ってはいないだろうな?」


有無(うむ)を言わせぬ威圧感が、ヴィンター・パトリオティスを凍り付かせる…。


「お前達が生み出された太陽の御殿 (ソーレテンピィオ)の研究資料を一から洗い出し、私の知識を詰め込んで作り上げた最高傑作だよ…早く離れないと、その太陽の陽子変換がお前をただの人間にしてしまうぞ?」


その言葉に嘘偽(うそいつわ)りは無かった。

その身に起きている異変がそれを物語っていた。


『こっ…こんな…ことがっ…!?』


その刻、私を(おお)う闇が()がれ落ち、光明(こうみょう)垣間見(かいまみ)えた。


マスター・エイヴィスは恐怖に絶叫(ぜっきょう)し、全身の穴と言う穴、毛穴(もうけつ)からも真紅の血液を()き出し、痙攣(けいれん)を繰り返す。

噴き出した血流は凝固(ぎょうこ)し、真紅の異形(いぎょう)を作り出した。


血液のみの寄生型「永劫種(アドラスティア)」…それがヴィンター・パトリオティスの正体であった…。


「…それを待ってたんだぜ。」


ダンが紅きヴィンターの首を()じり押さえる。


『グハぁぁぁ〜!?や、止めろっお!!』


(うめ)くヴィンターの眉間(みけん)を、細剣「オレイカルコス(火廣金)」が(つらぬ)き通す。

するや、吊り上げられたまま、亀裂(きれつ)が全身に生じた。


メキッ…メキメキッ…メキメキッッッ…。


『…これで…勝ったと…思うなよ…。』


「それが、お前の辞世の句か?」


砕け散る紅き残滓(ざんし)


バシャャャ…ャャャン!!


降り注ぐ血の雨に打たれ、(かわ)き切った肉体に火が(とも)り、(くちびる)に朱色が()す。


…私は生きているのか?


長い闇を越え、意識が覚醒(かくせい)の刻を迎える。


「わ…私はっ…レイアーン…の。」


私はレイアーン公王国の第一 公王子(プランス)ノーヴァル・ハウ・レイアーン。


…だが果てなく疲れた。


故に、今はただ安らかに惰眠(だみん)(むさぼ)ろう。

次の目覚めが()き目覚めにならん事を祈りて…。

(^ー^)ノ次回はヤマさん救出作戦編w

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