第三騎士団
――失敗作ができちゃったわね。
――あぁ、次は成功させようか。
啓介は目を覚ました。灰色の天井。二日前より見慣れた自室の天井だった。
上半身を起こすと、隣でアウレトーラが寝ていた。
「クッソ嫌な夢を見た」吐き捨てるようにそういうと、起き上がり、身支度を整える。
アウレトーラが起きだすころには朝食を作り、食後には口を洗ってから職場へと向かう。
住処からはほど近い場所にある広大な屋敷――のように見えるのが、第三騎士団の駐屯地である。元はこの地にあった、没落貴族の住処を召し上げたものなので、建物の様相はどこにでもある金持ちの家といったところである。が、内部は清廉としていることは、啓介は知っている。
屋敷はああだが、周囲は堀と重厚な壁で覆われている。門は鉄でできており、その横に『第三騎士団本部』と鉄の表札が飾られている。
門番と言葉を交わし、中へと入る。建物玄関口には受付があり、面接日と同じ人がいたため、かなりスムーズに事が終わった。
与えられた制服を更衣室で袖を通し、受付近くにある休憩スペースにて、長椅子へと腰かけ、現れる人物を待つ。たいして時間もかからず、小さな背の少女と長身痩躯の男が現れた。
少女は啓介を見つけると、横の男へ語りかけはじめ、終わったらすぐに近づいてくる。
啓介は恐らく彼らであろうと予想し、椅子から立ち上がった。
間近で見ると、彼らは予想とは大きくはずれていた。
瑞希の中で、騎士というと美麗であったが、少女は絹糸のように美しく長い金髪を持ち、顔立ちも幼く、十分美しいと言えるが、見た目は小学生高学年といった小ささである。
男のほうは、無精ひげの生えた優男といった雰囲気で、藍色の髪は所々ハネている。瞳は眠そうに淀んでいて、疲労が顔からにじみでていた。切れ長の瞳が台無しだ。
「お前が入団者か。聞くになかなかの将来性とか」
声も幼かったが、口調は荒々しかった。
「……全力で事務を、お願いします事務を」
――そしてこの男は祈るように、そう言ってきた。
どう反応したものか、と迷ったものだがとにかく自己紹介だろう。この変わり者コンビに騎士団への若干の不安を感じつつ、胸に手を当てて啓介は名乗った。
「……啓介です。ケイスケ・ミムロ」
「おぉ、いきなり礼をかくことを言ってすまねぇ。俺はユーリア・カンブレア。んでこっちは」
指された男へと視線を向ける。虚ろな表情で天を仰いでいる。
「職場寝泊まり三日目。家に帰れば妻と娘の冷たい視線。仕事と家庭どっちが大切かと問われ、家庭を優先すれば出世はない。だけど妻は出世しろといい、だけど家庭を顧みろともいう、無茶だ、無茶なんだ、わかってくれ……」
独り言が切実すぎて、啓介は顔をひきつらせた。
「……大丈夫ですかこの人」
「直る。こうすれば、なっ」
ユーリアは跳躍した。そのまま張り手を男の後頭部へと叩きつける。
男はがくんと前方に倒れ込むと、両手で受け身をとり、その反動で一気に起き上がった。
「……おはようございます」
「叩けば直る」
――古いテレビか。だが男はたしかにしっかりと光を瞳に灯している。
「君が今回の入団者ですか。私はデイ。デイ・デリア。今回貴方の案内役をします。お名前を」
「お前が意識をぶっ飛んでた時にもう自己紹介されたよ」
「……では失礼なので二度目はやめましょう。では、団長室へと向かいます」
そういって歩き始めたデイの背を、啓介は追うべく歩き出した。
屋敷の一番上の階へと上り、廊下を進むと、二枚扉の一室にたどり着いた。
ノック後、返事はない。
「……またか」呆れたような声色でユーリアは言った。
デイも額に手を当て、小さくため息をつくと、扉を開け放って室内へと入っていく。啓介は一瞬躊躇したが、二人に倣った。
中は壮絶だった。奥に資料の山が乗った机あった。そしてその中心で、眉目秀麗な金髪の男がいた。
その手に大きな判子を持ち、インクパッドと資料を行ったり来たりさせている。ダンダンと荒々しく資料へとぶつけている。
「おい、全自動判子マシーン」
ユーリアの言葉に反応はない。そういうカラクリなのではないか、と思うほどに、資料の中から一枚手に取り、ハンコを振り落とし、横の山へと乗せる。完璧に同じ動作だ。
ユーリアは淡々とした足取りで近づいていき、机を蹴り飛ばした。
高く積まれた資料がバサバサと男へと覆いかぶさり、やっと男の手が止まった。
「やれやれ」とデイはため息交じりに言って、すぐさま資料を片付け始めた。その後を追い、啓介も整理を開始する。どうせバラバラになるのだから、方法とかはどうでもいいだろう。
邪魔された男はというと、動きが停止してからぷるぷると震え始めている。
「――ユーリア、減給されたいか」
地獄の底から噴き出たと思わせるほどに熱く、殺意のにじむ声だった。
ユーリアは無視し、啓介へと対面した。無邪気な笑みを浮かべ、紙束を整えている啓介の肩を掴んだ。
「新団員ケイスケ・ミムロ、団長が挨拶もしない騎士団なんてやめたほうがいいぞ。よぉし出口まで案内してやる」
「ごめんなさい。許してください。人手を帰さないでください」
泣きの入った声だった。
資料を片付け終え、団長は冷え切ったどころか、乾いて茶渋のようになっているカップを手に、優雅っぽく振舞い始める。手遅れなのは言うまでもない。
「君が新団員か。第三騎士団へようこそ。私が団長のヴィルヘルム・フォークスだ」
「ケイスケ・ミムロです。よろしくお願いします」
返答に団長は薄く笑った。顔立ちと合わせると、非常に芸術のようだが、啓介は先ほどのことを覚えているため、なんだか残念なものにしか見えなかった。
「うむ、君を歓迎する。よかったね、特にデイ。事務員が来てくれた」
「はい」
笑顔から一転、団長は見下すような瞳でユーリアを見る。
「ユーリアは判子を手伝え。崩した罰だ」
「断る。マシーンはマシーンらしくやっているがいい」
ヴィルヘルムとユーリアがにらみ合う。
「デイさん……でいいですか?」
「構わないよ、何かねケイスケくん」
おや、と思った。この騎士団では名前で呼ぶのが当たり前のようだ。
「地獄への入り口に来た気分なんですが」
「絶対に逃がさないからな」
重厚な威圧かつ決意に満ちた声だった。
建物の内部を一通り案内された後、事務室へと到着した。
中は悲惨だった。男女問わず死にかけている。机にうつ伏せになり、寝息を立てている人もいる。
「おはようございます」
デイの言葉に挨拶は返されたが、どれもハキハキとしてはいなかった。
「新しいイケニ――団員のケイスケ・ミムロくんです」
――え、イケニエ?
啓介は思わずデイを見た。啓介の生贄の経験はもはやベテランである。主に英雄たちの好奇心によるものだ。だが、それで「俺生贄の達人ッスから!」と意気揚々と引き受けるわけもない。足掻かねば、と心に決めたが、その決心はすぐに消滅する。
直後、全員がばね仕掛けのオモチャのごとく立ち上がったのである。
啓介はびくりと肩を揺らした。
彼らはグールのように啓介に近づくと、肩を掴み、腕をつかみ、手を掴んだ。
「第三騎士団事務員――ファイ、オーッ!!」
オーッ!と共鳴した声が室内に響いた。その後、彼らは席へと戻った。紙へとペンを向け、ガリガリと書きこんでいる。
意味不明すぎて、啓介は固まるしかできない。意味不明には慣れているが、別角度からのものだ。
「あ、緊急の要件はもう終わったので、今日は夕方には帰れます。……なにかあれば戦場のようにバタバタと仲間が死にます」
最後は聞かなかったことにしよう。
啓介の地獄の門と対面しているかのような表情に気づいたのか、ユーリアは啓介の背中を強く叩いた。
「まぁ気にすんじゃねぇ、この惨状は週一ぐらいだ」
「なかなか頻繁ですよね、それ」
「俺は事務仕事はできる。が、逃げてるから大丈夫だ」
大丈夫ってなんなのだろうか。啓介は自分の中の常識が崩壊するのを感じていた。
「逃げないでください。お願いですから」
「嫌だ。剣振り回してるほうが楽」
デイの懇願に、この無慈悲な言葉である。がくりと肩を落としたかと思うと、デイはすぐに切り替え、啓介を見る。
「今日は一応の仕事を細かく手伝う感じでどんなことをやるか、というのを記憶してください」
はい、と頷いた後、啓介は気になったことを訊いてみる。
「そういえば緊急ってなにがあったんですか?」
「この都市及び、周辺町村での行方不明者増加、正体不明の魔物の急増。今はそれの関連を調べている感じですね。仕事をしていれば情報はわかると思います」
「わかりました」
「とにかく君を騎士団支える一人にします。頼りにしてますよ」
一通りの仕事をしながら、内容を読み込んでいくことにする。
与えられた机の上で、資料整理を行う。ざっと見通して、過去の事件資料や、第一・第二騎士団への支援要請などが書いてある。
要約すると
・周辺地域で失踪が急激に増加
・それと同じくして未知の魔物の目撃が相次ぐ
・魔物は数日は攻撃性はないが、時間がたつと理性を失う
・人のような声を発する。
と言ったところだ。そこから魔物の目撃証言があるところを赤く塗った地図や、魔物の絵が添付されている。
資料を整理。ファイルへと分ける。騎士団の会計。報告書の作成――は周囲に訊きながら。終わったころには、すでに昼は越えていた。
隣では終了が告げられるとともに、机の上に落ちた男性が寝息を立てている。
かなり無茶な体勢なのに、起きる様子一つ見せない彼に、どれほどの無理をしていたのだろうかと戦慄する。もしかしてブラックなのだろうか。いやブラックであることはわかっているが、自分もこうなるのだろうか。不安でいっぱいである。
「いよっ」
肩を立てて振り向くと、目の下に深い隈ができている女性が立っていた。
「いやぁ意外にがんばってくれて助かったよ。あは……あひぃ」
無理をしているとハッキリとわかる。平時であれば快活的な女性であることがよくわかる笑顔は、一瞬意識を失いかけ、机へと手を突き体を支える。
うなだれるような形となった女性は首だけ曲げて、啓介へと笑顔を向ける。必死である。
「あああ、ご飯奢るよ?飯、おご、おごごご」
壊れかけのレディオ。
「寝てください」思わずピシャリと言ってしまった。
「ドン引きしてそうだから、旨みをよこさないと……」
そして本心ダダ漏れ。
「あと面倒な野郎どもがいるから、ごはんは気をつけないと」
「面倒な野郎?」
と声を発すると共に、事務室の扉が開かれた。騎士団の制服を着た、三人が部屋へと入ってくる。女性は彼らを指さした。
「いちゃもんつけた君」
「誰がいちゃもんつけた君だ!?」
三人のうち、先頭にいる男が女性の言葉に反応した。
男は啓介と視線が合うと、にやりと笑い近づいてくる。
「――君がこの国の人間でもないのに騎士になった愚か者だね」
「この国の人間でもないのに騎士になるのはおかしいんですか?」
啓介は受け取った言葉を女性へとパスする。
「まぁ前例はないわよ。アホが第三騎士団巻き込んだ自爆しなきゃ、雇わなかったんじゃないかしら。まぁ私としても今日の働き的に平時でも雇っていい人材だと評価するわ」
「自爆?」啓介は首を傾げた。
「おい!この僕を無視なんて良い度胸だな!」
男が怒りに顔を赤く染めて、話へと割り込んでくる。女性はそんな男を鼻で笑った。
「あぁこれは無視していいから、勘当されかけで叩きなおしてくれってここにぶち込まれた囚人だから。そして実を言うとこれ演技だから、後々笑……嘲笑ってあげるといいわよ、みんなやってるわ」
「誰が囚人だこの糞女!というかネタ晴らしするのやめろよな!?」
「不遜に生きるだけの糞生産機が糞みたいな言葉を生産してるわ」
「うるせぇ嫁ぎ遅れ!」
「徹夜明けの倫理観崩壊レベルなめんじゃねぇぞコラァ!てめぇの顔面ボコボコにすんぞ!?」
「ひぃ!すんません!」
どうやら地雷だったようだ――。修羅のごとく怒り狂う女性に、男は光の速度で謝罪した。
「給料高い上に勤務時間が長い!男に会えても給料聞いたら紐になる気満々か、劣等感感じて離れていくやつばかり!貧乏でもいいのよ!?男への要求なんて常識あって優しいだけで十分なのよ!?顔――悪くないわよね?」
女性はぐいと啓介に顔を近づけた。
「え、えぇまぁ」
反転し、今度は男へと近づける。
「でしょう!?」
「お、おう……なんていうか……す、す、す……スキっていうかぁ」
だんだん尻すぼみになっていく言葉。ヒートアップした女性は気づかないが、啓介はハッキリと聞こえていた。
「なのになんで結婚できないのぉ!?」両手を広げて天へと大きなものを掲げるように挙げた。
啓介はデジャヴを感じていた。残念な美人感がアウリュアレそっくりである。
方向性は正反対と言えるが。
だが啓介はハッキリと言えなかった。
……残念な感じがするからじゃないッスかね、と。
「ほ、ほう、なら俺がもらってあげようかなぁ~なんて」
「妾なんて全力でお断りよ」
「べ、別に正妻でもなんて」
「馬鹿にするのもいい加減にしてくれるかしら。どうせ今回も辞めろなんて言いに来たんでしょう?このふと気まぐれに地獄の業火が降り注ぐ、この事務仕事の新入団員をやめさせるなんてそれだけで常識的にないわ。最悪暴動起きるなんて少し考えればわかるわよ?そもそもそういうのは本人に言うんじゃなくて人事にいきなさい。そして盛大に殴られてきなさい。あっちもあっちで昨日まで修羅場だったから、仕事増やすなってタコ殴りにされるわよ。背中を押してあげるわ、むしろ連れて行って用件だけ話してあげるわ。すばらしいわ私、人の面倒を進んで引き受けてるわ、まるで聖人ね。よしいきましょう、そうと決まれば行きましょう。私はすぐに離脱するけど貴方はキチンと暴れなさいよ――ッあーもう無理だこれ」
言い遂げたかと思うと、糸がきれたかのように力を失くし、よろめいた。
啓介はぎりぎりのところで座っていた椅子から立ち、落下すら女性へと差し込み、身体を支える。
「大丈夫ッスか!?」
「お、おい!」
慌てて啓介と男は声をかけるが、反応はない。規則的な寝息だけが響いている。
安堵のため息をつきつつ、啓介は言った。
「医務室ッスね」
「お願いできますか?」
いつのまにか横にいたデイが声をかけてくる。
「寝かせたら帰っていいですよ。この仕事が完璧に落ち着いたら歓迎会があるので、そのつもりでいてください」
それと、と付け足して続ける。
「口調は別にそのままでもいいですよ?」
「え?なにがッス――あ」
デイは笑みを浮かべた。
「公共の場であればキチンとした言葉が必須です。ですが、ここはそこまで束縛されません。公私……というか、使うべきときに使いましょう。あ、この敬語は慣れきってるのでこうなってしまうだけですから」茶目っ気を見せて言うと、限界が来たのだろう、一気にだるそうな表情をする。
「……というわけで帰ります。明日は昼からでいいので盛大に睡眠をむさぼるように」
室内からまとまりなく声が返される。
ふらふらとデイは外へと出ていき、啓介は「お疲れさまでした」と頭を下げた。
それから周囲へと同じく挨拶をしてから、椅子ごと彼女を持った。
「手伝う」と男は言った。
男は背後の二人に視線を向ける。
「二人は訓練に戻っておいてくれ」
二人は素直にうなずき、去っていくと、彼は椅子の片方を持った。
冷静になって考えるとなかなかシュールだなぁ……と啓介は思いつつご厚意に甘えた。
医務室に医師の姿はなかった。ただ書置きが置かれており、それには少しだけ外にいると書かれている。
女性をベッドへと横にすると、二人はベッドを挟んで椅子に座った。
非常に気まずい。この場は彼に任せて去るべきかと思った時だった。
「アレックス・ヴィルディだ」
「……あ、ケイスケ・ミムロです……ッス?」
自己紹介で気まずい沈黙が払しょくされた――かと思えば、即座に沈黙が再臨する。
啓介はどう切り出せばいいかと迷ったとき、一つひらめいた。
「そういえば、自爆って何です?……いや何スか?のほうがいいかな?」
「気にしない。……自爆というと、ユーリの言っていたやつか」
あ、彼女ユーリっていうんだ。啓介はちらりと眠っている女性へと視線を向け、すぐにアレックスへと移す。なにやら考え事をしているようすで、下唇を摘まんでいる。
「ここまで来たら言うしかないのだろうな、これを聞いてからきちんと考えてほしい。辞めるか否かをな」
はぁ、と啓介は気の抜けた返事をした。
アレックスは淡々と語り始めた。
「この第三騎士団はすごく嫌われている。みんな言葉にはださないが、接すればはっきりとわかる。このエーレでは事件が起これば分野で違うが、警官もしくは騎士が解決するようになっている。……騎士に対してはものすごく非協力的だ」
アレックスは長いため息つき、続ける。
「昔、といっても三年前だ。一人の青年がいた。そいつは貴族だった。かなり顔はよかったし、性格もよかった。そして、かなり有能だった。問題がその有能さが仮初だったことだ」
ぎしり、とアレックスの奥歯が軋んだ。内なる怒りを鎮めるために、深呼吸をして、ゆっくりと再開する。
「そいつはたくさんの事件を解決した。俺もすごく羨望のまなざしを送っていた。だけど……それはこの都市の暗部との癒着。つまりは取引していたわけだ、悪いやつらとな。騎士団の信頼が崩壊した音が聞こえたよ。前の団長や今の団長、たくさんの人がみんないい人で、尊敬できる人だったから、人生舐め腐ってた俺を変えてくれたから、その音が本当にリアルに聞こえた。……この程度なんでもないんだ、それから起こったことのほうが最悪だ」
啓介はアレックスの手が震えているのに気づいた。
「……別にあとでもいいんですよ?」
アレックスは首を振った。
「聞いてほしい。いや――聞いてもらわなくちゃいけない」
真剣なまなざしだった。思わず啓介は息をのみ、深くうなずいた。
――といったところで
「う……んぁ……ああ、ふぅ」とユーリはうめき、身をよじり、目をぱちりと開けた。
二人は沈黙した。出鼻をくじかれたわけだ、思わず顔を見合わせた。
「……眠い」
「そりゃあ、徹夜明けじゃないスか」
「……あー私も若くないってことかしら。で、二人はここに連れてきてくれた、と。うわぁ恥ずかしいなぁまったく……」
ユーリは顔を赤らめて、顔を前で手を振った。
その後、ちょうど医師が戻ってきたので医務室を追い出され、廊下を歩く。
「どこか落ち着けるところで続きを」と言ったところで、先ほどアレックスが連れてきた二人組の片割れが現れた。
「アレックス、団長が呼んでいる」
ちらり、とアレックスは啓介を見た。どうしようもない、と啓介は両腕を開いた。
「明日にしよう」
「わかったッス」
ということになり、啓介は去っていく二人を見送ってから、玄関部分へと向かった。
――さて、アウレトーラは大丈夫かな。小走りで帰り道を行く。