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ハイヒール  作者:
3/3

下剋上

【パニックルーム】→【加齢臭のシンデレラ】→からの続き【下剋上】ちょっと最後は長めですがこれで完結です。

まずは髪形、セミロングがベスト。色は明るすぎない茶。

メイクはナチュラルに見えてしっかりと。肌が綺麗に見えるようにメイクすると美人だと思いこむ率が上がる。

しかしヌードカラーの口紅はアウト。ピンクかほんのり赤系がベスト。ヌードカラーは不健康そうに見えるのでウケが悪い。

ネイルはヌードカラーで伸ばし過ぎない事。派手な色と長すぎる爪は家事の出来ない女と判断されかねない。

服装は派手すぎず、地味すぎずパステルカラーのデザインのシンプルなもの。ここで注意するのはワンピース、案外ウケが悪い。

そして、靴。靴のヒールは5センチ以内!!でかい女はウケが悪い。高いヒールはモテない。


モテる為には全てに置いて統計からできるマニュアルがある。

女にとってモテる事は、男のモテるよりシビアな現実(もの)がある。


産まれて自分が分類学上人間のメスだと気付いた時からそれは存在した。

女には女の社会があって、その社会は階級性だ。くだらないと何度も思った事か、それでも日に日に体はメスになればなるほど抗えない階級の力を思い知った。

この世で最高級の階級に居るのは美しい女だ。美しいという事は女の武器だ。しかしその美しいという武器は期間限定。いづれ失うモノ。最強だが脆い。

そこで期間限定の武器ではなく安定のある武器の存在を知る。


男だ。


男の容姿も頭には入れたいが、時間が経てば皆ジジイになるのだから男に求めるスペックにはおまけ程度にしか考えていない。

何よりも重視したいのは…【財力】【権力】【将来性】この3つである。この3つが揃って初めて女社会での下剋上がなせるのである。


そこを踏まえて…私の目の前のパソコンで恐らく仕事ではなくゴシップ記事を読んでいるであろう女から紹介していこう。会社の先輩だが、デブの癖に『私胸が大きくて』っと良い様に言う。自分が見えていないタイプだ。自分のサイズも見えていないようで会社の制服はいつだって胸以外もパツパツだ。階級は2。会社経営の彼氏が居るが2。何故なら、その彼が胸糞気分の悪い成金野郎で会社自体も将来(さき)がなさそうで…よって2。

こないだネチネチとそんなクソ彼氏との話をしてくるので1にも堕ちかけた。


次は私の隣の後輩。コイツは階級3。めちゃくちゃ美人で性格も良いと思われている。がしかしモテるせいか本命の彼氏が居ない。まだ遊びたい様だ。なのに『私モテないんでー』って謙虚ぶる腹の黒さを含めて3。ただ美人でちやほやされて来たせいか頭が弱く嘘がすぐバレる。気のきいた事もできず、手前のデブに『胸以外もおっきいですよね?』っと大声で言う。美人でもバカは3。

「昨日ネットでお財布買っちゃったんです。」

今月金欠だって私に言ってたくせに。バカ治せよ。

「そうなんだ。」

「イタリア製のなんです~届くの楽しみー」

「良かったね。」

話しかけんな。バカが伝染る。

そしてこのバカ女の目の前、デブの横、私の左斜め前の席。

地味なメガネの女。階級1。年齢=彼氏居ない歴っぽく見えるイモさ。実際どうなのか聞いてみたがうまくはぐらかされた。飲み会は、なんやかんやで断る癖に上司からの評価が悪くない。

周りの悪意のあるからかいもサラッと波風立てずに交わすのでかなり頭は良さそうだ。

がしかし、この地味で色気のない佇まいが大きく影響して評価は1。その感じでは下剋上どころか男を捕まえられるのだろうか?


そして私。階級4。2年付き合っている彼氏が居る。背が高くて顔もそこそこ。将来性もかなり有望株。もうそろそろ王手を打ちたい所。結婚が決まれば私は最高ランク5だ。よって周りが羨んでいるのは良く分かる。だからと言ってデブの様に自慢話をしたりしない。またバカな事もしない。私は5ランクまであと一歩なんだから。


さぁさて…この職場で唯一最高ランクを取った女が居る。私ら事務チームのリーダー新井さんだ。私より3つ上で現在は2人目妊娠中。26で出会った人と28で結婚。30で一人目出産と同時に自宅購入。これまた結構な高級マンション。一年後職場復帰し今のポジションで評価されつつ只今2人目妊娠中、これを期に子育てに専念する為、来月退職予定。

可愛い娘に素敵な旦那さん年齢より若く見られる新井さん本人。まさに最高ランクを手にするにふさわしい人物!!

私は見た目がパッとしない。その分彼氏が某大手の社員だ。新井さんの旦那さんより稼ぎはいいはず?多分…。結婚したらそこを足し算して新井さんと並べるはず!!

誰も私を見下したりできない。

「かおりちゃん…」

新井さんに声を掛けられた。

「はい?」

「ちょっといいかな?」

私は新井さんに呼び出された。簡易会議室で話は始まった。だいたい話は分かってる多分、事務チームの後釜の話だ。新井さんは来月にはその席を空ける。その後釜がどう考えても私以外ないのだから。他のデブ、バカ、地味にはこのポジションは無理だ。

「ちょっと人事の話なんだけど。」

分かってますって…。

「後から人事の人から正式な形で話が来るとは思うけど、ビックリしない様に。」

もーーもったいつけて。分かってますって…。

「かおりちゃん営業に異動になるかもって。」

「え!?ちょっ!!どういう事ですか!?」

思わず声がでかくなってしまった。

「私もビックリしてね。かおりちゃん仕事覚えるの早いし優秀でしょ?」

「私、事務がいいです。」

「私としてもかおりちゃんには事務チームで頑張ってほしいのだけど…」

やだやだ。だったら、引きとめなさいよ!!

何でゴリゴリの営業課に私が行かないといけないのよ。ありえない。

「向こうの課がかおりちゃんを熱望してるのよ。」

私は仕事じゃなくて結婚がしたいの!!!!

「あ。込み入った事聞くけど…彼氏とは…結婚の予定とかもう出てる?」

悔しいが…その話はまだ出てない!!がしかし今日にもプロポーズされたって可笑しくないんだからね!!

「いえ…まだ…具体的には…」

「そうなの。事務チームは、もう二人雇う予定になってね。私の後を間宮さんに…」

え!?次リーダーが地味子!?

「新人さん二人の教育係を司ちゃんと山崎さんにそれぞれ付けようって事になったの。」

バカとデブに!?山崎(デブ)はまだいい…(バカ)はヤバイだろう。未だにミス連発してんぞ。

「司ちゃんも不安だけどかおりちゃんの分頑張るって言ってくれて…」

「え!?つっちゃん…もうこの話知ってるんですか?」

「ごめん。かおりちゃんと中々タイミングが合わなくて一番最後になっちゃた。」

よりにもよって…バカより後で知るなんて…。急に眩暈がした。

「大丈夫?顔真っ青よ?かおりちゃん?」

目の前の妊婦が憎かった。


ねぇ…それ…早く言ってよ。


その日の仕事は、ほぼ惰性で終わらせた。金欠のバカ女にご飯に誘われたが誰とも話したくなくて断った。

しかし…家にまっすぐ帰る気分にもなれなかった。ぼんやり駅前を無駄に彷徨った。

彼氏に会いたい。この話を聞いてもらいたい。もしかしたらこの話を聞いたら焦ってポロポーズしてくれるかもしれない。営業なんて男が多いから嫉妬するかもしれない。まぁ…うちの営業は男と言っても既婚のおっさんだらけなんだけど。

彼に連絡だけして、彼からの返事を待たずに彼の家に向かった。

返事はない。ないまま家まで付いてしまった。相当仕事が忙しいのだろうか?合鍵で勝手に中に入った。


あれ?靴が…。女物の靴。…にしては…おばちゃん臭い感じの靴。何だか嫌な予感がした。


「ゆうすけ?」

そっと中へ進んだ。

「ゆうすけー?居るの?」

リビングを覗きこむと、そこに正座した彼氏(ゆうすけ)と彼のお母さんが居た。

何だかとっても険悪な雰囲気だ。

「お母さん!?…お久しぶりです。かおりです。あの…急に押し掛けてすいません。出直して来ます。」

「かおり!!待ってくれ!!大事な話がある。」

ゆうすけが私を見ずに声を掛けた。

大事な話?まさかプロポーズ!?

はっ!?この重い空気はお母さんに『俺、かおりと結婚するんだ』って言う報告してたのね!!

何てタイムリー!!営業なんか行かず嫁に行くわ!!さらば…デブ、ブス、地味子!!寿退職してやる!!

「そこに座ってくれ…」

「あんた…かおりさんにちゃんと話しなさいよ。」

っと言っておかあさんは席を立った。

良かった…ちょっと向こうのお母さん付きでプロポーズは気まずい。あと、私はゆうすけのお母さんちょっと苦手なんだよね…。

お母さんが出て行くのを見送ろうとしたが、ゆうすけに手を掴まれてここに座って居てくれと言われてソファーに押しつけられた。

ゆうすけとお母さんが玄関でこそこそ話している。

何なんだ…。お母さんはそんなに私との結婚が気に食わないのか…。それで、もしかして喧嘩してたのか?

いやでも…夏頃そっちに顔出した時は和やかな雰囲気だったじゃん。え?今更気に食わない感じなの?

「あんたね!!かおりさんの事ちゃんと考えなさいよ!!」

急にお母さんの怒鳴り声が響いた。驚きに体が浮き上がった。

しかし…かおりさんの事を考える?はて?どうも…ちょっと予測とは違う感じがしてきた。

激しくドアを閉める音。暫くしてゆうすけが戻ってきた。

「ねぇ。どうしたの?」

「…。」

ゆうすけは黙って私の前に正座した。

「ゆうすけ?」

プロポーズとはちょっと違う気がしてきた。正座スタイルって見た事ない。

「かおり…落ち着いて聞いてくれ。」

ゆっくりとゆっくりと、ゆうすけが頭を下げた。

「他の女性と結婚します」

ゆうすけはいつの間に、土下座スタイルになって居る。

「意味が分かりません。」

全身から血の気が引いて行き、指先が急激に冷えて行くのを感じた。

「正直に言う。他の女性に惹かれてて…その半年前からその女性とも会うようになって。その人に赤ちゃんが出来たんだ。俺の子なんだ。その…」

「…。」

「その人、病気なんだ。支えたいんだ。かおりに対して俺は最低な事をしたし、こんな選択しちゃダメだと思ったんだけど…それでも彼女の支えになりたいんだ。」

「私は…支えられないの?」

涙でゆうすけがほぼ見えなかった…目の前に居るはずなのに。

「ごめん。」

指先が完全に冷え切って私の体じゃないみたいだった。涙を拭おうにも体がうまい事動かなかった。

「本当に申し訳ございません。」

「…じゃぁ…私はどうなるの?」

「………別れてほしい。」

ゆうすけの長い沈黙が毒のように体を麻痺させる。そのせいで、言いたい事が出てこなかった。

泣きながら部屋を飛び出した。別れてほしいって回答じゃなくて、私はどうなるのか聞きたかった。急に放り出された私は何をどうしたらいいの?何、病気って?そんなに弱ってる女がいいの?私だって弱いわよ!!

マンションの下まで降りた所で寒い中お母さんが立って私を待っていた。

「かおりさん…この度は…うちの馬鹿息子が本当に申し訳ございません。」

お母さんの濃い目の化粧が涙でよれて妖怪見たいになっていた。夏頃良いマスカラを一緒に買いに行ったのに使ってないんだ…。目の周りには黒い繊維が散らかって居た。

お母さんも息子と同じ土下座体制に入って居た。

何だろう…本来ならここで『お母さんやめてください』って言わなきゃダメなんだろうけど…どうもそんな気になれなくてただ冷たい地面に吸い込まれていくババアを眺めていた。ちょっとした仕草がゆうすけに似ている。

私は何も言わずその土下座を一通り見てからその場をそっと去った。

振り返ってもお母さんはまだ土下座のままだった。一生してりゃぁいい。正直そう思った。

外は寒いはずなのに私の体は寒さを全く感じなかった。寒さって何?涙が止まらない。

それでも震える手ですがるように電話を掛けていた。

「はーい。もしもーし!!…かおちゃん!?どうしたの?え?何?」

「しずる…今どこ?助けて…」

「え!!大丈夫!?丁度今、純ちゃんと一緒だからすぐ向かうね!!」

「はっ!?純も居るの?」

よりによって…会いたくない相手も一緒とは…。

静流は小学校からの幼馴染で、純は中学校からの腐れ縁。私を含め三人とも同じ商業高校に進学した。

その後の進路はバラバラだったけど、偶然にも静流の勤めてるデパートは私の勤務先の近くで。仕事の関係でまさかの取引先に純が居た。

「もしもしー?クソかおり?」

「出た。」

寺田純…コイツと私は昔から反りが会わないと言うか…なんと言うか。

「今から車すっ飛ばして迎えに行ってやるから、場所教えなさいよ。」

「ちょっ!!純ちゃんクソとか言わないのっ。」

後ろでいさめる静流の声が聞こえた。静流はぼやっとしてて癒されるけど、純は要らない。特にこんな時は会いたくない…純とは何かと相性が悪いし、向こうも私の事を良くは思っていない。

しかし、ものの5分で静流達は私の所へ来た。

「あんた靴は?」

純に言われて気付いた。私は彼のマンションからずっと裸足だった。私からぬミスに二人はようやく事態の緊急さを感じたようだった。


私のあまりの目の腫れ方に外での飲食は無理と判断され、静流のアパートに連れっててもらった。泣きながら静流に話して、隣で黙って純も聞いていた。目に火が点いたかの様に熱い。声が上ずって上手く出なかった。一通り話したら私は余計な事まで話していた。


「私さぁ…20代でウェデイングドレス着たかったの。それが目標だったの。私は…仕事じゃなくて結婚がしたいの。だって…ウェディングってさ…どんな女でも、すっごい輝くじゃん!!どんなブスでもあの白いドレスを着たらやっぱ羨ましいって思うじゃん!!……20代の内に着たかった。その為にすっごい努力して彼氏捕まえて、料理教室とか通ってさ。エステもお財布には痛かったけど頑張ってたわけじゃん。気付いたらもう29よ?体型は徐々に崩れるから維持の為ジムにも通った。いつでもドレスが着れるように…ちゃんと綺麗に見れるように…。来月私30じゃん。私の努力はさ…ゆうすけとの2年はさ…病気の女に全て負けたわけ?」


「……かおちゃん」


「静流はイイよね…どこに居ても誰からも可愛がられる。実際スタイルいいし顔も可愛いし。あんたぼやっとしてる所が無性に男ウケいいしね。ほっといたらすぐ男が寄って来るし。」


「かおり!!そこまでしときな。言いすぎたら後悔するよ。」


「うっさい!!黙れクソ女。純も純だよね。あんたも顔は綺麗だから黙ってても努力しなくてもすぐ男が寄ってくる。今日も二人して私を除け者にしてたんでしょ!?私がどんだけの思いで頑張ったと思うの?私は…私は…あんた達と違って…顔も良くないし性格も可愛くない。そういや高校生の時の彼氏に程良いブスって言われたしね!!大変なのよ!!程良いブスは人より倍努力しないとレベルが…下のままなのよ…そんな自分が嫌なのよ。もう見下されるのは嫌なの。あんた達が当たり前に手にしてる幸せが私は倍努力しないとてに入らないの!!」


言い切った後、涙がまた視界をぼやけさせた。

私は今友人も失おうとしている。彼氏にはほとんど言えなかった癖に友人にはぼろくそ言って傷つける。

私…最低だ。でも口が止まらなかった。そらぁ…彼氏からも見捨てられるわけだ。


「と…言う訳らしいから…後は、しずたん頼んだわ。」

「え?あ?うん?任せて?」


車のキーをチャリチャリ言わせながら純が帰って行く。玄関で純好みの鋭いハイヒールが見えた。黒のレザーの先の尖った高いヒールの靴。純はそれを当たり前のように履き自分のバックを持った。


「かおり…あんた勘違いしてるよ…。私だってあんたが羨ましいんだよ。あんた私が持ってない物持ってる。私がどんだけ頑張ったて手に入らない物。」


毒舌純にしては珍しい事を言い出した。


「……何?」

「………身長。」

あ。純はチビだ。

「ぶっ!!」

思わず笑ってしまった。

「もう純ちゃんやだー」

静流も笑いだした。


「あまりそう嘆きなさんな。あとさ。もっとさ…周り見た方がいいよ。幸せ幸せって言うけど人から羨んでもらう事が幸せなの?結婚もそう焦んなくても本当にイイ人見つけようよ。長い人生一緒に歩く人なんだから。いつまでにとかじゃなくてさ。」


純が優しい。優しいのが…何か気持ち悪い。純の妙な優しさで逆に冷静になってきた。


純が帰った後、私は結局、静流の部屋に泊まる事になった。

お風呂に入れてもらい。温かいココアを貰った。私が変な気を起さないか心配だったのか静流は自分がお風呂に入る時に包丁をさりげなく棚にしまって居た。ぼやっとしてるくせにこう言う所はしっかりしてるというか…。

「静流…さっきはごめん。変な事言って。」

「そう?変と言うより…初めて聞いたかおちゃんの本音だと思ったよ。私ぼやっとしてるから二人にはいつも心配かけてるでしょう?特にかおちゃんには私よく怒られてる事が多いじゃん。そのかおちゃんが私が羨ましいとか言うから焦ったよ。しかも、かおちゃん意外とコンプレックス多いんだねー。何かそっちにビックリしっちゃた。」

そう言って、静流は横になり長い脚を壁にかけて天井に伸ばした。相変わらず脚が長すぎる。

「何やってるの?」

「あ。ごめん。いつもの体操…」

マイペースな事で…。

「この体操しとくと翌日ヒール履いた時にすっと決まるんだよね。」

そう言えば、静流もハイヒール好きだった。

「静流はさ…ハイヒールだけは譲らなかったね。」

昔に静流にハイヒールはモテないとアドバイスした事がある。静流ほど背が高いとハイヒールは、かなり目立つ。男は小柄な女が好きだという雑誌の書き込みと自分の体感からのアドバイスだった。けれど静流は靴だけは断固として譲らなかった。他のアドバイスにはかなり素直に受け入れたのに。不思議だった。

「だって好きなんだもん。」

「そんなに?モテなくても?」

「うん。モテようがモテまいが関係ない。私おばあちゃんになっても可能な限りハイヒール履いてたいの。それで私の事嫌いになる男の人なら要らないって思う。」

「…。それで一生独身でも?」

「うん。だってそれを含めてそんな自分を愛してほしいから。」

「ウドちゃんのくせにっ!!」

「へへへ…。」


言い返せなかった。何も言えなかった。涙が出そうでまたクッションに顔をうずめて泣いてしまった。自分自身からココアの甘い匂いがした。


そんな自分を愛してほしい…私はそんな自分に自信がなくていつも自分を作り込んでいた。メイクもファッションも話し方や仕草、考え方まで…。でも結果ゆうすけは他の女を選んだ。私の努力って何だったんだろう。順調だと思ってた2年の間に私は他の女に負けたんだ。作り込んだ私は愛されなかった。


翌日の顔は予想通り死んでいた。

チームの視線が刺さる。マスクと伊達メガネはしたものの…隠せてない目は昨日より更に腫れ、顔はパンパンに浮腫み化粧のノリは最悪でそれをごまかすために不自然な厚化粧になっていた。

その異様さにチームの誰もが逆に気を使って見て見ぬふり…。私のせいで、いつもとは考えられない静けさを生み出してしまった。

その静寂をやぶったのはデブだった。

「かおりちゃん大丈夫?」

「大丈夫で…」

言いかけて目の前が見えずらくなった。あ。嘘。あんなに泣いたのにまた涙出ちゃうの?そんな所デブに見られたくない。必死にこらえる為に力んだら声がでなくなった。

その時だった、誰かに手を引っ張られた。温かい手が私をこの息苦しい部屋から連れ出してくれた。涙でよく前が見えないけど、廊下に出た瞬間解放された気になった。

そして抱きしめられた。この肉感…。

「大丈夫じゃないじゃない。無理しちゃだめよ。目が真っ赤じゃない。」

デブだ。温かい。

私は子供の様にデブにすがりついて泣いていた。デブの肉感に実家の母を思いだした。私のおかんは少しデブだからこの肉感が懐かしかった。何も言わず背中をトントンしてくれるデブが本当に優しくて自分が恥ずかしくて、でも離れたくなくて…私はとんだクソ女だと思った。

反省しったちゃ…し足りない。

泣き終わると、私の後ろで音も立てずにソワソワしていたバカがいた。

「先輩…。」

っと一言言うとダッシュで一階の自販までスポーツ飲料を買いに行ってくれた。二人とも何も聞かずに居てくれた。その優しさが自分の疚しい心に刺さってくる。


落ち着いたのでデスクに戻ると溜まって居るはずの仕事が片付いていた。

メールのやり取りですぐ分かった。地味子が全部まとめておいてくれていた。地味子は不器用に…

「間違ってたらごめんなさいね。」

っとメガネを光らせた。



あれから一カ月…。

月は替わりクリスマスを過ぎ、新年を迎え。

私は30歳になった。プロポーズもされなかったし、彼氏ともやっぱり別れた。

けど今年は初めて会社の面子とクリスマスパーティーをした。いつも彼氏を優先してたので女子同士のクリパがこんなにバカ面白いとは思わなかった。地味子がまさかのプライベートは面白女とは初めて知った。年末と新年は静流と純で迎えた。家で酒を飲み明かしお笑い番組によだれを垂らして大笑いした。どすっぴんでブサイクなのに気にせず顔を歪めて笑いまくった。

純が酔うと、えらく可愛いのがビックリした。純、あんた…うまくしゃべれなくなるタイプなのね…。


あ。ちなみに1月3日が私の誕生日で…二人(純、静流)からハイヒールを買ってもらった。今まで私が履きたくても周りの目を気にして履けなかった10センチオーバーのハイヒール。先が尖ってて洗練されてて華奢で美しい。嬉しくて一日中部屋でハイヒールファッションショーをしていた。案外はしゃいでる自分にビックリした。


そして私は…


「今日から営業課でお世話になります。本村かおりです。今まで事務ばかりしてきたので営業の業務は全く分からない事ばかりです。色々と質問したり見当違いな事をしてご迷惑をかけるかと思いますが、折角、頂いたチャンスなので精いっぱい精進します!!よろしくお願いいたします。」


純から『○○したいと思います』という言い方はやめろ言われたので精進したいと思うではなく…します。と言いきった。言いきったら何だか自分自身もすっとした。今日から私は営業だ。

廊下で後輩の(バカ)ちゃんとすれ違った。


「お疲れ様ですー!!あれ?先輩、背高かったんですね。パンツスーツとか…初めて見た。」

「こっちは制服ないからね。背はヒールのせいだと思う。」

「何か、そんなヒール履くんですね。すっごい似合いますよ!!何か出来る女みたい!!」

「今は出来る女風だけど…いづれ風は取れるように頑張るわ。」

「ふふふ…うける!!あ。今月また山崎さんと間宮さんが、ごはん会しよって」

「行く行く!!あとで日程すぐ連絡してー!!絶対行くから!!」

「やったー!!了解です!!じゃぁまた!!」


笑顔で去っていくバカ。最近このバカの良さが分かった。コイツまっすぐすぎるんだって気付いた時に本当に可愛く見えてきた。バカ可愛いってやつかな?

山崎さんも『この脂肪は人に安心感を与えるために蓄えてるの!!さぁどんと私の脂肪で泣きなさい』って言って来た時に…なんだ自分の事分かってたんだと見直した。

そうだ!!地味子は、まじで頭良くてビックリした。あのメガネの奥に探偵並みに鋭い人間観察眼が潜んでいた。そんでメガネの下は超絶美人で驚いた。ある意味一番の隠し玉だった地味子事間宮ちゃん。あいつ…奥が深いわー。

結局の所…自分が一番周りが見えてなかった。自分の評価ばかり気にして私というモノを見失っていた気がした。


そうそう。

年明けに一度だけ、ゆうすけに会った。

別れるのを条件にある約束をした。

【一緒になるその女の人に私と付き合って居た事は絶対言わない事。墓場まで持ってく秘密にして。】

と…なんで?って言われたけど、そんなの言われたら…向こうが不安になるだけでしょ?本当に大事にしたいならそんだけ気使いなさいよ。って言い返した。

かおりは本当はイイ女だったんだなって…。


バカかっ!!!!


今からもっとイイ女になるんです。バーカバーカ!!


もっともっと…ここからもっと上へ。下剋上はいつだって今から。

男性が嫌うというハイヒールの音をカツカツ鳴らして、まだ寒い街中へ仕事で飛び出して行った。




【下剋上】で終。

ここまで読んで頂き本当にありがとうございます。季節を間に合わせる為に猛ダッシュで書きました。誤字脱字は相変わらずだとは思いますが…温い目で見守ってください(汗)


これから大人へなる女子と現役の女子と気持ちは女子の全ての女子へ捧げます☆

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