ちょっとした小話
「紫煙が漂うモーテルの一室、そこにはいろいろな物がある。」
体をクネクネと、妙な動きをしながら、バーマー=ウェイトンはしゃべる癖がある。
「使用済みの紙やらゴム、人になでられすぎて肘掛がツルンとなった椅子に、しまいには愛やら悲しみがある。」
だが身なりはいたって上出来だ、顔もよく“出来ている”。
「だーがしかーし。」
そいつは持っていたステッキをだるそうに、ベッドの上で呆然としている男女に、向けた。
「俺の寝床がねえ!」
どうやらそのカップルらしき男女は、彼が自分たちにたいして、演説しているのかどうかもわからないらしい。
「不公平だと思わないか?」
男の顔に近づいた。
そこまで聞いて、シャラサは溜息を吐いた。
「それで、その後どうしたんですか?」
「いや、どうするもなにもねえ?」
モーテルの主人だろうか、エプロンにツギの入ったジーンズと長靴を履いている。
彼女はまた勢いよく、溜息を吐いた。
「それで?」
「いや、それでって言われてもねえ?」
(なんなんだこのオヤジさっきから!)
「ねえ?じゃ、わからないですよ、いったいその後どうしたんですか?」
「ああ、彼なら厨房で働いていったよ。」
一瞬質問を間違えたかと思った。
「はあ!?」
「金が無いなら体で稼げ、って言ったらものすごく働いてくれてねえ。」
もういい加減、頭がくらくらする。いったいこれはどういうことなのだ?
「それで、なにゆえ警察をお呼びになったのでしょうか?」
彼女の声には軽く怒気が混じっている、初対面でもわかるほどには、
それに対しての、主人のエプロンをいじりながらの返事。
「事故だよ、事、故!アベックが怯えて呼んじゃったんだ、気づいたときにはもう遅かったの!」
「はぁ、、、」
怒る気さえ萎えた。