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武器屋の主人とカスタマー

ぶっきらぼうな口調って意外と難しい・・・・

α月β日 晴れだ


 ハクローのやつが「モーゲルさんも日記書いてみたらどうですか?」ってんで俺も書いてみることにしたぜ!






 つっても、何書いたらいいんだコレ?





 ・・・・まあ、俺は店やってるし、客について書けばいいだろ。


今日来たのは確かフィズ、それとアレタルだったか。フィズは「酸化作用を持つ体液を出すモンスターに襲われて、弓矢が使い物にならなくなった」っつってたな。弓矢の損傷度を見る限り、かなり高位のモンスターだったんだろうな。


・・・・つーか、アイツよく帰ってこれたな。自分の武器と相性最悪だろうに。流石は『K』(キングランク)様ってところか?まあ、それより更に上の、『O』(ジョーカーランク)が知り合いにいるんだけどな。他には『J』(ジャックランク)が3人、『K』(キングランク)がフィズの他に4人で、『O』(ジョーカーランク)がアイツともう2人か。





・・・・・あー、まあ、なんつうか。






 俺の知り合いバケモンばっかだなオイ!!!!






 ・・・・・・・・・・・寝よ。




あ、アレタル・・・・まぁいいか。



↓月←日 だから晴れだって


 今日は滅茶苦茶ムカつくヤツが来やがった。


 『フレグリン・ジェイル・ハーケンバー』。ヴァルゲール国でもかなりの権力を持つハーケンバー家の1人息子兼ドラ息子。ハクローが教えてくれた言葉に、『虎の威を借る狐』つぅのがあるが、こいつ程この言葉がピッタリ当てはまるヤツは居ないんじゃないかと思う。



・・・・うし、このおっさんがあの坊っちゃんに説教くれてやるか。日記の中だけどな。




確かにテメェの家は偉い。テメェの爺さんも偉いし、テメェの親父も偉い。だがな、だからといって、それがテメェを偉くする理由にはならねぇんだよ。テメェの爺さんもテメェの親父も、それだけの事をやって今の栄光を手に入れたんだ。マニュアル通りの人生でちょっとばかし優秀ってんで得意気になってるんじゃねぇよ。マニュアルってのは『それなりの結果』を残せるように出来てるもんだ。別にマニュアルがダメっつぅわけじゃねぇが、『それなりの人生』なんて誰にでも送れる。だから、『輝かしい人生』を送りたいっつぅのなら、誰もやらなかったことをやれ。そうすれば、お前だけの道が見えてくる。


 おお、なんか俺いいこと言った。ただ、こんなもんヤツや憲兵に見つかったら『奴隷落ち』(デグラデイション)だな。


 

でだ。その貴族様ーーーフレグリンはどうやら冒険者になるつもりらしい。よりにもよって俺の前で、「『K』(キングランク)到達なんて俺様にかかればあっという間だ!!」なんて宣いやがった。おいおい貴族様、あんまり『K』(キングランク)を舐めるんじゃねぇぞ?世間じゃ「『K』(キングランク)は人間の手で到達できる最高ランクで、『O』(ジョーカーランク)は人間を越えた化物が到達できる領域」なんて言われてるが、俺の知り合いの『K』(キングランク)をみる限り、あいつらも十分化物だ。なんで一本100kgもする大剣を双剣扱い出来るんだよ。なんで無詠唱で放った魔法がそこそこ高ランクのモンスターを一撃で倒す威力を持ってるんだよ。なんで放った矢が海を越えた先の国を襲ってるモンスターに当たるんだよ。ほら、化物ばっかだろ?


・・・・・話が逸れた。話を聞くに、貴族様は大剣をご所望のようだ。それだけじゃない、ヤツ曰く「この世で最も美しい剣」を作ればいいらしい。「金に糸目はつけん!」と言い切って悦に入っていた。オイ、なんか「俺様カッコいいこと言った!」みたいな顔してるが、その金はお前個人のモンじゃねぇだろ。そうして、貴族様は最初から最後まで傲慢な態度で店を出ていった。


うぅむ、最も美しい剣ねぇ。あの貴族様ムカつくから適当にやってもいいんだが、『奴隷落ち』(デグラデイション)は嫌なので真面目に作ることにした。これでいい、真面目に作ることがヤツに対しての嫌がらせになるからな!



&月*日 だから晴れだっつってんだろ!


 いやぁ、忙しくて全然書けて無かったぜ。


 今日は貴族様、フレグリンの野郎が注目の品を取りに来た。1ヶ月前と全く同じ傲慢ポーズで現れたヤツに、俺は自信満々で力作の大剣を見せてやった。あらゆる人脈を駆使して手に入れた宝石をちりばめ、刀身は非常に希少なオスミウムを磨きまくって美しく。「この世で最も美しい」には届かねぇかもしれねぇが、これが俺の今の限界だ。


案の定、ヤツは満足した様子で置いてある剣を眺めていた。手に取ってみたいというので、俺はハクローからかなり前に貰った手袋をはめて、それを手に取った。ニヤニヤしながらそれを受け取ったヤツはーーーー背中から床に倒れた。焦ったフリをして「どうなさいました!?」と聞くと、「お、重い・・・・!」とのこと。当然だ。だってそれは『オスミウム』ーーー理論上最も重い金属で出来ているのだから。その比重はなんと22.59g/cm³。この大剣だと、その重さは90kgになる。更に、その大剣には『磨けば磨くほど重くなる』魔法をケルナーにかけてもらっている。総じて重量300kg。1本で100kgする双剣を自在に操るギレフくらいのレベルじゃねぇと、この剣は振るどころか持つことすら出来ない。俺だって無理だ。じゃあなんで俺が持てたかだが、それはこの『手袋』に秘密がある。この手袋は『終末事件』(ラストステージ)の時、ハクローが一撃で消し飛ばした(・・・・・・)魔人が落としたマジックアイテムで、この手袋をはめると重さを無視して物を持てるという優れモノだ。これがなきゃ、俺もあの貴族と大して変わらなかった。感謝するぜ、ハクロー。


俺は笑いを噛み殺しながら剣を避けてやり、心底不思議そうな表情で呟いてやった。「重い・・・?そんなバカな。かのハーケンバー家のご子息様が、この程度の重さに耐えられない筈が・・・・」ってな。貴族様は思った通りの反応をしてくれ、「剣を振れる場所は何処だ!」と言ってきたので、俺は2階の部屋に案内した。剣は貴族様が持てと言ってきたので、素直に持ってやった。ヤツは自分が持てない物をただの武器屋の主人が軽々と持っているのを見て、しきりに悔しがっていた。ヤツについていた従者の1人は、俺を訝しげな表情で見ていたが。あいつは見所があるな。視線が手袋に向いてたし。


そして2階。剣を受け取ったヤツはまた倒れそうになったが、寸前で従者が支えた。とはいえ、300kgという重さは相当なもの。ヤツはプルプルしていた。そして、従者に背中を支えてもらいながら剣をどうにか振ったーーーーというより重さに振り回されたーーーーヤツは、床と熱いキスを交わした。俺は笑いを堪えるのに必死で、剣を床に落としたまま喚くヤツが何を言っていたのかろくに聞いていなかった。すると、ヤツはとうとう堪忍袋の尾が切れたらしく、自分に身体強化の魔法をかけ、大剣を持ち上げ構えた。慌てたのは俺だ。まさか身体強化を使えるとは思わなかった。腐っても英才教育を受けてる貴族様ってわけか。ぎゃあぎゃあ喚くヤツと、なんとか宥めようとする俺。従者が抑えているが、聞く耳持たず今にも飛びかかってきそうなヤツに俺が本気で焦り始めたその時、ハクローは現れた。至極自然に俺とヤツの間に入り、何があったのかを聞いてきた。俺はピンチの時には必ず現れるハクローと、ガキの頃憧れた「ヒーロー」の姿を重ね合わせながら、ハクローに事情を説明した。事情を聞き終えたハクローは、ヤツが何故怒ったのかを聞いてきた。全く、『大賢者』(キングオブノウリッジ)の異名を持つお前がこの程度、気付かないわけねぇだろ。『賢者』(ゾーズウィズノウリッジ)ってのはどいつもこいつも頭でっかちで面白みの欠片もないが、ハクローだけは別だ。国の『賢者』ゾーズウィズノウリッジ共を遥かに超える知識を有しながら、それを全く鼻にかけない。ホントいいやつだぜあいつは。欠点があるとすれば、謙遜が過ぎるくらいだな。


 そうして俺とハクローが話していると、身体強化が切れたのか、ヤツは剣を落としてしまった。ハクローはそれを見ると、「だからといって剣を床に叩きつけることはないでしょう。」と皮肉をいいながら、片手で軽々とそれを拾った。わかってはいたが、流石だぜハクロー。


 ピンチの時には必ず現れ、圧倒的な強さで敵を倒す。



・・・・俺がガキの頃憧れたヒーローは、アイツなのかもしれねぇな。

なんだかんだ言って、やっぱり紅茶はダージリンだと思います。


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