No.9 謎の少女
俺たちは今、バーチャルワールドで謎の少女に襲われていた。
フラース、フォックスのおかげで、なんとか、俺も黄竜も空へ飛んで逃げることができた。
よかった。
黄竜もフォックスも無事で…
「倒す。」
いつの間にか、少女が前方にいた。
「プルーム・ブレイド」
左手に光の翼の刀を携え、俺の方に向かって一気に間合いを詰め、
ザンッ――
思いっきり、俺たちを切り裂こうとした。
フラースはよけるが、少女はさらにプルーム・ブレイドで襲ってくる。
フラースが技を出す隙を与えない。
完全に仕留めようとしている。
フラースのバランスがだんだんと崩れていく。
『竜青、一旦勢いよく着地する。
しっかりつかまれ!』
フラースがそう言うと。
少女が刀を振った瞬間、それをまともに喰らったかのように勢いよく地面に着地する。
ぐぁっ!……
着地の衝撃がもろ全身に伝わる。
ロボットの銃弾を喰らった時よりも強い衝撃だった。
フラースも着地の衝撃を受け、大きく体力を削られていた。
少女は俺たちの後を追い、勢いよく地面へ向かって飛ぶ。
あっという間に間合いを詰められた。
「終わりだ。
ペインティング…」
少女が片手を前に出すと、そこに色とりどりの光が集まってゆく。
やべぇ…死―――
「ソード・スラッシュ!!」
ザンッ―
空気を切り裂く音がした。
前を見ると。
花輪を被った金髪の女性に化けたフォックスが、光の刀を持っていた。
さっきの少女は飛びのいていて、一切傷を負っていなかった。
でも、助かった。
少女の目つきが険しくなる。
「全員まとめて、コロス。」
憎しみ、怒り、素人に殺られそうになったという屈辱…
少女は負の感情が詰まった言葉を言い放つと、さっきよりも断然速いスピードでこちらへ向かってくる。
左手に、色とりどりの光を集めながら。
「ペインティング・クラッシュ!」
集めた光は、ボール…否、爆弾のようになって、俺たちに放たれる。
だんだん膨張し、俺たちの目の前で。
バァンッ!!!!――――――――――
辺りが眩しすぎる光のせいで真っ白になる。
砂埃が、勢いよく円状に広がる。
俺たちは、まともにアイツの攻撃を喰らってしまったようだ。
でも…
光が納まると、辺りに、砂埃に紛れて、俺たちがさっきまでいたロボ王国の世界が見えてくる。
周りの土でできた地面はクレーターのように少々えぐれているが、
俺たちは無事、生きていた。
助かった。
でも、何故?……
砂埃が徐々に収まり、太陽の光が差し込んだ。
ゆっくりと顔を上げると、そこには。
紫色の髪をして、群青色のフード付きのパーカーを身に着けた
1人の少年が立っていた。