No.6 ゲーム開始
俺は、VWのロボ王国の超高層ビルの前でヒロインや黄竜たちと話していた。
パァンッ―――
不意に大きな音がした。
なんか煙くさい…
匂いのする方に目を向ける。
俺たちのいた所の後方にある壁に、銀色に輝く銃弾が食い込んで、そこからとても細い煙が上がっていた。
えっ?…
俺も、黄竜も、アグリーたちも、ヒロインも、銃は持っていない。
壁と反対の方向に目をやると、そこには1体のロボットがいた。
『前方ニ敵ヲ確認。敵ハ排除スル…』
「ひぃっ!!」
ヒロインの顔は一気に青ざめ、全身が恐怖で震えていた。
なるほど、あれがこのゲームの敵役か。
「お手柔らかになっ!」
俺は思いっきりロボットに向かって走り出した。
『おっ、おい、竜青、何やってんだ!
それじゃあやられ…』
なんだろう。フラースが焦りながら何か言ってる。
まあ大丈夫…
パァンッ―――
また銃声。
なぜか、俺の腹に衝撃が走る。
「きゃぁっ!!」
ヒロインの悲鳴も聞こえる。
えっ?今、俺撃たれた?
腹を見る。
確かに銃弾を受けた衝撃は感じたのに、腹部は無傷だった。
そういえば。
この世界にある物は全てバーチャルでできているから、安全にプレイできる
というようなことを、黄竜から聞いていた。
…こういうことか!
リアルゲームの特徴が1つわかった。
じゃあ、このまま、相手に何されようが突っ込んでいけば…!
「竜青!!」
黄竜の俺を呼ぶ声が聞こえた。
振り返る。
「リアルゲームは、ケガはしないけど、敵から一定の攻撃を受けるとゲームオーバーになるぞ!!」
え。
「そうなのぉ~~?!!!」
先に言えよっ!!
やべ、このままじゃ絶対撃たれっぱなしだぞ…
こうしている今も、俺は何回か身体を撃たれている。
どうしよう、このままじゃ…
『ウイング・スプラッシュ!!』
途端、上空から青色の光から成るとがった羽のようなものが、雨のように降り注ぐ。
上を見ると、翼が降り注ぐ羽と同じように光ったフラースが、空に舞い上がって攻撃を放っているようだった。
さっきまで俺を撃っていたロボットは、今もフラースの攻撃をガンガン受けて動けなくなっている。
それを見ていた黄竜。
隙アリだな、とつぶやく。
「今だ、フォックス。
ソード・スラッシュ!!」
「了解です!御主人様!」
ポンっと音を立て、フォックスは金髪の、赤いバラの花輪をした、白いドレスの女性に姿を変える。
手には黄色い光の刀を持っていた。
「ソード・スラッシュぅっ!!!」
フォックスはロボットにとびかかり、光の刀で、しっかりと2等分に切り落とした。
2等分にされたロボットは、光って、弾けるように消えた。
「ありがとな、フラース、フォックス、黄竜!」
俺は礼を言う。
「説明忘れがあってすまないな、竜青。」
黄竜が少し申し訳なさそうに、軽く頭を掻きながら歩いてきた。
「考えればわかるでしょう…」
あきれ顔で、キツネ…のような姿に戻ったフォックスが言う。
『心配したぞ、竜青。
いきなり敵に突っ込んでいこうとするなんてビックリしたぜ。』
フラースは少し困った顔で言う。
「ほんとごめんな!
次はもっと考えて動くよ。」
ごめん、と右手を軽く顔の前に持ってきて謝る。
あれ、そういえば…
「ヒロインの子は?…」
「え?…」
3人(?)は周りを見渡す。
ヒロインに何かあったのだろうか…
見当たらない。
不意に、
「皆さん!!」
ヒロインの、叫ぶような声がした。