No.5 ロボ王国へようこそ
バーチャルワールドへやってきた、俺、フラース、黄竜、フォックス。
ここは、はじめに黄竜がプレゼントを渡してくれた時に説明してくれた、「ロボ王国」の舞台らしい。
ここ「ロボ王国」では、ロボットとのリアルアクションゲームが楽しめるということなのだが…
「俺たち以外、誰もいなくね?…」
何度か周りを見渡したが、俺たち以外の人の気配がない。
「まぁ大丈夫だって!」
黄竜は、まぁ見てなと言わんばかりに余裕の表情を浮かべている。
黄竜が大丈夫というなら、大丈夫か…
「あのっ!…すみませんっ!…」
不意に、知らない女子の声がした。
「えっと?…」
振り向くと、薄い桃色の髪の毛がショートとロングに分かれているような髪型で、マイク付きイヤホンのようなカチューシャ、近未来の制服っぽい服を着た女の子がいた。
普段人見知りの娘なのだろうか、少し顔が赤くなっている。
やべ…かわいい…
「助けてください!!」
思いっきり目をつぶって、ぶんっと勢いよくお辞儀する。
もうちょっと近くにいたら、思いっきりお辞儀から繰り出される頭突きをくらっていただろう。
こんなお辞儀をするなんて、やっぱり普段人見知りの子なんだ。
かわいい。
でも…助けてくださいと言われても、一体何が…
「何があったんだい?レディ。」
さすが黄竜。
キザ発動。
俺はあまり女子とは話さないけれど、黄竜はそういうのに慣れている。
少しうらやましい。
「実は…この国は、もともと人間がたくさん住んでいた国なのです。
ところがある日、ロボットたちがこの国を占領し、人間もどんどん連行され、ロボットに作り替えられていきました…。
私はこの国でずっとロボットにおびえ、隠れながら生活し、何とか見つからずにここまで来たのです。」
少女の話を聞いて気づいた。
彼女は、「ロボ王国」のゲームのヒロインなんだ―――
黄竜の話を思い出す。
建物も敵も何もかも、その世界にあるものはバーチャルの物だ―――
ってことは…
この娘もバーチャルなのか…。
少しがっかり。
なんとなく空を見上げてみると、そこには、監視するように泳ぐ大きなクジラの形をしたロボットがいた。
少女は話を続ける。
「私は生き残っているけれど…一緒に隠れた人たちは、上に飛んでいるロボットや、巡回しているロボットに見つかって…連れていかれました。
私は、連れて行かれたみんなを助けたい。
ロボットを倒したいのです。
今生き残っている人間は私たちだけ…
どうか、一緒にロボットたちと戦い、この国の人たちを救ってください!!」
はじめは、人見知りなのだと思っていた。
でも、だんだんと話し方が力強くなっていた。
本当に、みんなを助けたいんだ…。
この娘は、バーチャル。
でも、はっきりと、俺の心を動かした。
この娘も、黄竜のお父さんたちが作ったのだろうか…
少女も、黄竜のお父さんたちも
「すげぇな…」
つい、思ったことが口に出てしまった。
「俺たちに任せろよな!!」
黄竜が、ウインクをして、親指で自身を指して言った。
むぅ…さすが黄竜。
おいしいとこ持っていきやがって…
「あっ、ありがとうございますっ!!」
少女は、またぶんっと勢いよくお辞儀した。
笑顔で、目からは涙がこぼれそうで、顔を赤らめて。
ったく…そんな勢いよくお辞儀したら危ないって…
俺は、優しい笑みを浮かべていた。