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エピローグ①

『ワールド・オブ・フォーチュン』運営スタッフです。

 VR化用クライアントでの重大な不具合について、原因究明を行っておりましたが

 不具合の修正を行う事で新たな不具合が発生する状況と共に、人体への影響も懸念されることが

 判明いたしましたので、誠に申し訳ありませんが、VR化のアップデートを今後無期限にて延期することを決定いたしました。

 皆様には多大なるご迷惑をお掛けします事を、スタッフ一同謝罪申し上げます。




 昴が仲間達と無事にゲーム内で合流できた翌日、公式サイトにはこのような告知が公開されて


いた。他にも補填や保証の記事などもあり、向こう半年に渡って月額のプレイ料金無料や、アカ


ウント毎の購入上限付きで同期間の課金アイテム販売額を半額にするなどの発表もあった。

 その後、臨時メンテナンスが行われる。


 メンテナンス期間中に、奇妙な現象が『ワールド・オブ・フォーチュン』の様々なコミュニテ


ィで発生した。

 

 

 218名前:名も無き冒険者[sage]投稿日:2034/04/26(水)19:15:13.24ID:******

   ふじこ現象発生中ww


 219名前:名も無き冒険者[sage]投稿日:2034/04/26(水)19:18:22.34ID:******

   異世界くぁwせdrftgyふじこlp


 220名前:名も無き冒険者[sage]投稿日:2034/04/26(水)19:19:53.30ID:******

   やっぱりふじこしか書けねーwww


 221名前:名も無き冒険者[sage]投稿日:2034/04/26(水)19:20:06.14ID:****** 

   あの事書き込むとかならずふじこに変換されるんだよな

   喋ろうとすると声が出ないし紙に書こうとするとぷるぷる震えて書けないし

   どうなってんだ?



 巨大掲示板郡のMMOスレでも話題に上がっていたが、一週間ほど過ぎた頃からこの手の書き込


みは収束していった。

 彼らは気づいたのだ。

 異世界に召喚されてからの出来事を、他者に伝えようとすればするほど、異世界で経験した記


憶がどんどん消失していく事に。

 そして彼らが出した答えは――


 19名前:名も無き冒険者[sage]投稿日:2034/05/03(水)08:27:42.18ID:******

   必死になって他人にあの事を話すより

   記憶を大事に取っとく方が俺はいいな


 というものだった。この書き込みに同調した者が多く、自然とふじこ現象も沈静化していった



 ようやく臨時メンテナンスが終わり、サーバーが解放された日の夜。

 昴はこの世界へと帰宅後、 翌日にログインできて以来久々となるゲームへのログインを無事


に行った。

 ボイスチャットの設定も済ませ、聞きなれた仲間達のとの会話を楽しんでいると、モニターに


映るチャットウィンドウにギルドメンバーのログインを知らせるメッセージが現れた。

 そして直ぐにその人物からのチャット内容が表示される。


『アーディン:おい、お前ら暇だろ?』


 唐突すぎる内容に、チャットでもボイスチャットでも反応は直ぐには来なかった。

 彼女は相変わらず「イケメン」を貫いており、ボイスチャットの使用はせず、聞き取り専用だ


った。会話は聞いているので問題は無いが、アーディンの発言は全てチャットで表示される。


「暇といえば暇ですが……」

「キースのレベル上げしねーの? まだレベル15だぜ。さっさと上げてこき使おうぜ」

「だが断る」


 昴、いっくん、キースが順に喋る。イヤホンの奥では、くすくすと笑う何人かの女性の声が聞


こえて来る。


『アーディン:今からイベントやるから手伝え』

「え? 今からですか? 告知とかしてないんじゃ?」

『アーディン:公式サイトのイベントBBSで三日前から書き込んでる』

「掲示板とか見てないし」


 有無も言わさず、アーディンは全員にPT要請を行い、全員が承諾すると「聖堂帰還」を使って


場所を移動した。

 

 アーディンによって連れてこられたのは――


「あぁ、フォトリアルだ」


 彼らにとって忘れられない、初めての拠点。何度も何度も見た、フォトリアルにある大聖堂だ



「はやく来てほしいでござるよー」


 それまでログインはしていたものの、あまりの忙しさに喋る暇もなかったモンジは悲鳴を上げ


た。


「あれ? いたんですねモンジさん」

「酷い……弟分の桃太殿まで拙者を忘れるとは」

「でこにおるん? モンちゃん」

「お城の中庭でござるよ」

「あぁ、アーディンさんがイベントしたところですね」


 彼らは迷うことなくフォトリアル城の中庭へと到着しる。

 そこには数百人のキャラクターが処狭しとひしめき合っていた。


『マーク:ぶはw イケメンが男に戻ってるぞ』

『ぷげらっちょ:イケメンー脱げー』


 アーディンが登場すると、イベントの開催を待っていた観客からは「脱げ」のコールが湧き上


がった。


『アーディン:よかろう!』


 そうチャットを行うと、アーディンは全装備を外し、上半身裸、下半身はブリーフパンツ一枚


の姿になる。


『マクシミリアン:男の裸とか見たくねー!』

『ゆず:しまったwww こいつ今男じゃねーかwwww』

『Qちゃん:性転換! 性転換!』


「脱げ」の次は「性転換」コールで沸き返る会場で、アーディンはチャットを無視して司会進行


を開始する。

 通常のチャットとギルドチャットを使い分け、その都度ギルドメンバーに指示を飛ばしていく


のだ。


『アーディン:レディース&ジェントルメン、&ネカマネナベ諸君。本日はお集まり頂き感謝い


たします』

『マッハマックス:おい英語じゃねーのかよw』

『アーディン:つづりがわからん!(キリッ』

『ビタミンA:キリッじゃねーよwwww』


 笑いを意味する「w」がチャットに溢れる。

 昴たちは指示された内容を実行する為に、中庭の中央付近へと向った。

 その間にもアーディンの挨拶は続いている。


『アーディン:それでは、第一回チャリティービンゴ大会の開催を宣言します! ビンゴカード


をゲームショップから購入して頂き、その売り上げの一部を法人の骨髄協会へ寄付させていただ


きます』


 長いチャット文章が表示されると、事情の知らないプレイヤーから疑問の声が幾つも上がった


。それに対してアーディンは短く答える。


『アーディン:ゲームを共にしてきた友人が病に犯されています。どうぞ、ご協力ください』


 それだけを書き込むと、以後はいつものノリのアーディンへと戻った。


 たったこれだけの説明で、参加者達は納得し、そして課金アイテムとして販売されているビン


ゴカードを購入していった。


「アーディンさん……」

「もう、ほんと、イケメンったらイカスわねぇ」

「よぉし! 俺も買っちゃうぞぉ」

「私も私も~」

「あ、でも僕達はビンゴできるんですか?」

『アーディン:ダメに決まってるだr』

「ダイスエモ、ダイスエモ……どうやって出すんですかぁ?」

「あー、餡コロさん。えっとね――」


『アーディン:では、こちらのギルドメンバーがダイスを振るので、出目の数字がカードにある


か確かめてください。ビンゴが見事揃えば豪華かもしれない賞品を贈呈しましょう!』

『うよっしゃあぁぁぁぁ』

『S級! S級レアはよ!』


「エモーションの準備オッケーですよ、アーディンさん」

『アーディン:よし、んじゃお前からいけ、昴』

「えぇ? マジっすか……」

「うひ、昴頑張れ」

「ドジるなよ」

「間違ってジャンケンエモ出したりして」

「昴さん、頑張ってください」

「餡コロさんだけだよ……応援してくれるのは」


 昴は自然と溜息が零れた。息を吐く音はスピーカーを通して仲間達のイヤホンへと届く。

 くすくすと言う笑い声が、昴の耳にはいくつも聞こえてきた。


(いつもの事だな)


 そう思って昴自身も笑った。


『昴:それではみなさん。始めの数字、いきますよ!』


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