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5-13 『突撃!新大陸』

 昴たち10人は現在、ドローク地方のモリアーナ岬まで来ていた。東側大陸調査に参加し、モリアーナの港から船で東側大陸へと渡る為である。

 船の出港が翌日に決まってから、昴たちは岬に建つ灯台へと向かった。灯台には相変わらずやる気の無さそうな男が暮らしていた。


「ま、ままま、まさか、まま、まままた、ぼぼぼぼボクを」


 口調も相変わらずだった。

 灯台の扉を開けた瞬間にこの有様だ。

 彼の所在確認の為に様子を見に来ただけであったが、ニャモはこの男の喋り方に激しい嫌悪感を抱いており、男がまだもごもごと喋っているうちに扉を閉めてしまった。

 内部へと足を踏み入れていた者が居なかったのもあるかもしれないが、閉ざされた扉を再び開けようとする者は居なかった。そして、全員が大きな溜息をつくと、元来た道を引き返していった。


 そして翌日。天気は晴れ。

 無事に港を出港した船は、お世辞にも穏やかとは言えない波を超え、日暮れ前には東側大陸へと到着した。


「辛気くせーなー」


 調査隊の誰かがこう洩らした。その言葉は決して間違ってはいない。誰の目から見ても同じように映っただろう。

 モリアーナの港もそうであったが、東側のこの港も比較的大きな港町だ。こういった港町で彼らが想像するのは、船による貿易が盛んで人で溢れ賑やかなイメージだ。だが、この町にはそういった要素が何も無い。

 波止場には大きな船が何艘か停泊していたが、動かされている様子は無く、船べりには貝がビッシリひっついている。唯一彼らが乗ってきた船だけが「生きている」といった感じだ。更に波止場から見える簡易倉庫には人っ子ひとりおらず、ひとの声すら聞こえない。その先の通りも視界に入る中には人影は何も見えなかった。


「人……いるのかね?」

「どこかには居る……と思う」


 答えた昴も自身さな気といった様子だ。居てもらわなくては困るというのが本音だろう。


「とりあえず、船のおっちゃん! 乗せてくれてありがとうよ!」


 全員が降りたのを確認すると、いっくんは船長に向かって礼を言った。船は元のモリアーナ港へとそのまま戻る事になっている。東大陸はほぼ全域が魔王軍に占領されているというのがゲームでの設定でもあった。いくら戦う力を取り戻しつつある西側大陸の住民だからといって、ただの船員が魔物と戦うのには無理がある。


「おう! 英雄様を船に乗せたってなりゃ、俺の株もあがるってもんだ。帰りはどうするんで?」

「俺たちは魔法で帰還できるんで大丈夫です」

「さすが英雄様だぜ」

「あはは……」


 そう。既に枯れたプレイヤー達は西側大陸では「英雄」と呼ばれるようになっていた。それに関しては不思議な事でもない。次々に巨大な魔物達を倒してゆき、そして魔物に支配された町や村、国までも開放していったのだ。英雄と呼ばれるに相応しい事をしてきたのだから。

 しかし、彼らは慈善事業でそれらをやってきた訳ではない。自分たちが無理やり召喚され、元の世界に戻るという目的の上でやっている事だ。だからこそ、英雄と呼ばれることに違和感を覚える者も少なからず居た。


 船が出港したのを見送った一行は、無人かとも思われる町を抜け、街道へと続く門の前で足を止める。


「さて、んじゃここからは各自別行動だ」

「そうだな。お互い気をつけて行こう」


 5つのPT、総勢58人が互いに握手を交わすなどして無事を祈りあう。


「俺たちはこのまま北上するよ」

「じゃ、東よりに北上するか」

「僕たちは最初の拠点になりそうな場所を探すので、情報集める為にこの町に残ります。それらしい話が聞ければそこに向かって内部調査するつもりです」

「ギルド施設のある町を頼むな」

「もちろんですよ」


 一般フィールドをひたすら探索するPT。ゲームにあったダンジョン等が実際にあるかどうか確認するPT。町や村の状況を把握しに行くPT。東大陸での拠点となる町や都を探し、そこがどういう状況であるのかを偵察するPT。それぞれのPTが目的を持って行動に出る。


「それじゃ」

「ああ」

「いってらっしゃい」

「いってくらぁー!」


 一旦この港町に留まる12人が、旅立つ46人を見送る。

 昴たち10人は街道を外れ、東側へと向かって歩き出した。

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