番外編 『肉体の謎-ばいんばいん』
*本編とは違った書き方をしております。
各セリフの先頭にキャラ名の頭文字を書いています。
昴=昴 餡コロ=餡 アーディン=ア ニャモ=ニ いっくん=い
月=月 クリフト=ク カミーラ=カ 桃太=桃 モンジ=モ
本編とは無関係のようで関係のある内容ですが、深く考えずにお読みください。
考えたら負けです。
ニ「ねぇ? なんでミルキィーはデブだったの?」
唐突にニャモの口から、昴にとって最低最悪の名前がこぼれた。
昴「……唐突に嫌な名前出すなよ」
カ「そういえば、ゲームキャラだったときと比べると、異世界だと少し体型違うわよねぇ。ミルキィーはその代表かしらぁ」
昴「だからあいつの名前は言わないでくれって」
桃「なんででしょうね? ミルキィーさんはずっと女装のままですし」
昴「いや、だから桃太までその名前出すなって」
桃太のセリフは体型とはまったく無関係の方向に進んでいる。共通しているのは「ミルキィー」だけ。しかも誰も昴の言葉に耳を傾けようとはしない。
ア「ネカマがどうした? 昴のアレか?」
昴「アレって言いながら親指と小指同時に立てないでくださいよアーディンさん!」
ア「だってゲーム中女で今男じゃないか、親指と小指立てなきゃ意味伝わらんだろ」
昴「そうじゃなくって――」
月「なんでミルキィーがおデブなのかな〜って思って」
昴「だからその名前は――」
ア「あ〜、その事か」
完全に昴の存在は忘れ去れてている。彼が何か言おうとするたびに誰かが言葉を遮るようにして喋りだす。ある意味、いつもの光景とも言える。
カ「あらアーちゃん、知ってるの?」
ア「いや、知ってるというか、たぶんこういう事なんだろうなって程度だが」
ニ「え〜、教えて教えて〜」
昴「人の話を最後まで――」
聞かない。当然誰も昴の話を聞こうとはしない。
ア「たぶん、異世界で用意されている肉体ってのはゲームキャラそのままなんだと思うが、性別が現実のものに強制変更されたように、肉体の体積っていうか? それもある程度現実のものに強制変更されてると思う」
ク「その通りだ」
桃「クリフトさん」
アーディンの背後から現れたクリフトが、得意げな顔でウンチクを語ってゆく。
ク「現実で太っているヤツは、キャラクターの体ではどうしても収まりきれない部分がある。そう脂肪だ。収まりきれない脂肪は強引にはみ出して肉付けされているのだろう」
カ「し、脂肪……」
ク「ちなみに筋肉も同様みたいだな。カミーラを見る限りだと」
カ「いやあぁぁぁぁあぁぁぁ」
顔を手で覆ったカミーラが絶叫する。その背後で昴が必死に何かを訴えかけているが、カミーラの壮絶な悲鳴によって昴の声はことごとく打ち消されてゆく。
昴「お前ら……頼むから俺の話を」
カ「いやよぉぉぉぉぉぉぉぉ」
ク「しかし面白いのはそれぞれの種族特徴だ。俺はエルフだからな、男でも華奢な体型なんだが、現実の俺は痩せてはいない。しかし異世界の俺は痩せている。といってもエルフとしては普通体型だがな」
い「うーん。じゃー俺の今のこの筋肉は……」
桃「あ、いっくんさんお帰りなさい」
いっくんとクリフトとモンジの三人は、買出し当番を終え、帰ってきたところだった。
い「ただいまー! くっそー豆柴可愛いぜぇ」
桃「僕は豆柴じゃありません!」
昴「……もう……いいよ……」
存在をアピールしても無碍にされる昴は、いつものように肩を落として仲間達の会話を黙って聞くことにした。
ク「お前の筋肉はこの世界でのヒューマンの特権だな。まぁヒューマンというかヒューマンの戦士……いや、魔法系職でも筋肉質な体型してるか」
モ「つまり、フロイ様の好みの体型ってことでござるかな?」
ア「好みってお前……あのショタ坊主はムキムキな男が好きってことか?」
モ「いや、そういう意味では……」
まさかのホモ疑惑発生。
この異世界でたった二人しか存命していない神は姉弟で、その弟フロイが『ワールド・オブ・フォーチュン』というMMOを造った張本人。今は昴たちの故郷である日本にいるらしい。
餡「何のお話ですか?」
ニ「あ、餡ちゃん」
月「ゲームキャラだった時と異世界に来た時とで、なんで体型が違うか〜? っていうお話」
餡「そうなんですか〜」
興味なさ気というよりは、理解不能といった感じで餡コロは首を傾げた。
ニ「あ、キャラの体型に収まりきれない脂肪ってことは……このばいんばいんもそういう事なの?」
首を傾げた餡コロの背後に回ったニャモは、突如餡コロのたわわな胸を鷲掴みすると、上下にゆさゆさと揺らした。
はじめ、自分が何をされているのか理解していなかった餡コロは、数秒後、ようやく事態を把握すると慌てて手をバタバタと振り回し、助けを求めるように悲鳴を上げた。
餡「……いやあぁ〜〜ん」
ニャモは悶える餡コロを見て調子に乗ると、「ばいんばいん」と口ずさみながら尚も胸を揺らす。
その光景に視線を奪われた昴は、ニャモの唱える呪文に共鳴するのだった。
昴「ば、ばいんばいん!?」
共鳴はいっくんにも伝染する。
い「ばいんばいん!」
最年少の桃太には刺激が強すぎた。
桃「ば、ばばばばばばばばばばば……」
クリフトは揺れる胸を凝視しながら冷静に解釈する。
ク「そうだな、その胸のばいんばいんも元のサイズが大きすぎる為に収まりきれずはみ出た物だな」
溜息まじりにカミーラが溢す。
カ「……これだから男って……」
笑顔のモンジがニンニン状態で一連の光景を見守る。
モ「若いでござるな」
月は羨ましそうに餡コロの揺れる胸を見つめた。
月「そうそう、餡ちゃんの大きいっちゃね〜」
最後にアーディンが冷静且つやや呆れた様子で口を開く。
ア「まぁ……でかいな」
餡「もう! 離してくださいぃ〜」
必死にもがく餡コロだったが、ソーサラーとハンターとでは、矢張りハンターのほうがSTR=筋力は上であり、一向に振りほどけそうな気配は無い。
昴「ば、ばいんばいん……」
ニ「餡ちゃん、カップいくら?」
月「E? F?」
ア「そんなもんじゃないだろう」
ニ「ま、まさかG!?」
昴&い「ジー!?」
EカップやFカップでも十分「巨乳」サイズだと思っている昴といっくんにとって、Gカップはまさに神の領域だった。いっくんなどはGから上は巨大すぎてアウトゾーンだとも思っている。
餡「教えません!」
餡コロはせめてもの抵抗に、自身のカップサイズを教えようとはしなかった。しかし、彼女の英断は火に油を注ぐ結果にしかならなかった。
ニ「何をぉ、それならこうだ! ばい〜んばい〜ん」
ニャモは更に激しく胸を揺さぶると、餡コロの反応を待つ。ただ待つのではなく揺さぶり続けながら。
餡「あぁん、やめてぇ〜〜〜」
ニ「ばい〜んばい〜ん」
い「ばいーんばいーん」
昴「ばいん……っく!」
ニャモの呪文にいっくんは再び同調し、昴もまた同調しかけた。しかけたが、彼の身に起きた不幸な事件が同調を阻んだ。
餡「ふえぇ〜ん、ジーですぅ〜」
遂に餡コロは敗北した。予想通りの結果にいっくんとニャモは互いに拍手を送った。遠巻きにカミーラは冷ややかな視線を送っている。モンジは苦笑いを浮かべた。
月「何それ! 少し別けてよぉ」
ア「自ら貧乳を暴露してるぞお前」
月「ハ!? しまった!」
別けてほしいという事は、それだけに小さいという事。事実月の胸は小さかった。同じリーフィンである月と餡コロだったが、その差は歴然としていた。
餡「もう〜、ニャモさん!!」
ようやく開放された餡コロは、振り向き様ニャモへと猛烈な駄々っ子パンチをお見舞いする。
お見舞いはするものの、一発もニャモへは当たらない。これもまた職業上のステータスによる違いなのだろうが、それ以上に餡コロという個人の動きのトロさにも問題があるのだろう。
ニ「おほほほほほほほ、よいではないか、よいではないか。のう昴?」
ニャモは華麗にバックステップを効かせると、後ろでうずくまる昴へと話題を振った。
当然、昴への嫌がらせだったのだが、昴はまったくの無反応だった。
昴「……」
ニ「昴?」
昴「……」
い「あ、こいつ鼻血だしてら」
うずくまる昴を覗き込んだいっくんは、いつの間にか取り出したハンカチで鼻を覆う昴を見た。ハンカチには赤い染みか浮かんでいる。
ニ「やだぁ、昴のえっちぃ」
月「えっちぃ」
い「えっちぃ」
ク「ムッツリだな」
桃「ムッツリだったんですか!?」
モ「いやいや、男なら致し方ないでござるよ。そこまで言うのはかわいそうでござる」
ア「っぷ」
餡「昴さんのえっちぃ〜」
昴「えぇぇぇ!? なんで俺だけ!?」
今日も無事、『冒険者』ギルドのマスターは仲間達に愛され、弄られる日々を送るのだった。
始めは地の文(セリフ以外の文)をまったく無しで書いていたのですが、
ばいんばいんの連続の所で、まさかいっくんや昴がばいんばいんしていると勘違いする人がいてはいけないと思って地の文を書きました。
まぁ、こういうのって女子高生のノリでたまにやるんですよね……
私はやったこともないしやられたこともないですが。やられている友人を生暖かく見守った事はあります。




