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その15 第14話 敗戦 ビフォーアフター

「赤木の山も今宵限り」

「ここ、六甲山ですけど」

 パコーン。


 難しい文章は、ハンクの特訓があまりに稚拙なので、感覚で付け足しましたが、いまだにいいのか悪いのか分かりません。


 いらないだろう、いや、いるだろう、これもアミダクジ状態です。


 後半を、大幅カットしました。

 お散歩を追加しました。


 前半が改訂後、後半が改訂前です。


 第14話 敗戦 (改訂後)


「ハンクを鍛えよう大作戦を実施する」

「はい、お兄様」


「覚悟はできているな?」

「はい、お兄様」


 ハンクの部屋で特訓は始まった。


「きおつけ」

 背筋は伸ばし、顎は引く。

 両手は体の横で、指は開かない。

 かかとをそろえ、足は45度に開く。


「敬礼」

 右手を拳にして左胸に当てる。

 左手はそのままだ。


「なおれ。 では特訓を始める」

「はい、お兄様」


「真剣勝負だ」

「はい、お兄様」





「「にらめっこしましょ、笑うと負けよ、あっぷっぷ」」


「「………………」」


「「………………」」


「ぷっははははー、ハンクの顔面白いぞ」

「きゃははー、お兄様の顔も面白です。 だけど僕の勝ちです」


「うーん、悔しーぞ。 ハンクもう1回勝負だ」

「はい、お兄様」



********

 笑いたいという心の最奥の叫びなる物を本性と呼ぶとするならば、これを理性で抑え込む事こそ、人間が人間として生きる為に最も優先されるべき課題であり、この極限状態を克服してこそ真の喜びに到達しうるという純然たる真実をここに理解する事が、この特訓の真の目的なのだ。

********


 と、偉い人が言っていた……という話を聞いたことが……あったかも知れない。

 うーむ、自分でも何を言っているのかさっぱり分からん。

 何はともあれ、ハンクの特訓は始まったばかりだ。



 コタロウに鞍を置いた。

 レイダーが珍しく、いや、初めて散歩に行くと言い出したためだ。

 俺は以前に言った言葉はさっさと撤回した。

 それはもう、綺麗に、すっぱりと。


 初めて屋敷から出る。

 俺はもう、コタロウと力いっぱい草原を駆け巡る気でいた。

 ところが……。


「レイダーは馬に乗らないのか?」

「私は執事でございますので」

 だよねー。


「走っちゃだめなのか?」

「緊急時以外は歩く物です」

 だよねー。


 コタロウの郭を取ってレイダーが歩く。

 コタロウも歩く、当然、その上の俺もポックリポックリお散歩だ。

 ハイハイ、もう何も言いません。

 お散歩に行くと言ってました、はい。



 門を抜けると石畳。

 両脇の屋敷は敷地が広く、1つが町内ぐらいの広さがある。

 人通りは結構あって、馬に乗ったじいさんが何人も歩いている。

 そして、それ以上に多いのが使用人さん達だ。

 忙しそうにしている人や、のんびり話をしながら歩く人など、人が途切れないほどの賑わいだ。

 そして、食材や家具などを積んだ馬車が通る。

 人が乗る馬車にはおそらく貴婦人がいるのだろう。


「結構人がいるな」

「はい、近衛兵の家族は皆この区画に住んでおりますので」


「近衛兵ってそんなに多いのか?」

「戦闘が苦手な方は事務をなさいますので」


「事務職も近衛兵か、ちなみに貴族だよな?」

「勿論でございます。 読み書きが出来なければ務まりませんので」


 だよねー。

 まあ、そんな事だろうとは思っていたが、貴族社会だからな。

 お屋敷には、爵位を持たない貴族が大勢居候しているそうだ。

 俺達みたいに1家族というのは珍しいらしい。


 空にそびえるお城が近くなり、第1城壁が広がっていく。

 この奥には、上級貴族と騎士団本部などがある。

 振り返ると第2城壁。

 ここまでが貴族の住む所で、密かに期待していた屋台や武器屋は第2城壁の外らしい。


城壁沿いに進むと、第1城門が見えた。

荷物を積んだ馬車の検査待ちで行列が出来ている。

戦争中だから余計に厳しいのだろうが、城門の中に入れるのは代表1名だけで、馬車は近衛兵が引き継いでいる。


あぶれた従者たちに中に、光る人間を見つけた。

思わず緊張したが、向こうもこっちに気が付いたようで、軽く会釈を返してきた。

吟遊詩人、なってったっけ、ブーログだったか、仲間ならいい事にしておこう。



 ここは誰それの屋敷とか、レイダーの説明を受けながら1周してお散歩は終わった。

 1時間以上はかかった気がするが、どんだけ広いんだここ。




 戦争が始まって半年後、お父様が帰ってきた。

 右頬に傷があったものの、無事に帰ってきてほっとした。


 戦争は負けたらしい。

 何やってんだって感じだが、お父様が無事なら他はどうでもいい。


 総勢3万の軍で、帰ってきたのはわずか5.000。

 第2王子も戦死したらしい。

 王国にとっては大変な損失だろうが、それは王宮の問題だ。


 こっちの問題は、返ってこなかった軍の中にアイスラー軍2.000が含まれていた事、そして伯父さんが亡くなった事だ。

 働き盛りの男が2.000人もいなくなったアイスラー領も大変だろう。

 それに、ひょっとするとお父様が次期領主かもしれない?

 そこらへんはまだ分からないが、まあ大変そうではある。



 敗戦とはいえ、戦功報償は行われた。

 第2王子を守れなかった領主は軒並み罰せられたそうだ。

 爵位剥奪や、領地の没収も多かったらしいが、その分を少しでも手柄の有った領主に振り分けられた。


 その中でも1番の手柄は先陣を務めたアイスラー軍で、敵王城に1番乗りを果たしたそうだ。

 城を落としたまではよかったが、逆襲で一気に負けたらしい。


「城を落としたら勝ちじゃないんかい?」

 やはり突っ込みは関西弁に限るが、訳が分からん。

 どんな戦争だったのか、ぜひとも聞きたいところだ。


 それはともかく、伯父さんの功績で祖父が伯爵となり領地も5倍に増えたそうだ。

 しかし、国に納める税金もハネ上がるうえに、人がいないときている。

 爺さんが顕在とはいえ、大変なのは間違いないだろう。



 とは言いながら、実は俺自身も張り切っていた。

 得意なダムと灌漑設備、いよいよ出番が来たようだ。


 コンクリートは無くても砂防ダムがある。

 場所の選定から予測水量、そこから逆算して突き固めるダムの幅と長さを決める。


 用水路は勾配と止水舛が大事だ。

 流量計算をして幅と深さを決める。

 測量機が無くても水管を使えば3分勾配は可能だ。


 地図を見ながら新しい領地の場所を確認していた。

 いい加減な地図だが大きな川は書いてあるし、おおよその地形は想像できる。

 後は、実際にこの目で見てからだ。


 地下室の金貨もいよいよ役立つ時が来た。

 腕が鳴るぜと、やる気満々だった。



 ところが、近衛城兵の試験を受けろと言われた。


 まだ11なのにと思ったが、近衛兵も不足していた為1年繰り上がったそうだ。

 なんとも間の悪い話だが、断るという選択肢は与えられていない。


 まあ、愚痴っていても仕方がないので金貨の事をお父様に話した。

 今が最大の使い道だと判断したのだ。

 しかし、返って来た返事は、


「ルーラァの代になるまでとっておく」


 おいおい、聞いたか? 今の言葉。

 喉から手が出るほど欲しいはずなのに、とっておくだぞ。


 見直したぜブルーノ、いや、お父様。




 そのお父様もまた、敵兵に囲まれる中、イタリナ王子を守り切った功績が認められ、第1王女の専属城兵隊長になった。


 最強とうたわれる近衛兵より城兵は強く、城兵より専属城兵は上で、その隊長って、もしかしなくてもすごい。



 同じ職場か、仕事っぷりをとくと拝見させてもらおうか。

 まあ、あっちも同じことを思っているんだろうけど……。


 おっと、その前に城兵試験に受からねえとな。

 稽古して、それからハンクと特訓再開だ。



****************


 第14話 敗戦 (改訂前)


「ハンクを鍛えよう大作戦を実施する」

「はい、お兄様」


「覚悟はできているな?」

「はい、お兄様」


 ハンクの部屋で特訓は始まった。


「気おつけ」

 背筋は伸ばし、顎は引く。

 両手は体の横で、指は開かない。

 かかとをそろえ、足は45度に開く。


「敬礼」

 右手を拳にして左胸に当てる。

 左手はそのままだ。


「なおれ。 では特訓を始める」

「はい、お兄様」


「真剣勝負だ」

「はい、お兄様」





「「にらめっこしましょ、笑うと負けよ、あっぷっぷ」」


「「………………」」


「「………………」」


「ぷっははははー、ハンクの顔面白いぞ」

「きゃははー、お兄様の顔も面白です。 だけど僕の勝ちです」


「うーん、悔しーぞ。 ハンクもう1回勝負だ」

「はい、お兄様」



********

 笑いたいという心の最奥の叫びなる物を本性と呼ぶとするならば、これを理性で抑え込む事こそ、人間が人間として生きる為に最も優先されるべき課題であり、この極限状態を克服してこそ真の喜びに到達しうるという純然たる真実をここに理解する事が、この特訓の真の目的なのだ。

********


 と、偉い人が言っていた……という話を聞いたことが……あったかも知れない。


 うーむ、自分でも何を言っているのかさっぱり分からん。


 何はともあれ、ハンクの特訓は始まったばかりだった。





 スースキ王国軍が出発して半年後、お父様が帰ってきた。

 右頬に傷があったものの、無事に帰ってきてほっとした。


 戦争は負けたらしい。

 何やってんだって感じだが、お父様が無事なら他はどうでもいい。


 総勢3万の軍で、帰ってきたのはわずか5.000。

 第2王子も戦死したらしい。

 王国にとっては大変な損失だろうが、それは王宮の問題だ。


 こっちの問題は、返ってこなかった軍の中にアイスラー軍2.000が含まれていた事、そして伯父さんが亡くなった事だ。

 働き盛りの男が2.000人もいなくなるとあちこちに弊害が出るはずだし、ひょっとするとお父様が次期領主?

 そこらへんはまだ分からないが、大変そうではある。



 敗戦とはいえ、戦功報償は行われた。

 第2王子を守れなかった領主は軒並み罰せられたそうだ。

 領地の没収も多かったらしいが、その分を少しでも手柄の有った領主に振り分けられた。


 その中でも1番の手柄は先陣を務めたアイスラー軍で、敵王城に1番乗りを果たしたそうだ。


 城を落としたまではよかったが、逆襲で一気に負けたらしい。


「城を落としたら勝ちじゃないんかい?」

 やはり突っ込みは関西弁に限るが、訳が分からん。

 どんな戦争だったのか、ぜひとも聞きたいところだ。


 それはともかく、伯父さんの功績で祖父が伯爵となり領地も5倍に増えたそうだ。

 しかし、国に納める税金もハネ上がるうえに、人がいないときている。

 爺さんが顕在とはいえ、大変なのは間違いないだろう。





 などと言いつつ、実は俺自身も張り切っていた。

 得意なダムと灌漑設備、いよいよ出番が来たようだ。


 コンクリートは無くても砂防ダムがある。

 場所の選定から予測水量、そこから逆算して突き固めるダムの幅と長さを決める。


 用水路は勾配と止水舛が大事だ。

 流量計算をして幅と深さを決める。

 測量機が無くても水管を使えば3分勾配は可能だ。


 地図を見ながら新しい領地の場所を確認していた。

 いい加減な地図だが大きな川は書いてあるし、おおよその地形は想像できる。

 後は、実際にこの目で見てからだ。


 地下室の金貨もいよいよ役立つ時が来た。

 腕が鳴るぜと、やる気満々だった。



 ところが、近衛城兵の試験を受けろと言われた。


 まだ11なのにと思ったが、近衛兵も不足していた為1年繰り上がったそうだ。

 なんとも間の悪い話だが、断るという選択肢は与えられていない。


 まあ、愚痴っていても仕方がないので金貨の事をお父様に話した。

 今が最大の使い道だと判断したのだ。

 しかし、返って来た返事は、


「ルーラァの代になるまでとっておく」


 おいおい、聞いたか? 今の言葉。

 喉から手が出るほど欲しいはずなのに、とっておくだぞ。


 見直したぜブルーノ、いや、お父様。




 そのお父様もまた、敵兵に囲まれる中イタリナ王子を守り切った功績が認められ、第1王女の専属城兵隊長になった。


 最強とうたわれる近衛兵より城兵は強く、城兵より専属城兵は上で、その隊長って、もしかしなくてもすごい。



 同じ職場か、仕事っぷりをとくと拝見させてもらおうか。

 まあ、あっちも同じことを思っているんだろうけど……。


 おっと、その前に城兵試験に受からねえとな。

 稽古して、それからハンクと特訓だ。





 し、しまったー。

 特訓の時間が足らない。


 兄として、また、男として、ハンクに伝えるべき究極の奥義。

 数々の厳しい訓練を達成していても、到達できるかどうかだというのに……。


 仕方がない。

 とりあえず出来る所までやり、後はハンクの資質にかけるしかあるまい。

 時間を考えると絞り込むしかないが……。



その1 落語、もうかりまっかに耐えろ。

 見て感じる笑いから、聞いて感じる笑いに耐える。


その2 くすぐり大作戦。

 今度は直接感じる笑いに耐える、かなり難度が高い。


その3 あっちむいてホイ。

 勝負の結果を瞬時に判断し、相手の動きに惑わされない精神を養う。


その4 目隠し鬼ごっこ。

 五感を鍛え、視覚に頼らない戦闘を経験する。


その5 落ちてくるペンつかみ。

 重力に支配されたこの世に負けない素早さを身に着ける。


その6 一緒に縄跳び。

 攻撃のすきを突き、敵陣に乗り込む勇気と決断力を養う。



 最低でもこれだけの特訓をこなす必要はあるだろう。

 さもなくば、とても奥義を得る事はかなわない。


 しかし、果たして、ハンクはこの試練に耐えられるだろうか?


 いや、弱きは損気、ハンクならきっと大丈夫だ。


 頑張れハンク、お兄様が付いているぞ。

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