プロローグ
パチッ!という音とともに様々な色の照明がステージを照らす。
同時にサイケデリックな曲がスピーカーから飛び出す。
とうとう始まってしまった。おそらく人生で最大の苦痛の時間が始まってしまった。
ドン、ドン、と胸が内側から叩かれる。苦しさに思わず顔をしかめる。
さっきから何度も深呼吸しているのに、心拍数は上昇する一方だ。
落ち着け、落ち着くんだ。あれほど練習したじゃないか。本番に強い奴って昔から言われてきただろ。
はい、本番前の深呼吸もう一度。ひーふー、ひーふー。
やっぱ駄目だ。背中が汗でもうぐっしょりとなってしまっている。
ぐるりとあたりを見渡すと、照明を担当しているスタッフの一人と目が合った。
相手からはこちらの顔が見えないはずだが、それでも自分の方に頭が向いていることは分かったらしく、そのスタッフはこちらに微笑みかけ、そして「オーケー」とでも言うように両手の親指を立てた。
・・・オーケーじゃねぇよ。後でスリーパーホールドかますぞ。
溜め息を一つついてステージに目線を戻す。
頭がザビエルになっている中年の男が、満面の営業スマイルを浮かべながら檀上で演説をしていた。
見覚えのある顔だ。今回のメインの出し物のメインスポンサーだったか?どちらにしてもいけ好かない顔だ。今日のお披露目会が余程楽しいらしい。
そして、その「お披露目会」の主役が自分ということを思い出して、また動悸が激しくなってきた。
吹き出た汗が額を伝い、目に入る。
うっ、とうめいて反射的に目を抑えようと右手を挙げる。
カンッという乾いた音がして、手が顔の前で動きを止める。
自分がフルフェイスヘルメットを着けていることを失念していた。ヘルメット越しに汗を拭おうとする軍人。さぞかしシュールな光景だろう。
自分の姿を想像して、思わずククッと笑い声が漏れた。
予想外に響いたその声に、数人のスタッフが怪訝そうな顔をしてキョロキョロと周りを見る。
その様子がまた面白くて、自然と頬が緩む。
「出番です、用意をお願いします。」
その時、舞台袖で控えていたスタッフから合図が出た。
そちらに向かってうなづいて、了解の意思を伝える。
同時に、「装備」の電源をオンにする。
既に緊張は殆ど消えていた。
「さて、最高に派手でクールなパーティー、始めようぜ」
昔見た映画で主人公が言っていたセリフをそっと呟く。
モーターの低いうなりと共に、目の前が青い光に包まれていく。
さぁ、世界の度肝を抜きにいこう。
処女作です。SFです。パラレルです。ロボモノです。
色々と欲張ってしまっていますが、マイペースに頑張っていきたいと思います。
まだ戦闘描写は慣れていないので、ロボは「0080ポケットの中の戦争」程度の活躍と思って下さい。
不定期ながら、連載はできるかぎり積極的に行う予定です。




