管狐さんとこれから。
禊。管狐。舞宮家の守護をするために神より使わされた妖怪。
けれど彼女は今舞宮家ではなく、その分家である宮家の空斗の所にいる。
「えっと……禊が僕を選んだ……っていうのは分かったんだけど。」
空斗の狭い部屋の、ベットの上。その上で礼儀正しく正座する禊を見て、空斗は問いかける。
「何で?」
それは簡潔で、だからこそ聞きたいことがまとめられた質問だ。
そもそも空斗は舞宮家の話なんて知らなかった。妖怪なんてフィクションの産物だと思っていたし、今も若干信じ切れていない。けれど、禊が竹筒から出てきたことと、楽しそうにぴょこぴょこ動く獣耳と尻尾がそれを許さないが。
閑話休題。
舞宮家のことを知らなかったという事は、宮家は妖怪を『式神』として貸し与えられる対象に入って居ないという事だ。神も妖怪も宮家のことなんか気にしないだろう。
「えっと……。」
空斗の質問に禊は小首を傾げ、
「ゆういち?妖怪のこと、信じてないの。」
「僕も若干疑ってるけどね……。」
(そもそも妖怪なんて大半の人が信じてない気が……)
「でも、くーとは私に向き合ってくれてるの。」
苦笑いでつぶやいた空斗に、禊は笑顔でそう言った。
「私だって、普通の人が妖怪のこと信じてるなんて、すぐ受け入れてくれるなんて思ってないの。だから、否定しないでくれるだけでうれしいの。」
その笑顔は妖怪であることを忘れさせるような……嬉しそうに笑う人間の少女とどう違うのか、分からなくて。
(断ろうかとも……思ってたんだけどなぁ……)
空斗頭を掻きつつ、思う。
空斗はこの春から大学生になったが、別に一人暮らしをする予定はない。
親も健在だし、兄弟もいる。だからどう説明するかで悩んでいるのだが……
「わわっ……くーと!人間が紙の中に閉じ込められてるの!」
写真を見て慌てる禊を見て、空斗は苦笑する。
(これは……断れないよなぁ。)
――――――――――
写真の説明を聞き、その仕組みを理解した禊は写真立てを持ち上げ、
「なるほっどー……つまりこれは、色のついた絵なの?」
納得したように言う。
「絵とは違う気もするけど……まぁいいや。つまりはそういう事。」
空斗は空斗は説明を諦めてそう言い、でも、と話題を切り替える。
「どう説明するかなー。」
「何を?」
禊は急に考え込み始めた空斗を見て、禊は首を傾げる。
「禊をどう家族に説明しようかなって。……僕一人暮らしじゃないからさ。」
「禊、筒の中入ってるよ?」
どうするかなー。と呟く空斗に、禊は何て事無いようにそう言う。
「でも……大丈夫?」
「禊は管狐だよ?毎日出してくれるなら、大丈夫。」
禊が自信満々に胸を張り、問題はあっさり解決した。
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