灯り祭り
明々と灯る提灯が点々と道を彩っている。祭囃子が鳴り響き、参道にはこの日限りの出店が並ぶ。はしゃぐ子供たちの声に威勢のいい掛け声が混ざり楽しげな喧騒を生んでいた。
からころからころと鳴り響く下駄に小さな袋に入れられた金魚が通り過ぎる。水面間近で息をする赤色は、一夏が過ぎたときにもその影を牽いていられるだろうか。
楽しそうだと。常に思っている。毎年同じ日に開かれるこの祭りが、年始の祭りとはまた異なり、好きだった。いつも混じることができずに木の影に隠れてお面を被って。人の眼に触れることはいけないと、ずっとずっと言われてきているけれど。
毎年この祭りだけは、ついつい見に来てしまうのだ。
誰にも。見つかりませんように。
ころ、と。石畳ならば鳴ってしまうぽっくりも。土の上ならば音は静かに吸い込まれる。わたしの姿をすっかり隠してしまう木の後ろで、そっと面をつけた顔で覗き見る。
ふとその前を、同じくらいの背格好をした人間の子供たちが通り過ぎ。慌てて隠れた。子供たちは気付かずに、楽しそうに参道の明かりへと紛れてゆく。
ああ。ほんとうは。
大きな人間に手を引かれて歩く小さな子供。その手にはふわふわとしたものが握られていて。
ほんとうは。
小さな神社の小さな参道。そこがまるで世界のにぎやかな全てを集めてきたかのように。
わたしも一緒に、その光りの中を歩きたいのだ。
祭囃子は遠くなる。少しずつ少しずつ、灯っていた明かりたちが消えてゆく。出店は骨組みすらなくなり、祭りの後の忘れ物たちが参道に転がる。
常の寂しく静かに戻った神社の前に。ころんとひとつ音が鳴る。誰もいなくなった階段の前に。ゆらりと浴衣の袖が揺れる。
お面をしたままのその小さな影は、寂しそうにそこに佇み、ころころころころとぽっくりを鳴らす。
来年こそは。
小さなその手をぎゅっと握り、お面の子供は小さな何かを決意する。面の表情は変わらずに、ふらりと大きな尻尾が揺れた。
誰もいなくなってしまった石畳の参道のその先に。片方は欠けた石像と、その向き合いに。
笑んでいるかのような顔をしたお稲荷さんが守っていた。
幾年も幾年も。見守ってきた小さな神社の夏祭り。飽くるほどそれを見て尚思い馳せるは。手を届かせてはいけない領域に、不思議と羨むものがあるのだろう。
からころ、から、ころと。音響く。




