inherit
数年ぶりです。再開しました。
「記憶を取り戻したいか?」
「あんたは……!」
願ってもない言葉だ。俺は記憶を取り戻したい。過去のことを知りたいわけじゃないが……この戦いには必要なはずだ。
何もかもが足りないこの世界で、神とやらを倒すなんて……無謀過ぎる。
きっと玲も―――いや、サクラもそう思っていたんだろうな。あいつの場合、馬鹿馬鹿しいと鼻を鳴らしているだけかもしれないが。
「マルス。どうやってここに来たんだ」
かつて俺を利用した男―――どうしてここにいる? こいつはここにいないんじゃないのか。
「ふん、くだらんな」
「何……?」
「それを知ったところでどうすると言うのだ。『愚弟』を持つと苦労するな」
「チッ……兄気取りはいい加減にしろ」
敵か……味方か。まったく何が言いたいのか分からないぜ。クリスよりも掴みにくい奴だな。
「そうだったな。お前はお前であって、『ゼロ』ではないのだから」
「ふざけたことを抜かすな。俺はゼロだ」
「違うというのが分からないのか?」
突如圧し掛かるような魔力がこいつから溢れ出す。俺は咄嗟に剣を引き抜こうとして―――気づいた。それを察したのか、マルスが笑う。
「お前の手元に剣はないぞ、『すばる』」
誤算だ。完全な誤算だった。マルスは有無を言わさず鋭く斬り込むと、執拗に狙ってきやがる。くそっ……長い間『すばる』として生きてきたせいか。頭じゃ理解してるのに、奴の動きに身体がついていけない……!
記憶……俺は本当に記憶が欲しいのか? 詳しいことは分からない。だが、こうして『ゼロ』は戻ってきている。現に、身体の支配権はすでに俺のものだ―――。
「悩め、ゼロよ。お前たちは記憶よりも欲しているものがあるはずだ」
「あんたは…――お前は何が望みなんだ?!」
攻撃を回避するだけでも一苦労―――このままじゃやられるだけだ。マルスのことだ、また俺を利用しようとでも思っているんだろう。ろくでもない奴に目をつけられたものだな。
「望み、か」
マルスはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「私の望みはただ一つ。さて―――何だと思う?」




