can't fly...
更新遅くなりました(^_^;)
何もかも無くなればいいのに。
「あれ?」
ふいにレイチェルが後ろを振り返ると、先程までそこにいたはずの鈴とクリスの姿がなかった。
レイチェルはふっと苦笑する。二人が再会した時の険悪な雰囲気にはどうしたものかとハラハラしたが、何だかんだ言ってあの二人は仲が良いのだ。皮肉の言い合いをしながら、それでも一緒に行動しているのを見ると、そう思わずにはいられない。あの頃よりもお互いが活き活きしているように見えるのは彼女の気のせいだろうか。
その時、ざわりと心の中で何かが動いた。形のない、はっきりしない何かが過る。彼女はなぜか不安に襲われていた。
何かが足りない。そう、なくてはならない何かが。
欠落したもの、それが彼女を不安にさせる。何だろうと一瞬首を傾げたが、その正体はすぐに分かった。
メグリヤ。
彼女がここにいないということ。
「ねえ、どうして……?」
言っても無駄だというのに、声に出さずにはいられない。
「何であなただけいないの? メグ……」
ヒバリがメグリヤの生まれ変わりだと分かっている。けれど、それで納得できるほど自分は出来ちゃいなかった。
彼はあまりにも似ていなさ過ぎる。メグリヤは彼ほど鈍感でも図々しくもなかったはずだ。多分、そのことがより一層レイチェルを不安にさせるのだろう。
喪失感。
「ふうん。今回の罪人はテロリスト七人か」
フローラが手にしているリストを覗き込んだクリスは、あからさまに肩を落として言った。つまらない、と言いたげなのが言葉の端々に滲み出ている。
「最近、雑魚が多いんだよね。もっと大きな事件を回してよ、フローラ」
「何を言っておるんじゃ。確かに今回はターゲット数が少ないがの、中々ランクの高いやつを選んで来たのじゃぞ」
フローラは心外だと言わんばかりに大きく肩を竦めた。
クリスと鈴がフローラに退屈だと抗議し、ヒバリは面白がって茶々を入れている。サクラはそれを遠巻きに、しかし迷惑がっているわけでもなく傍観していた。
見慣れた仲間が見慣れぬ光景を繰り広げている。
「……付き合いきれないな」
「ゼロ?」
レイチェルは踵を返すゼロに声をかけた。ゼロは一瞬立ち止まって振り返り、冷然と言った。
「茶番劇はもうたくさんだ。俺は、俺のやり方で生まれ変わりの連鎖を断ち切ってみせる」
「待っ―――!」
ヒバリが止めようとした時にはすでに彼の姿はなかった。
「なっ……何だよソレ?! ふざけんなよ!!」
いち早く我に返った鈴は、突然のことに怒りを露わにした。サクラにはそれが、飲み込めない状況を怒りで誤魔化そうとしているように見えた。ヒバリは困ったように苦笑しながら「……ま、アクシデントもツキモノってか?」と軽口を叩く。
それよりも、とクリスはレイチェルを見やった。彼女は打ち拉がれていた。声をかけることも躊躇われた。しかし、彼女はクリスが思っていたよりも強かった。
「行こうよ、みんな」
暫くして顔を上げたレイチェルは、何事もなかったかのように彼らを促した―――。
思い出すのは記憶の断片。
冬の寒空に浮かぶのは白い月。
昨日よりもはっきり浮かんでいる白い月は、きっとこの世界のことなんてどうでもいいのだろう。
全て無くなってしまえばこんな思いをしなくて済んだ。
考えることができなければこんなことにならなかった。
こうやって何もかも拒んでいることが『逃げ』だということを知っている。
それでも俺は―――。




