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white snow  作者:
dreamy
50/60

Cyako


 「政府の犬め!! これでも食らえ!!」

 ターゲットが僕に向かって銃を乱射した。僕はそれをかわし、すでに汚れきっている鎌をターゲットに振り下ろした。

 鮮血が飛び散る。それと共に、ターゲットはその場に倒れた。

 動かない。

 もう二度と―――。

 鈴がそれを回収しに来た。彼女は携帯を取り出すと、フローラに死体の処理を頼んだ。

 複数犯なら証人は一人でいい。単独犯であれば、LECは罪人を殺さない。罪を償わせた後に殺す、それが僕らのやり方だった。

 返り血を浴びた。鼻にくる独特な臭いが辺りに充満した。首を狩り取られた罪人は、切断面から肉塊を醜く曝け出していた。

 空は依然として曇っている。今にも雨が降りそうな勢いだった。

 雨なら嫌いじゃない。

 その時、鈴の携帯が鳴った。

 「もしもし」

 鈴は二、三受け答えをすると電話を切った。彼女は振り返って「ヒバリたちの方は、もう終わってたみたいだぜ」と言った。その口調はどこか皮肉めいていた。僕にはその理由が分かった。

 「僕が真剣に仕事をしなかったことに怒っているのか」

 鈴は不機嫌そうな表情を崩さないまま頷いた。

 「人の命を弄ぶなんて」

 「許せない?」

 「そうだ」

 処刑が確定している罪人ターゲットを追いつめては逃がし、追いつめては逃がしの繰り返しだった。罪人を追う僕の後についてきた鈴はその度に憮然としていた。

 生きるか死ぬかの瀬戸際。

 僕はそれを楽しんでいた。

 言われるまでもない。もう狂っている、何もかも―――。

 『斉木』が死ぬ前に望んだもの。

 それは狂気だ。

 「神はいる。僕らは神の玩具に過ぎない。戦うだけの人生なんて、もううんざりだ。それでも君は神を信じるのか?」

 滅びゆく世界。何もかもが壊れている。

 大切だったものはすでに失われていた。もはや考えることに何の意味もない。

 感覚の麻痺。

 「信じる信じないはともかく」

 鈴は淡々と言った。

 「オレは現実を誤魔化さない」

 それは。

 そんな風に思えるのは。

 僕は鎌を担ぎ直す。

 「それはまた、君らしい答えだね」

 




 猫の鳴き声がした。





 「チャコ!」

 虎縞の猫の名を呼んだ。猫は欠伸を噛み殺しながら、どこからともなくやって来ると、ふわりとクリスの右肩に降り立った。

 「もう終わっちまったのかよ。つまんねえな」

 チャコは人間の声でも、ましてや動物の声でもない独特な―――機械音に近い―――声だった。鈴は突然の出来事にびっくりしている。

 「あぁ? 何だ、このガキ。お前の『トモダチ』か?」

 チャコはわざと強調して言った。クリスは冷ややかな態度で頷いた。鈴が反論しようとしたところを彼は制して「そういうことにしておこう」と言った。

 否定するとややこしいことになりそうだ。

 鈴はチャコを一瞥した後、納得した。

 「鈴、この猫は僕の友人だ。チャコって言うんだ。―――チャコ、彼女は鈴だ」

 するとチャコは「あっ」と手を打った。

 「例のマセガキか」

 「なっ?! オレはそんなんじゃねえ!!」

 鈴はチャコに銃を突きつけた。チャコはおどけるように笑う。

 「やっぱガキだな」

 「テメェっ!!」

 鈴が振り下ろした手をチャコはひらりとかわす。

 「おっ、やる気か? オレは別に構わないぞ? 面白いことなら大歓迎だ!」

 「はぁ……。チャコ、いい加減にしなよ。大人げないなぁ」

 「ヒヒッ! 法に触れなくて楽しいことならいいじゃねえか。何でも楽しまなきゃ損だぞ、クリス?」

 「はぁ……」 

 クリスは再び溜息をついた。

 「あっ、いたわ!! こっちよ!!」

 聞き慣れた声に振り返ると、レイチェルとゼロがこちらに向かって来るところだった。




 

 



 

 




 

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