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…と言いつつも、サクラの出番が全然ない回になってしまいました。
「こっちはノルマクリアだぜ!」
ヒバリはピースサインを前に突き出した。レイチェルたちもどうやらノルマをクリアしていたらしく、目の前に気絶した罪人がお縄となって転がっている。
「何だ、もう終わっちまったのか。せっかく俺が手伝ってやろうと思ったのになぁ」
ヒバリは余裕綽々のすばるを見て残念そうに肩を竦めた。彼はヒバリの言葉を軽く受け流した。どうでもいいと言うような感じだった。ヒバリは珍しくもため息をついて「まったく、前世とか記憶とか俺には意味が分からないよ。記憶が戻った兄さんは、まるで別人みたいだ」
「そうか?」
「そうだよ。言葉遣いからして前と全然違うって」ヒバリは口を尖らせて言う。
「どうだっていいでしょう、そんなことは」
突き放すように言ったのはレイチェルだった。
「ゼロの……兄さんの何が変わったって、あなたには関係ないことよ。何も思い出せないくせに―――」
ヒバリはむっとして言い返す。
「何も思い出せない? 何だよそれ、意味分かんねえよ。最近のお前、おかしいぜ」
レイチェルは首を横に振り、悲しげな表情を彼に向けた。
「違うわ……! おかしいのはあなたの方なのよ! どうして何も思い出さないの? どうして『私たち』のことを憶えていないの? 何で思い出そうともしないのよ!! これじゃあまりにも……」
―――何だ? 今、何て言った? それに俺は……。
「言い過ぎだ」
怒っている―――ように見える―――彼女に、諭すように声をかけたのは兄さんだった。
「でもっ」
「ヒバリも悪気があって言ったわけじゃない。そうだろう?」
「あ、ああ……」
兄さんは俺が頷いたのを確かめると、再び彼女に向き直った。
「これは俺の問題だ。あんたが介入することじゃない」
「そうね。……余計なお世話だったわ」
「―――取り込み中悪いが。鈴たちがまだ戻って来ていないみたいだ、探しに行った方がいいかもしれない」
サクラは少しだけ申し訳なさそうに言った。うん、完璧に蚊帳の外だったよなコイツ。だけど俺は正直ほっとしていた。サクラが話を切り替えてくれなければ、この重苦しい空気はずっと続いていたかもしれない。ナイスタイミングだ。
「じゃあ俺とサクラは向こうの方を探してくるよ。兄さんたちはあっちに行ってみてくれ」
「分かった」
「それじゃ、あいつらが見つかったらまたここに集合な!」
ヒバリとサクラの姿が見えなくなった後、ゼロは銃の安全性を確認し、私に『命令』した。
「行くぞ、ミーナ」
「―――嫌よ」
私は俯いたまま返答した。先を行こうとしていたゼロが立ち止まり、困惑気味にこちらを振り返ったのが見えた。
「今日はやけに機嫌が悪いな」
「どうしてだと思う?」
「さあね」
ゼロはやれやれと言うように肩を竦めた。まだ話が続くのかとうんざりしているようにも見えた。けれど、私にとって話を途中で終わらせることなどありえないのだった。だって、これはとても重要な―――。
「私は『レイチェル』よ、ミーナって呼ばないで。それにあなたは今も昔も『ゼロ』でしょう? ……『すばる』は死んだの、あなたが記憶を取り戻した時にね。だから、今と昔で名前が違うのなんて別に気にしなくてもいいじゃない」
これは必死の言い分だった。だって、私は私でゼロはゼロだから。
何を言われたのか分からないというように、一瞬ゼロは目を丸くした。だが、すぐにいつも通りの冷静な表情に戻ると、苦笑して「言っていることが無茶苦茶だな。―――分かった、それであんたの機嫌が直るならそうしよう」と言った。
「クリスたちを探しに行くんだろう? 『レイチェル』」
「?!」
私は思わずびっくりしてしまった。なぜかって?
だって、ゼロが優しく微笑んでいたんだもん。ゼロが笑っているのを見たの、初めてかもしれない。
「どうした? 行くぞ」
「―――ええっ、分かってるわよ!!」
今日はいい日になりそうだ。
”外の世界”よりゼロが冷たい人間になってしまったような気がしたので、レイチェルと喧嘩(?)して仲直りする、という形で本来のゼロに戻ってもらいました(^^ゞ
問題点はまだまだありますが、そこは何とかなる……はず(笑)




