she lost something.
神は自らが創った下界を見下ろしていた。その黄金の瞳には何の感情も浮かべられておらず、どこか冷ややかだ。
滅びゆく世界。秩序が失われていく。
「運命に抗うか。酔狂な奴らだ―――」
「神様っているのかな」
ミーナはぽつりと呟いた。「にわかには信じられないわ」
それから暫くして、ミーナはすばるに話しかける。
「ねえ、兄さん。兄さんは自分がどうしてここにいるかってことを考えたことはある?」
「……いきなりどうしたんです? 元気が取り柄のミーナらしくないですね」
「私、どうすればいいのか分からないのよ。私が今ここにいるのは、一つの運命なんだよ。運命っていうのは予め用意されているもので、私たちはそれに従って生きている。……だけど、いきなり魔法とか世界を創った神様を倒せだなんて言われてもどうしたらいいのか分からないよ」
「運命なんて―――」
そんなの決まっていない。
「……うん、そうだね。そうなのかもしれない。すばる兄さんが言いたいことは分かるよ。だけど、そういうことじゃないの。全てが始めから用意されているものなんて、この世には存在しない。兄さんも私も含めて、誰かが行動を起こした結果が『運命』なのよ。予め用意されていたって、一人一人の行動が運命の形を変えることもある」
彼女は哀しそうに笑った。
「あなたが忘れてしまった記憶は『霧島すばる』という、他ならぬ自分のことだった」
点で繋がる世界。
ミーナ、いや彼女が―――レイチェルが―――生きていた時代が全ての始まりではなかった。
「生まれ変わりの連鎖は私たちが始まりなのよ」
滅びてゆく世界―――。




