I left there with anxiety. (capacity)
”外の世界”の時より、鈴が素っ気ない性格をしているような気がしました。
気のせいでしょうか(^^ゞ
知らなかったと言えば嘘になる。
「お前なんかいなくなれ!! 二度と現れるなっ、このバケモノめ!!」
それでも、全てを憶えていないというのは本当だった―――。
「クリス」
鈴だった。
「オレはあんたを許しちゃいねえ。でも、仲間がピンチだって時に何もしないほど馬鹿じゃねえ。……あんたにとって、利用するされるはどうでもいいことなのかもしれないが、オレは違う。あんたを本当の意味で利用しようと思っている。でも、そういうのって初めに信頼関係が無いと成り立たないだろ? ―――あんたを裏切るその時まで、不本意ながらもオレはあんたを信じてやるよ」
鈴はそれだけ言うと去ってしまった。
「すばるさん。ちょっと交代してくれ」
彼は輪の中に入って行くと、ヒバリの傍でしゃがみこんだ。大きく深呼吸し、そっとヒバリの手を取る。鈴の手から発せられた淡い光がヒバリを包み込んだ。すると、みるみる怪我が治っていく。
「どうなっているの……?」
ミーナは目を疑った。鈴はさもつまらなさそうに「ただの魔法だよ」と答えた。
治癒系能力者―――回復魔法が使える唯一の能力者のことだ。鈴は治癒系能力者だった。
この世界には二種類の人間が存在している。能力を使える『能力者』と、能力を使うことができない『無属性能力者』。これは努力してなれるものではなく、遺伝的なものが関係している。実質、人類の半分以上が無属性能力者であるのだ。
「ふむ。お主らの中に素質のある奴がいるようじゃな。わしが能力を目覚めさせてやろうかの?」
「くだらない。魔法だなんて、現実にはありえない」サクラは一蹴した。
「鈴の魔法を見たじゃろうが。それでも魔法なんてないとお主は抜かすか?」
「僕は『探偵』だ。仮に僕が非現実的なものを信じたとして、犯人を定める時に『お前は魔法を使って被害者を殺したんだ』と言ったとしたらどうなると思う? ミーナ」
突然話題を振られたミーナはつっかえながらも答えた。
「無実の人が裁かれてしまう可能性があるわ」
「その通り。探偵が非現実的なものを信じないのは仕方のないことなんだ。それを分かって頂きたいね、魔女様?」
サクラは皮肉るように肩を竦めた。フローラはそれを聞いて、ピクッと片眉を上げた。
「そうか……。お主は意地でも能力者を信じないと申すのだな」
彼女が怒ったのは、言うまでもない。だが、その時偶然にもその場の空気を破る出来事が起きた。
「うるせえなぁ……。人の耳元でギャーギャー騒ぐんじゃねえよ……」
一時は瀕死状態にまで陥ったヒバリが不機嫌を露わにして、何事もなかったかのように起き上がったのだ。
「目が覚めたんですね、ヒバリ」
「すばる兄さん? ……っと、その他大勢か。お前ら、揃いも揃って何してんだ?」
どうやら自分の身に起きたことを憶えていないらしい。ミーナは脱力した。
「元気なのは良いことだわ。だけど惚けるのは止してよ」
「ヒバリらしいですね」すばるは苦笑する。
「心配かけさせんなよな!」
「迷惑料を払え」サクラはそう言って、深い溜息をつく。
「……」
ヒバリはクリスが元気無さげなのに気付いた。
「どうした?」
声をかけると、クリフトははっとしたようにヒバリを見る。呪縛を解かれたような動きだった。だが、彼はすぐに俯いてしまった。
「僕が油断していたせいで、君に魔法弾が……。ごめん!」
クリスはそう言うなり事務所―――と言える有様ではないが―――から出て行った。
「? いや、意味分かんねえし! ちょっと待てよ!」
彼を追ってヒバリも外へ出た。だが、姿が見えない。
「どこ行きやがったんだ、あいつ……」
ビルの屋上にて。
「はぁ……。どうしたらいいんだろう」
白に近い金髪、深いブルーの瞳を持つ少年―――クリス―――は幾度となく溜息をついた。執行人の証である巨大な鎌を今は持っていないが、上下とも真っ黒の服を着ているため、やけに目立つ。
「どうしたらいいと思う? チャコ」
チャコは呆れたように言った。「どーでもいいんじゃねえの~?」
「何だよ、適当だなぁ」
クリスは不貞腐れたように、虎縞の『猫』に言う。
「ヒヒッ、そうかもな。ま、クリスの好きなようにすればいいさ。オレはいつでもお前の味方だからよ」
「……そうだったね。ありがとう、チャコ」
クリスは柔らかく微笑んだ―――。




