the outer world
登場人物が多過ぎてカオスになってしまった……。
『裏切り者を利用したいのなら、君が先に僕を裏切ることだ』
……つい勢いに任せてあんなことを言ってしまったけれど、あれで良かったのだろうか。あの後、鈴は考え込んでいたが。
「? どうしたよ、クソガキ。元気ねえなぁ」
呆れたように言ったのはヒバリだった。
「元気なんて」
「元々あり余ってんだろ? ま、たまには落ち込むことも悪くないぜ」
「落ち込んだこともなさそうな奴に言われたくないね」
「おー、反抗期か? 俺に当たるのは構わんが、サクラは止めておけよ。アイツ、すぐブチ切れるからな」
「ふうん。覚えておく」
彼らと出会って、まだ一カ月も経っていない。だが、この一カ月で随分色々なことを知ることができた。
生まれ変わりの現象は常に『僕の周りで』起きているということ。仲間全員が生まれ変わるのではなく、不特定少数の人が生まれ変わっているということ。そして、転生前の記憶を受け継ぐ確率は二分の一だということだ。
「あ、クリフトくん! ここにいたのね。君にお客さんだよ」
ミーナはにっこり笑って言った。そして、客と呼ばれた人物を事務所の中に通す。
クリスとさほど変わらない年齢に見える少女。黒のワンピースに身を包んでいる―――。
「あれってもしかして……」
ヒバリは嫌な予感がした。どうしてミーナが平然としているのかが分からない。少女の手にはある物が握られていた。初めてクリフトと会った時に彼が手にしていたものに似ている。
ナイフではない。そんなちゃちな物じゃない。それは誰もが目を疑うような、巨大な漆黒の鎌だった。……クリフトは白い鎌だったが。
『魔女』。
彼女が今ここにいる―――。
「『フローラ』……」
クリフトは硬い表情をしていた。少女はにやりと笑った。
「ようやくわしのことを思い出してくれたようじゃの、『クリス』。―――いや、今はクリフトじゃったかの」
「『クリス』? 誰だよ、それ。……一体何が起きているんだ?」
ヒバリは訳が分からずミーナに尋ねた。だが、ミーナも首を振るばかりで答えを知らないようだ。
その時、白い閃光が事務所内を埋め尽くした。
「なっ、何だよこれ?! 目が開けられねえっ!」
「何だよ、知らねえのかよ! 魔法に決まってんだろ!」
鈴は両腕を顔の前でクロスして光を防ぎながら叫んだ。
「魔法? そんなもの、あるんですか?!」
すばるは信じられないというように訊いた。声を荒げる必要はなかったが、皆が皆、大声で話していたので、すばるもつられて声が大きくなる。
「どうでもいいが、仕事場をめちゃくちゃにするな!!」
カーテンは吹き飛び、応接セットは無残に切り刻まれている。我に返ったサクラが惨状を見て怒鳴った。
フローラは意に介さないというようにため息をつく。彼女は何も見ていなかった。いや、そうではない。彼女は彼一人しか見ていなかった。それからフローラは軽く周囲を見渡し、にやりと笑う。
「なるほど、愉快な仲間が揃ったものじゃ。全員揃ったのはこれが初めてじゃの」
「『全員』……? 何のことです?」
ひばりは訝しげに眉を顰めた。フローラはクククッと笑い声を上げる。
「分からぬか? 言葉の通りじゃよ」
フローラはすばるのかつての仲間の名を挙げる。「メグリヤ、クリス、レイチェル、玲、鈴。……後に英雄と謳われた、お主の仲間たちのことじゃ。本来ならば、このわしを負かした憎き英雄全員が同じ時代に揃うことはないはずじゃが……どうやら秩序は失われつつあるらしいの」
「オレの姉ちゃんもいるのか?!」
鈴ははっとしたように身を乗り出して言った。
「もちろんここにおる。じゃが、それをわしの口から告げるのは面白くない。姉弟だったのならば、自力で探すことは不可能ではないであろう?」
フローラは彼らを見渡した。明らかに、彼女はそこにいる全員を見下していた。なぜこれほどまでに彼らは弱くなったのかと疑問に抱くほどだった。
「クリス……。どうしてわしを倒そうとせぬのじゃ?」
―――おかしい。いつもなら、顔を見るなり切りかかってくるはずなのに。
「同じことの繰り返しはもうたくさんだ」
クリスは執行人の証である鎌さえ持って来ていなかった。
「僕があんたを倒すことに何の意味がある? あんたが僕に殺されることに何の意味があるんだ。どうして僕らは生まれ変わり続けるのか。今回僕が前世のことを憶えていたのはなぜだ? ……そう思った時、僕はあることに気付いた」
終わらない世界。
終わらないんじゃない、終わろうとしていないだけなんだ―――。
「終わろうとしていないのなら、終わらせればいい。同じことを繰り返していては終われない。だから僕はあんたを倒さない。それだけだ」
「……そうか。それなら―――」
フローラは魔法弾を放った。クリスに、ではなかった。クリスは魔法弾が向かう先を見る。
「―――っ! メグリヤ!!!」




